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【第2回三服文学賞】授賞式の様子をレポート!大賞受賞の葦田不見さんの朗読や公開インタビューも

第2回三服文学賞 授賞式

7月14日(日)、第2回三服文学賞の大賞授賞式が老舗旅館・和多屋別荘館内「BOOKS&TEA 三服」(佐賀県嬉野市)にて開催されました。

授賞式当日は一般の方も参加され、大賞受賞者である葦田不見(あしだ・みず)さんの作品の朗読や公開インタビューが行われました。

今回は、第2回三服文学賞の授賞式の様子をレポートします。

 

小原嘉元選考委員長(和多屋別荘・代表取締役)のコメント

第2回三服文学賞 授賞式
第2回三服文学賞は、国内外の方々から1,237作品のご応募をいただきました。誠にありがとうございました。他の受賞者の方々のコメントでも、日常的に何かを書きたいと思ってはいるが実際に書く機会や場がないという声が多くありました。三服文学賞設立の理念である「書く愉しみ」という役割が担え、とてもうれしく思います。

 

「第2回三服文学賞」受賞作

大賞「水のからだ」(葦田不見)

「わたしたちのうちには言葉という水が張られている。
わたしたちは語る、そうして己の液体を少しずつ溢(こぼ)していく。」

「水のからだ」より引用

葦田不見

あしだ・みず。1995年生まれ。人間。詩とエッセイ。大阪府出身。大阪大学法学部国際公共政策学科在学中の2017年より活動を開始し、視覚優位や可視主義への抵抗の意を込めて葦田不見と命名する。2019年、詩文集『不/見』(単著)を自費出版(Amazonにて販売中)。2024年現在、会社員をしながら文筆活動を継続している。大阪府豊中市にあるシェアハウス在住。note毎週更新中。

■小原選考委員長より講評

大賞作品「水のからだ」は、お茶、器、身体、そして読むことという難しい展開にもかかわらず、読者に飽きさせずに繋げていく文体と展開が素晴らしかったです。

2万坪を有する和多屋別荘も箱としてさまざまな流れ・動きをしており、生き物のような宿だと言われることがあります。和多屋別荘のことを書いているのかとも感じていました。

私としては普段からビジブルなものだけでなく、文化的・歴史的なインビジブルなものを大切にし、経済的な価値を生み出したいという想いを持っています。葦田さんが可視優位への抵抗を日常的に持っているとお聞きし、和多屋別荘の今後と重なりました。

今後のライターインレジデンス滞在を通して、葦田さんの人生でインパクトを与える節目になるような作品を書いていただきたいです。

※そのほかの受賞作品、各作品の選評コメント、次点作品一覧はこちら

 

「水のからだ」朗読の様子

第2回三服文学賞 授賞式

授賞式では葦田さんご自身による「水のからだ」の朗読が行われました。

第2回三服文学賞授賞式アーカイブよりご視聴いただけます。

 

葦田不見さんインタビュー

第2回三服文学賞 授賞式※インタビュアー:三服文学賞実行委員 深井航(株式会社ひらく)

 

深井 第2回三服文学賞大賞の受賞、おめでとうございます。受賞時の気持ちを率直にお伺いさせてください。

葦田 ありがとうございます。実際に受賞すると重みが違うなと思っております。

深井 三服文学賞はどこで知られたのでしょうか?

葦田 コンペティションをまとめて紹介しているサイトです。1年間和多屋別荘さんに宿泊する権利が得られると知り、これは何としても、と思い応募しました。

深井 創作自体はいつからされていたのでしょうか?

葦田 学生時代に本という世界に足を踏み入れて、色々読み漁っていくうちに自分も書くことができたらいいなと思うようになりました。ただ、賞に応募すること自体はとても久しぶりです。

深井 そうなのですね。今回大賞を受賞されたことはとても運命的ですね。

 

第2回三服文学賞 授賞式

 

深井 「水のからだ」のテーマとなった器や流れについて、普段から考えていたことを文章にされたのでしょうか?

葦田 そうですね。今まで考えていたこと、書いてきたことがベスト盤のようにいろんな要素として現れたように感じています。

深井 初稿はすぐ書きあげられたと伺って、そこからどのように進められていったのでしょうか?

葦田 会社の昼休みの1時間で大まかな形を書きあげました。その時の文量は4,000字くらいだったと思います。もっと書くと6,000~8,000字にもなりそうだったので、どこを削るかが苦悶の種でした。

深井 和多屋別荘には昨日からご宿泊いただいておりますが、いかがでしたでしょうか。印象や感想をお聞かせください。

葦田 まず、和多屋別荘の大きさに飲まれました。大層な言い方になりますが、2万坪という大きな器の中で、自分はなんて小さな芥子粒なのだろうと思いました。そして、歩く快楽がすごくある宿だなと思いました。歩いていると、ちょっとした置き物や、外の風景が見えるので、ただいるだけで気持ちのよい場所だと思います。

深井 昨日、三服文学賞の「書く愉しみ」のアクティビティとして、インクの色を混ぜて文学作品を書き写す「色写経室」をご体験いただきました。いかがでしたか?

 

第2回三服文学賞 授賞式▲色写経室体験の様子

 

葦田 すごく新鮮な体験でした。自身でも、抜き書き帳を作っており、そこに好きな本の一節を抜き書いたりしていたのですが、色写経室では、それぞれの文学作品に合った色を作り、書くことで、普段はただ白黒の世界だったものに奥行きができたようでした。思わず楽しくなり、落書きみたいなものもたくさんしてしまいました。

深井 ありがとうございます。葦田さんは普段色写経室でご提供している紙とは別に、大きな写経用紙の裏紙を使って自由に書いておられました。とてもアーティスティックな作品になっています。

 

第2回三服文学賞 授賞式▲葦田さんの作品

 

深井 今後、1年間のライターインレジデンス権をどのように使いたいですか?

葦田 サウナが大好きなので、サウナに入ってリセットしては書く、リセットしては書く、というのを続けたいです。ありがたい機会を頂戴したと思っております。

深井 和多屋別荘内の「湯殿心晶」にはミストサウナもありますので、ぜひサウナでリフレッシュして創作いただけるとうれしく思います。

インタビューは以上となります。改めて、第2回三服文学賞大賞の受賞、おめでとうございます!

 

今後について

今後は大賞作品「水のからだ」やライターインレジデンスでの作品を元に、オリジナルの書籍が制作される予定です。続報をご期待ください。

 

「三服文学賞」とは

三服文学賞ロゴお茶と本を愉しむための書店「BOOKS&TEA 三服」を開業した旅館・和多屋別荘が主宰する温泉旅館発の新しい文学賞です。

三服や嬉野温泉に関わりのある7つの事柄をテーマに文学作品が募集され、大賞受賞者には受賞作の書籍化と和多屋別荘に1年間宿泊して執筆活動ができる“三服作家”としてのライターインレジデンスの権利が進呈されます。

三服文学賞は「暮らしのなかで書く時間を愉しむ」という理念のもと立ち上げられました。料理を食べる楽しみがあれば作る楽しみもあるように、文学にも読む楽しみがあれば、書く楽しみがあっていい。

普段なかなか文章を書く機会がない方、嬉野温泉や三服に訪れたことがない方、プロアマ問わず、全国から広く作品を募っています。

 

「BOOKS&TEA 三服」とは

「BOOKS&TEA 三服(さんぷく)」は、和多屋別荘(佐賀県嬉野市)が開業した、「お茶」「暮らし」などのテーマにあわせた、約1万冊の書籍を自由に閲覧・購入可能な書店です。

お茶に関する貴重な古書や、「一服、二服、三服」とジャンルを横断して深く知ることができる特集コーナーなど、知的好奇心を刺激するセレクトとなっています。

「三服」という名称には、お茶を飲んで一服する体験をより多く・深く体験していただきたいという想いが込められています。ストレスが多い毎日のなかでふっと息を抜いてリラックスし、お茶と読書を愉しめる空間です。

 

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