5月31日（金）、2024年の上半期ベストセラー（日販調べ）が発表されました（集計期間：2023年11月22日～2024年5月20日）。

 

「ライトな読者」にヒットする「タイパ」「コスパ」意識や、「感情移入」「共感性」がキーに

ランキング全体の傾向として、10代から20代の若者や、普段本をあまり読まない「ライトな読者」にもヒットする、手に取って簡単に読みやすい内容や構成になっている作品が多くランクインしました。加えて、おもしろいものを短時間で選んで読みたいという、タイムパフォーマンスやコストパフォーマンスの意識からか、映像化やタイトル受賞による話題や評判が、より速いスピードで拡散された作品が、大きく伸びる傾向が顕著になりました。

また、作品の内容や主人公に読者が「感情移入」できるものが好まれ、そこから生まれた「共感」がさらに作品の話題や評判を呼ぶ傾向がみられました。一般読者のSNS投稿で話題になっている作品が上位にランクインしていることから、自分の関心が強いトピックスが表示されるSNSの特性によって「共感」が生まれやすく、「バズり作品」を生み出すきっかけになっているとも考えられます。

 

総合ランキング

あなたも「変な家」に迷い込む！？　読み出したら止まらない、異例の不動産ミステリーが上位に

家の間取り図から生まれる謎を解き明かす、人気シリーズ最新刊『変な家2　～11の間取り図～』が2024年上半期ベストセラー総合第1位となりました。本作は、ホラー作家でYouTuberとしても活躍する雨穴さんによるオカルトミステリーであり、内容は間取り図から謎やトリックを読み解くというものです。作品内に図が多いことで、普段本を読まない人でも手に取りやすく、2024年3月に映画化されたことでさらに注目を集めました。

第4位には同シリーズ既刊の『変な家』、第7位に『変な絵』がランクインし、文庫部門第1位の『変な家　文庫版』も含めて、「変な家」シリーズの大旋風が巻き起こりました。シリーズ第1弾の『変な家』は、紙の書籍の累計発行部数が94万部を突破しました（2024年5月30日時点）。

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第5位にランクインした『成瀬は天下を取りにいく』は、主人公の女子中学生・成瀬あかりが独自のキャラクターを武器に、夢を叶えるため友達や周囲を巻き込んでいくみずみずしい物語。舞台となった滋賀県大津市を中心に全国へ人気が拡大し、本作が作者のデビュー作にもかかわらず「第21回本屋大賞」の大賞を含む多くの賞を受賞しました。2024年1月に刊行された続編『成瀬は信じた道をいく』は第16位にランクインし、成長し大学生となった「成瀬」が自分の道を信じ抜き、突き進む爽快な姿が人気を集めました。

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一方で、手堅い人気作品も昨年に引き続きランクインしました。第2位と第3位は、老若男女から支持されている『大ピンチずかん2』と『大ピンチずかん』で、世の中のさまざまなピンチを「大ピンチレベル」と「なりやすさ」で分類し、対処法を描いている人気シリーズです。

 

部門別ランキング

【単行本ビジネス】『頭のいい人が話す前に考えていること』が第1位！

発売当初からSNSで話題となった『頭のいい人が話す前に考えていること』が、2023年年間ベストセラー単行本ビジネス部門第1位に続き、2024年上半期ベストセラーでも第1位となりました。

 

世相を反映してか、資産形成・運用に関する商品も好調でした。2024年1月から開始となった新NISAに関する入門書である『はじめての新NISA&iDeCo』は、オールカラーで導入マンガなどを掲載した、これから資産運用を始める人にもやさしく、わかりやすい内容が人気を集めました。ほかにも『きみのお金は誰のため』、『87歳、現役トレーダー　シゲルさんの教え』などがランクインしました。

 

【新書フィクション】「ハイキュー！！」が上位を席巻！映像化により話題となった商品が好調

『劇場版ハイキュー！！　ゴミ捨て場の決戦』が第1位となりました。2024年2月に公開されて大きな話題を呼んだ映画のノベライズで、シリーズ内でも屈指の人気を誇る試合が描かれています。

 

第4位は、アニメ化やそれに伴う楽曲の人気により、話題となった『【推しの子】』の本編開始前を描いた『【推しの子】　～一番星のスピカ～』。上位ランクインのほとんどが、映画化・アニメ化によって話題となった作品で、映像化による話題からの購入傾向がみられました。

 

【文庫】『変な家』が文庫でもトップに！映像化による人気や、過去の名作の掘り起こしも

『変な家』の文庫版が第1位となり、「変な家」シリーズが総合・単行本フィクション・文庫部門での三冠を達成しました。

 

第2位は『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』でした。人気シリーズの第1作であり、コロナ禍で過疎化した田舎町を舞台に発生した殺人事件の真相に迫っています。

 

第3位には、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』がランクインしました。戦時中の日本にタイムスリップした女子高生と特攻隊員の恋を描いたラブストーリーで、当初TikTokの投稿をきっかけに中高生の間で「泣ける」と話題になり、2023年12月に公開された映画のヒットを機に人気が再燃しました。

 

ほかにも『アルジャーノンに花束を　新版』『ある閉ざされた雪の山荘で』など、映像化やSNSでの盛り上がりにより、過去の名作が再度見直される傾向も見られました。

 

【写真集】乃木坂46 5期生初の写真集『あの頃、乃木坂にいた』が第1位を獲得

乃木坂46の5期生初の写真集『乃木坂46 5期生写真集 あの頃、乃木坂にいた』が第1位となりました。2022年2月に加入した5期生11人による写真集で、修学旅行のようなカットや初期メンバーの写真集のオマージュカットも掲載されるなど、注目を集めました。

 

第2位には乃木坂46の3期生メンバー、山下美月さんの写真集『乃木坂46山下美月2nd写真集　ヒロイン』がランクインしました。2024年5月に卒業コンサートを終えた山下さんのアイドル活動の集大成となる1冊となっています。

 

第3位は、松本潤さんの初のソロ写真集『JUN MATSUMOTO 20220830-20231026 THE RECORDS OF DAYS OF LIVING AS IEYASU』でした。39歳の誕生日である2022年8月30日から、大河ドラマ「どうする家康」がクランクアップを迎えた2023年10月26日までの記録が収められています。

 

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