4月9日(水)、東京・元赤坂の明治記念館において、2025年本屋大賞の順位が発表され、阿部暁子さんの『カフネ』(講談社)が大賞に輝きました。
本書は、弟の元恋人との出会いを経て、食べることを通じて二人の距離を縮める様子を描いた物語です。第8回未来屋小説大賞および第1回「あの本、読みました?」大賞でも、大賞を受賞した作品です。
『カフネ』
発行所:講談社
発売日:2024年5月
判型:四六判
定価:1,870円(税込)
ISBN:9784065350263
一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。
やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。
(講談社公式サイト『カフネ』より)
《作者プロフィール》
阿部暁子(あべ・あきこ)
岩手県出身、在住。2008年『屋上ボーイズ』(応募時タイトルは「いつまでも」)で第17回ロマン大賞を受賞しデビュー。著書に『どこよりも遠い場所にいる君へ』『また君と出会う未来のために』『パラ・ スター〈Side 百花〉』『パラ・スタ ー〈Side 宝良〉』『金環日蝕』『カラフル』などがある。
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▲授賞式で「2004年春に大学生協で、第1回本屋大賞受賞という帯に惹かれて『博士の愛した数式』を、奨学金と仕送り生活の中、一大決心で購入しました。小川先生の愛に満ち溢れた物語に心を打たれ、こんな物語を死ぬまでに書きたいと思いました。あれから長い時間が経過し、今ここに立たせていただいていることを光栄に思います」と受賞の喜びを語る阿部暁子さん
カフネとは
「カフネ」とはポルトガル語で、「愛する人の髪にそっと指を通す仕草のこと」。著者の阿部暁子さんは、『翻訳できない世界のことば』という本にあったこの言葉の持つ意味から本作を着想されました。(講談社公式サイト『カフネ』より)
2025年本屋大賞順位
2025年本屋大賞は、全国の488書店、書店員652人の投票により一次投票が行われ、ノミネート10作品を決定。336書店、書店員441人の二次投票を経て、大賞が決定しました。
順位 | 書名 | 著者名 | 出版社 |
大賞 | 『カフネ』 | 阿部暁子 | 講談社 |
第2位 | 『アルプス席の母』 | 早見和真 | 小学館 |
第3位 | 『小説』 | 野﨑まど | 講談社 |
第4位 | 『禁忌の子』 | 山口未桜 | 東京創元社 |
第5位 | 『人魚が逃げた』 | 青山美智子 | PHP研究所 |
第6位 | 『spring』 | 恩田陸 | 筑摩書房 |
第7位 | 『恋とか愛とかやさしさなら』 | 一穂ミチ | 小学館 |
第8位 | 『生殖記』 | 朝井リョウ | 小学館 |
第9位 | 『死んだ山田と教室』 | 金子玲介 | 講談社 |
第10位 | 『成瀬は信じた道をいく』 | 宮島未奈 | 新潮社 |
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【2025年本屋大賞 実施概要】
■選考期間
2024年12月~2025年4月
■対象作品
2023年12月1日~2024年11月30日に刊行された(奥付に準拠)日本の小説
(判型問わず、オリジナルの小説)
■投票参加資格者
新刊を扱っている書店の店員であること
(オンライン書店店員、パート社員も含む)
■選考方法
(1)一次投票で一人3作品を選んで投票
(2)一次投票の上、集計結果上位10作品をノミネート本として発表
(3)二次投票はノミネート作品をすべて読んだ上で、全作品に感想コメントを書き、ベスト3に順位をつけて投票
(4)二次投票の集計結果により大賞作品を決定
翻訳小説部門は『フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫-』
翻訳小説部門の第1位は『フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫-』(レベッカ・ヤロス著、原島文世訳、早川書房)、第2位は『白薔薇殺人事件』(クリスティン・ぺリン著、上條ひろみ訳、、東京創元社)と『別れを告げない』(ハン・ガン著、斎藤真理子訳、白水社)でした。
「超発掘本!」にラフト・エヴィング商會『ないもの、あります』
また、本屋大賞発表前の4月2日(水)には、「発掘部門」の2025年「超発掘本!」に『ないもの、あります』(クラフト・エヴィング商會、ちくま文庫)が選ばれました。
「発掘本」はジャンルを問わず、2023年11月30日以前に刊行された作品のなかで、時代を超えて残る本や、今読み返しても面白いと思う本をエントリー書店員が一人1冊選びました。
さらにその中から、これは!と共感した1冊を実行委員会が選出し「超発掘本!」として発表しました。
『ないもの、あります』
著者:クラフト・エヴィング商會
発売日:2009年2月
発行所:筑摩書房
定価:990円(税込)
ISBN:9784480425713
よく耳にするけれど、一度としてその現物を見たことがない。そういうものがこの世にはあります。
たとえば「転ばぬ先の杖」。あるいは「堪忍袋の緒」。こういうものは、どこに行ったら手に入れられるのでしょうか?
このような素朴な疑問とニーズにお応えするべく、わたくしどもクラフト・エヴィング商會は、この世のさまざまなる「ないもの」たちを、古今東西より取り寄せて、読者の皆様のお手元にお届けします。文庫化にあたり、新たに3品を加えました。(筑摩書房公式サイト『ないもの、あります』より)
《著作者プロフィール》
クラフト・エヴィング商會(しょうかい):吉田浩美、吉田篤弘両氏による制作ユニット
著書に『クラウド・コレクター 雲をつかむような話』『すぐそこの遠い場所』『ないもの、あります』『おかしな本棚』、吉田浩美の著作として『a piece of cake』、吉田篤弘の著作として、『月とコーヒー』『おやすみ、東京』『つむじ風食堂の夜』『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『遠くの街に犬の吠える』『雲と鉛筆』などがある。著作の他に装幀の仕事を数多く手がけ、2001年、講談社出版文化賞・ブックデザイン賞を受賞している。