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「ブックサンタがもっと浸透するためにできること」を考える!ブックサンタ2024 オチャノバイベント開催

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「ブックサンタ」は誰でもサンタになれる、子どもたちに本を贈る社会貢献活動

ブックサンタがもっと世の中に浸透するためにできることを出版界全体で考えるイベントとして、「ブックサンタ2024 オチャノバイベント」が11月7日(木)、日販本社7階のオチャノバにて開催されました。当日は、リアル、オンラインあわせて、出版業界に携わる総計75人が参加しました。

ブックサンタとは、NPO法人チャリティーサンタと日販、リブロ(当時)の3者が連携し、2017年にスタートした社会貢献プロジェクトで、さまざまな困難によって体験格差を抱える全国の子どもたちに本を贈る活動です。本を贈りたいと思った人が全国の1,800店を超える参加書店で本を選んで購入すると、チャリティーサンタをはじめとする全国数百のNPOを通じて、子どもたちへ本のプレゼントが届きます。ほかにも、オンライン書店やクラウドファンディングなどさまざまな支援方法が用意されています。

今年から、絵本の情報・通販サイト「絵本ナビ」を運営する絵本ナビが特別協力として参加。また、10月には2024年度「グッドデザイン賞」を受賞し、特に優れたデザインとして高く評価された「グッドデザイン・ベスト100」にも選出されました。

なお、「ブックサンタ2024」の本の受付期間は、12月25日(水)までとなっています(オンライン書店は12月27日(金)まで)。

 

クリスマスにとどまらない支援の広がりを目指す

当日は、清輔夏輝さん(NPO法人チャリティーサンタ代表理事)、舟井恵さん(NPO法人チャリティーサンタ)、大塚啓志郎さん(ライツ社代表取締役社長)、三芳寛要さん(パイ インターナショナル代表取締役社長)、金柿秀幸さん(絵本ナビ代表取締役社長CEO)、野上由人さん(NICリテールズ執行役員)という出版業界をけん引するゲストが登壇し、各々の経験や知識をもとにさまざまな意見が交わされました。

はじめに、チャリティーサンタの舟井さんから、ブックサンタのこれまでの軌跡が報告されました。

 

▼ブックサンタの活動を紹介する舟井恵さん(NPO法人チャリティーサンタ)

舟井恵さん(NPO法人チャリティーサンタ)

 

2017年に、58書店の協力によりスタートしたブックサンタですが、2022年には47都道府県すべてで書店の参加が実現。NHKをはじめさまざまな媒体で大きく紹介され、前年比216%となる7.5万冊が寄付として集まりました。徐々に認知が拡大したこともあり、2023年にはリアル書店からの寄付が106,345冊(前年比191%)、オンライン書店やクラウドファンディングをあわせると計128,898冊に到達。参加書店も1,683店舗と大きく増加しました。これまでの累計寄付冊数は27万冊を超えています。

今後は、「クリスマスと誕生日には本のプレゼントが届く社会」として、毎年100万冊を子どもたちに届けられる状態を目指すとのこと。

すでに、クリスマス以外にも誕生日や進学祝いといった、子どもたちにとって特別な日に本のプレゼントが届く支援活動がスタートしていますが、これはチャリティーサンタに寄せられた「誕生日やクリスマスには、子どもに思い出や誰かに思われているという気持ちを届けたいが、難しい」という声に応え、支えたいという思いから実施されています。そのためにも、①子ども、家庭、連携団体とつながり、対象となる子ども50万人にリーチする、②賛同する書店、寄付者を募り、100万冊が集まるようにしていきたい、という2点を今後の目標としています。

代表の清輔さんは、参加者から寄せられた質問に回答しつつ、「子どものために手を差し伸べたい大人はたくさんいると僕は信じていて、その人たちが気軽に行動できるような仕組みや場面を設計していくこと」が重要であり、ブックサンタは「それが書店を通じて叶えられる」とコメント。「ブックサンタは“あなたも誰かのサンタクロース。”がキャッチコピー。大人たちが参加しやすくなる、大人を行動させることが大切だと思っています」とその思いを語りました。

 

▼清輔夏輝さん(NPO法人チャリティーサンタ代表理事)

清輔夏輝さん(NPO法人チャリティーサンタ代表理事)

 

寄付者や届けた家庭からの「声」はこちら

 

さらに多くの人に参加してもらえる“大きなチーム”へ

後半ではゲストが登壇し、事前にゲストから出てきたキーワードに沿ってトークが展開されました。キーワードとして挙げられたのは「主人公は贈る側と受け取る側」「誰もが絵本を自由に読める環境づくり」「適切に届ける仕組み」「広報しすぎない」「シンプルであること」「自分だけの本になる喜び」「持続可能にするために」「SNSの使い方」「大きいチーム」の9つ。

ひとつ目として「主人公は贈る側と受け取る側」というキーワードでは、パイ インターナショナルの三芳さんから、「ブックサンタに限らず、何が一番その人の心に届くかを考えたときに、主人公は誰なのかというところが大事。『本を欲しい』と思っている子どもたちと贈りたいと思っている大人たちの思いがつながる物語を核とすることが、取り組みの拡散につながるのではないか」とのコメントがありました。

 

▼三芳寛要さん(パイ インターナショナル代表取締役社長)

三芳寛要さん(パイ インターナショナル代表取締役社長)

 

清輔さんからは、「いま本を届けているのは、親御さんと子どもだけのご家庭で、ほかにあまりつながりがないという方がすごく多い。そういう場合、お祝いしたり、その子を見守ったりできる人が保護者の方しかいない。でも、ブックサンタを通して誰かが子どものために考えてくれていると感じられることが本当に嬉しい、という声が非常に多く届いている。そういうところでは、寄付する側と受け取る側の出会いはできているのかなと思っている」との回答がありました。

「適切に届ける仕組み」に関しては、絵本ナビの金柿さんから2011年の東日本大震災の時のエピソードが語られ、その後、継続的に本を届けるための適切な仕組みやその難しさ、絵本ナビが協力に至った経緯などについて語られました。

 

▼金柿秀幸さん(絵本ナビ代表取締役社長CEO)

金柿秀幸さん(絵本ナビ代表取締役社長CEO)

 

「広報しすぎない」というキーワードでは、ライツ社の大塚さんから発信の難しさや出版社にできること、清輔さんからはチャリティーサンタ側からの広報の取り組み状況などについて語られ、SNSの活用についても意見が交わされました。

 

▼大塚啓志郎さん(ライツ社代表取締役社長)

大塚啓志郎さん(ライツ社代表取締役社長)

 

「大きいチーム」というキーワードでは、「出版界全体で考えるイベント」という当日のテーマを踏まえ、NICの野上さんが「チャリティーサンタと我々書店の間で、この取り組みをできるだけ大きくしようと参加法人、店舗を増やすことをやってきて、1,800書店を超えた。こんなにたくさんの書店が参加する企画はそうないので、書店を広げるほうはもうやり尽くしたに近い。このあとのステップという意味では、まさに“大きなチーム”で取次の垣根を越えるのはもちろんのこと、肝心要の本を作っている出版社の人たちにもっと参加してもらえるような、一緒にできることを増やしていくフェーズに入っていると思う」と述べました。

 

▼野上由人さん(NICリテールズ執行役員)

野上由人さん(NICリテールズ執行役員)

 

それを受けて、「誰もがやりたい、参加したいという類まれな活動だと思う」という金柿さんからは、100万冊実現に向けての活動資金の必要性も踏まえ、出版業界に閉じず、さまざまな企業から協賛を募ってもいいのではないかという提案がなされました。

その後、ゲストを交えて参加者によるグループ座談会が行われ、盛況のうちにイベントは終了となりました。

 

〉「ブックサンタ」の参加方法や参加書店一覧など詳しい情報は、 公式サイトからご確認ください

 

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