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作家・知念実希人さんが書店で「サンタクロース」に!紀伊國屋書店新宿本店を歩いて選んだ10冊とは……?

医療ミステリーの旗手で、「天久鷹央」シリーズなどのベストセラーで知られる作家の知念実希人さん。全国の大変な境遇にいる子どもたちに今読んで欲しい本を贈る「ブックサンタ」に2021年から参加し、今年から始まった「作家サンタ」にも携わっています。

今回は、NPO法人チャリティーサンタ運営事務局の清輔夏輝さんとともに、「作家サンタ」である知念さんが、寄付したい本を実際に書店で選ぶ、貴重な場面に密着しました。

※(写真左から)知念実希人さん、清輔夏輝さん

「ブックサンタ」とは
NPO法人チャリティーサンタが、全国の大変な境遇に置かれた0~18歳の子どもたちに本を贈るため、2017年に書店や日本出版販売と連携してスタートした社会貢献プロジェクトです。
本を贈りたいと思った人が参加書店や特設オンライン書店で本を買うと、チャリティーサンタをはじめとした全国数百のNPOを通じて、子どもたちへ本のプレゼントが届きます。
https://booksanta.charity-santa.com/

「作家サンタ」とは
作家(小説家・文筆家・絵本作家など)が、子どもたちに、今読んで欲しい本を選んで贈る「ブックサンタ」特別プログラムです。
https://writer.charity-santa.com/

知念実希人(ちねん・みきと)

1978年、沖縄県生まれ。2004年から医師として勤務。2011年、「レゾン・デートル」で島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞。2012年、同作を『誰がための刃』と改題し、デビュー。2018年、『崩れる脳を抱きしめて』で広島本大賞、沖縄書店大賞を受賞。同作で本屋大賞にノミネートされる。他の著書に「天久鷹央」シリーズ、『螺旋の手術室』『ひとつむぎの手』『仮面病棟』『ムゲンのi』『優しい死神の飼い方』『硝子の塔の殺人』などがある。

 

最初の一冊には、“自分が本を好きになったきっかけ”の本を

知念 (売場を一周しながら)本当にこのお店の児童書は充実していますね!

清輔 改めて見ると圧倒される量ですね。普段、児童書フロアを歩かれることはありますか。

知念 親戚の子どもがとても本好きなので、よく一緒に本を選びに来ます。せっかくだから、子どもに楽しんでもらえる本を選びたいですよね。

清輔 気になる最初の一冊は。

知念 海外ミステリーを。これこれ! 『奇巌城』にします。子どもの時に名作大全のような全集で読んだのですが、それがものすごくおもしろくて。僕はこれを読んで本を好きになったんです。そこからミステリーにハマって、その後、別冊宝島のルパン三世シリーズを全部読みました。

 

奇巌城
著者:モーリス・ルブラン 南洋一郎
発売日:2005年02月
発行所:ポプラ社
価格:660円(税込)
ISBNコード:9784591085295

清輔 やはりミステリー作家としてはミステリーを選んでしまう。

知念 そうですね、つい手に取ってしまいます。この流れで行くと、次は『アクロイド殺し』を。

……いや、ちょっと待ってくださいね。『そして誰もいなくなった』と迷いますね。でも登場人物がシンプルなのと、最後にびっくりする方にしようかな。

名探偵ポアロ アクロイド殺し
著者:アガサ・クリスティー 羽田詩津子
発売日:2022年06月
発行所:早川書房
価格:1,650円(税込)
ISBNコード:9784152101464

 

大人がちょっと気づかないような視点があります

――ミステリーの次は絵本売場にいらっしゃいましたね。以前、知念さんが寄付をされた際にも、「ヨシタケシンスケさんの本を寄付した」とSNSで投稿されていました。

知念 そうですね。子どもだけではなく、大人も一緒に読めるところが好きです。ブックサンタで届くお家では、一緒に読み聞かせをする親御さんもいるでしょうし。

ヨシタケシンスケさんの作品は、大人がちょっと気づかない、子どもならではの視点がありますよね。それが新しい。

ねぐせのしくみ
著者:ヨシタケシンスケ
発売日:2020年07月
発行所:ブロンズ新社
価格:1,078円(税込)
ISBNコード:9784893096753

▲「懐かしい! この本好きでした」、「(昔からある本が)知らない間に随分お洒落な装丁になっていますね」、「このキャラクターが健気でかわいいです」、「この本なら楽しんでもらえるかな」などと、書店員さんともお話ししつつ、売場を巡りながら次々と本を手に取る知念さん。

 

本屋は“物語と出合える場所”

清輔 お話を伺っていると、もともと育った環境にたくさん本があったのだろうな、と感じます。

知念 実は、幼稚園の頃からずっと毎日のように、歩いて5分のところにあった書店に一人で行っていました。ちょっと時間があれば本屋に行けるという生活で、目当ての本ではなくても、すごく素敵な本に出合えたのも楽しい思い出です。

――既に多くの本を手に取られていますが、実際に書店で寄付する本を選ぶ、というのはいかがですか。

知念 楽しいです! 知らない本が溢れる店内を見て歩いて、気が付いたら思わずスッと本に手が伸びている。これは本屋に行く醍醐味です。本屋は物語と「出合える」場所。その売場に寄らなければ気づけなかった本に、装丁や書店員さんのおすすめによって興味を持つ。そうした機会がリアル書店にはあるんですよね。

 

知念実希人さんの「作家サンタ」ぶりに密着!!

▲カゴいっぱいに寄付する本を選んでいただきました。今年度から新しく作成・配付されている「小学生向け推薦図書リスト」には、知念さんの著作『放課後ミステリクラブ』も。

▲寄付の方法は、レジで「ブックサンタでお願いします!」と伝えるだけ。サンクスレターとステッカーを受け取ることができます。寄付した本は、書店からNPO法人チャリティーサンタに送られ、クリスマスや誕生日など特別なプレゼントクリスマスとして子どもたちのご家庭に届けられます。

 

どんな環境にいる子にも、読書の楽しさと豊かさを伝えられたら

――本日は、知念さんがサンタクロースになる様子に密着させていただきありがとうございました。「作家サンタ」として、ブックサンタの活動に対して、メッセージをお願いします。

知念 本は、自分の人生を豊かにする一つのツールです。物語の中に入って現実の時間を少しだけでも癒すこともできるし、普通に生きていたら自分の人生では経験できないいろいろな体験もできます。僕は子どもの時からそれを感じていますが、やはり本を読む機会がないとそれは体験できません。

どんな環境にいる子にも、そんな読書の楽しさと豊かさを伝えられたらと思いますね。

――最後に、知念さんの読者の皆様にもぜひメッセージを。

知念 応援していただいてありがたいです。特に単行本だったら1,800円くらいするので、何十億円かけてできたハリウッドの映画を1本見られるようなお金ですよね。それでも僕の本を手に取っていただいて、「ブックサンタ」で贈りたいという方がいらっしゃるので、次のものを読みたいと言ってくださる方がいる限り、頑張って書いていきたいです。読者のため、という原点は忘れず、やっていきたいと思います。

――本日はありがとうございました!


取材後記
全国1,600店舗超が参加する書店キャンペーンというのは、日本最大級。
1冊数百円から、匿名で誰でもサンタになれるという手軽さも魅力的ですね。
知念さんのように自分の思い入れのある本や、最近人気の本など、どんな本を贈ろうか考えるのも楽しいなと感じました。皆様もぜひ参加してみてください。

 

参加書店はこちらから

ブックサンタ2023 参加店一覧

 

「作家サンタ」知念実希人さんの選んだ寄付本リスト ※選ばれた順に掲載

『奇巌城』(作:モーリス・ルブラン、訳:南洋一郎/ポプラ社)
『名探偵ポアロ アクロイド殺し』(著:アガサ・クリスティー、訳:羽田詩津子/早川書房)
『ねぐせのしくみ』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)
『バーバパパのいえさがし』(作・絵:アネット・チゾン、タラス・テイラー、訳:山下明生/講談社)
『シートン動物記 オオカミ王ロボ』(作:アーネスト・トンプソン・シートン、編・訳:千葉茂樹、監修:横山洋子、絵:姫川明/Gakken)
『どんどこ ももんちゃん』(作・絵:とよたかずひこ/童心社)
『ノンタンのたんじょうび』(作・絵:キヨノサチコ/偕成社)
『恐竜世界のサバイバル』(文:洪在徹、絵:相馬哲也、監修:平山廉/朝日新聞出版)
『おでかけ版 きんぎょがにげた』(作:五味太郎/福音館書店)
『十角館の殺人』(著:綾辻行人/講談社)

撮影協力:紀伊國屋書店新宿本店
取材協力:NPO法人 チャリティーサンタ
(2023年10月20日取材)