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大賞に古都こいと「如月さんちの今日のツボ」!第32回小川未明文学賞の贈呈式開催

3月27日(水)、東京・五反田の学研ビルで第32回小川未明文学賞贈呈式が開かれ、「如月さんちの今日のツボ」(長編)で大賞を受賞した古都こいとさん、「まよいねこトラと五万五十五歩」(短編)で優秀賞を受賞したやすふみえさんに、賞金と賞状、記念品などが授与されました。

大賞作品は2024年11月頃にGakkenから書籍として刊行される予定です。

 

大賞「如月さんちの今日のツボ」

大賞の「如月さんちの今日のツボ」は、鍼灸院を営む血の繋がりのない父親、その弟たち3人からなる家族を、男子中学生の視点から描いたとてもあたたかい作品(選考委員の今井恭子さんの選評より)です。

主人公の如月青葉(きさらぎ あおば)は、中学2年生の男子。鍼灸師の父親と弟の黄介、碧との4人暮らし。母親は5年前に交通事故で亡くなっている。男ばかりの4人の暮らしも、それなりに楽しく過ごしているが、いくつかの出来事の中で、青葉は家族のなかでのつながりに気付いていく。
青葉は学校で美村(よしむら)という女子にぶつかってしまい、けがをさせてしまう。彼女はピアノの発表会をまえにして、腱鞘炎で悩んでいることを知る。帰宅後に、父親に腱鞘炎に良く効くツボを教えてもらおうとするが、素直に聞けずにいる。実は青葉だけが父親と血がつながっていないことを、ぼんやりと知っている。弟たちとの関わりの中で、少しずつ家族のつながりに思い至る4つの物語。さて……。

(小川未明文学館公式サイト「第32回小川未明文学賞 受賞作決定」より)

▲古都こいとさん

贈呈式であいさつした古都さんは「受賞の知らせを受けた時、勤務先の鍼灸院におりました。(鍼灸院に通う)患者さんの中には受賞作『如月さんちの今日のツボ』の主人公である青葉くんと同じ十代の子どもたちもいます。『部活でけがをした。どうしてもやる気が出ない』。本作はこうした患者さんとその家族と向き合ううちに生まれたものです。この受賞を励みに創作活動を続けていきたいと思います」と語りました。

 

優秀賞「まよいねこトラと五万五十五歩」

優秀賞の「まよいねこトラと五万五十五歩」は、猫と尺取虫の友情を描いた短編作品です。

昼寝の邪魔をして挑発してきたカラスを追いかけているうちに、森深くに迷い込んでしまったトラねこのトラ。がけから落ちて足までひねってしまいます。満身創痍のトラがアラカシの木の下で休んでいると、アラカシの幹そっくりに擬態した尺取虫と出会います。その尺取虫はなぜか数を数えていました。不思議に思ったトラは、数を数える理由をたずねます。
はじめはトラをうっとうしそうにしていた尺取虫ですが、自分を食べようと襲って来た鳥をトラが撃退してくれたことから、トラをありがたく思うようになります。ふたりの間に芽生え始めた友情。そして変化する尺取虫のからだと数の秘密。さて、トラねこトラは、この森から自分の元のすみかまで帰ることができるのでしょうか。

(小川未明文学館公式サイト「第32回小川未明文学賞 受賞作決定」より)

▲やすふみえさん

贈呈式で登壇したやすさんは「ふだんは大学の教育学部で生物学や生命科学を教えています。今回の物語もそのような観点から生まれました。これまで、多くの作家先生が子どもたちに楽しい創造の世界を届けてきたように、これからは私も世界を豊かにしていく物語を書いていきたい」と話しました。

 

小川未明文学賞とは

小川未明文学賞は、未来に生きる子どもたちにふさわしい児童文学作品の誕生を願って、1991年に創設された公募による文学賞です。上越市出身の児童文学作家・小川未明の精神である「誠実な人間愛と強靭な正義感」を、子どもたちに育むような創作児童文学作品を募集されています。

第32回は、短編部門(小学校低学年向け)と長編部門(小学校中学年以上向け)で作品を募集。合計553編(短編作品309編、長編作品244編)の応募作品の中から、2024年2月15日(木)に開催された最終選考会で、大賞と優秀賞が決定しました。

大賞受賞者には、賞金100万円と記念品 『定本小川未明童話全集』(全16巻 別巻1 大空社刊)、優秀賞には、賞金20万円が授与されます。大賞作品はGakkenから単行本として刊行されます。

主催:上越市 小川未明文学賞委員会
協賛:Gakken
後援:文化庁 新潟県 早稲田大学文化推進部 上越教育大学 日本児童文学者協会 日本児童文芸家協会