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凪良ゆうさんが「汝、星のごとく」花火大会で思わず涙!「『誰かの特別な一冊』をこれからも書き続けたい」

汝、花火大会2

8月19日(土)、六本木 蔦屋書店(東京)の店内で、花火大会が開催されました。これは、「本屋大賞」を2度受賞した作家・凪良ゆうさんの「書店と書店員さんに恩返しをしたい」という思いからスタートした【「汝、星のごとく」花火大会】の一企画として開催されたものです。

この日、4回にわたって、プロジェクションマッピングで書店のウインドウに大きな花火が映し出され、大歓声が上がりました。打ち上がった花火は、凪良さんが本屋大賞を受賞した小説『汝、星のごとく』の作中に描かれた、愛媛県今治市の「おんまく」祭りの花火をモチーフにしています。

汝、星のごとく 花火1

▲書店のウインドウに何度も打ち上げられた花火に、多くの人が見入った

 

紙の本を売る、“火気厳禁”であるはずの書店で開催された、異例の「花火大会」。当日、書店で読者や関係者とともに花火を見上げた凪良さんに、その感想や、今回のイベントに込めた思いについて、メールにてお答えいただきました。

 

喜びも悲しみも悔しさも、いつも書店と共に

汝、花火大会_凪良ゆうさん

――「本屋で花火大会」というのは、いままで誰も思いつかなかった企画だと思います。書店で花火を上げよう、という企画が実現したご感想をお聞かせください。また、凪良さんがこだわられたポイントなどはありますか?

凪良 わたしは書店さんに育ててもらった作家だと思っています。『流浪の月』で初めての本屋大賞をいただいたときも、それがコロナ初年度に当たったときも、喜びも悲しみも悔しさも、いつも書店さんと共に味わってきました。そして今年『汝、星のごとく』で2度目の本屋大賞をいただいたとき、今度こそ『流浪の月』のときにできなかった書店さんへの恩返しをしたいと講談社の担当編集者さんと相談をしました。それが今回の「本屋で花火を見上げよう」という企画につながりました。

出版不況と言われる時代ですが、書店さんには昔と変わらずたくさんの魅力的な物語が読者さんを待っています。ひとりでも多くの読者さんに書店さんへと足を運んでいただきたい、ささやかですがそのきっかけになれたのなら嬉しいです。

――実際の「おんまく」の花火も鑑賞されていらっしゃいますが、本屋で、ご自身の作品とともに見る花火はいかがでしたか?

凪良 おんまく祭りの花火を観るのは今年で2度目です。去年は『汝、星のごとく』にも出てくる今治の国際ホテルから。そして今年は今治市のご好意で観覧席を用意していただき、最高の場所から花火を観ることができました。海上から打ち上がる花火の迫力と美しさに息を飲みました。これ以上の花火はないと思いましたが、書店さんの壁一面に映し出された花火にも同じくらいの感動を味わいました。

本物の打ち上げのように最初は控えめに、しかし段々と勢いを増していき、フィナーレは圧巻の柳花火。流れ落ちていく光と、合間に流れる物語の紹介文、それをたくさんの読者さんが観てくださっている。この企画を実現してくださった書店さん、講談社さん、その他関係者スタッフの皆さんが、書店さんの営業が終わった夜中から明け方まで、何度も打ち上げを試してくださっていたことも思い出し、我慢できずに涙がぶわりと……。

生憎とティッシュがなく、担当さんが苦肉の策としてトイレットペーパーを取ってきて涙を拭ってくれたのですが、濡れてちぎれたペーパーが顔に貼りつくという恰好悪い事態になりました(笑)。恥ずかしかったけど、そんなのどうでもいいくらい美しい花火でした。

書店さんへのご恩返しと言いながら、やっぱりいただいてばかりだなあと、改めてこの企画に尽力してくださった書店さんとスタッフさん、そして参加してくださった読者さんに感謝の思いでいっぱいです。

――今年の本屋大賞の受賞式では、「最初、わずか数人からスタートした賞が、全国の書店員さんの本を愛する気持ちと書店に足を運んでほしいという熱意だけを原動力に、20年かけていま本を読まれている人々に一番求められる大きな賞になりました。その道のりを思うと、『出版不況』『小説が売れない』と言われる時代の作家の一人として、感謝と尊敬の念でいっぱいになります。20年間、本当に続けてくださってありがとうございます。そしてこれからも小説をよろしくお願いします」とあいさつされました。

凪良さんの「小説」というものへの思いを改めてお聞かせください。また本屋が「様々な物語の出会いと喜びのある場所だということを伝えたい」とも語られていますが、その点について、ご自身のエピソードや読者の方へのメッセージがあれば、お聞かせください。

凪良 留守番が多い子供時代を過ごしたわたしにとって、小説に限らず「物語」は孤独から守ってくれるシェルターのようなものでした。楽しいというより、もっと切実に必要なもの。作家になった今は、書くことで自分の中の割り切れない怒りや葛藤という感情を整理しているように感じます。これもわたしにとっては切実に必要なもので、わたしは昔も今も物語に救われてきた人間なのだと思います。

娯楽としても、生きるための必需品としても、わたしたちの人生をひっそりと支えてくれる、または豊かにしてくれる物語がある場所、それが書店です。自分の紡いだ物語がそこに並ぶことの喜びと、わたしの紡いだ物語が誰かの特別な一冊になれますよう願いを込めて、これからも執筆し続けたいと思います。

 

会場では、本との出会いを演出する仕掛けも実施

凪良ゆうさんが、本屋大賞を1回目に受賞したその日は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣⾔が発令された⽇でした。そのため授賞式は中止となり、凪良さんは会場で書店員の方々に直接お礼を伝えることができなかったことがずっと心の中に残っていたそうです。

「お世話になってきた書店のみなさんに対してもっと何ができるのだろう。書店に訪れる人を増やしたい。書店は本を買うだけではなく、様々な物語の出会いと喜びのある場所だということを伝えたい」との思いから企画されたのが、今回の“花火大会”です。

その思いを受けて、会場には本との出会いを演出する屋台など、来場者が書店の新たな魅力を再発見する仕掛けも用意されました。

汝、花火大会2

▲花火を見上げる凪良さん。店内には、子ども用にはずれなしのくじ引きなど、さまざまな仕掛けが用意された

 

汝、花火大会6

▲作品から印象的なフレーズが引用されたコーナーも展開

 

汝、花火大会4

▲普段自分では選ばないような本と出会える企画「よみくじ」

 

「花火大会」は、9月13日まで全国約300の書店で開催中

「プロジェクションマッピング花火」は、一夜限りのイベントでしたが、全国の約300店の書店では、9月13日(水)まで、「スマホで打ち上げよう。本屋であなただけの手のひら花火」が開催されています。

書店店頭のポスターにある二次元コードをスマホで読み込むと、書店の中で「花火」があがります。自分の好きな書店の棚を背景に写真を撮って、SNSに投稿すると、図書カードが当たるキャンペーンも実施されています。

》「汝、星のごとく」花火大会の詳細はこちら

》参加書店はこちら

汝、花火大会5

▲【「汝、星のごとく」花火大会】のポスターのある書店では、9月13日まで「手のひら花火」が楽しめる


凪良ゆう(なぎら・ゆう)プロフィール

京都市在住。2007年に初著書が刊行され本格的にデビュー。BLジャンルでの代表作に連続TVドラマ化や映画化された「美しい彼」シリーズなど多数。17年に『神さまのビオトープ』(講談社タイガ)を刊行し高い支持を得る。19年に『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。20年『流浪の月』で本屋大賞を受賞。同作は22年5月に実写映画が公開された。20年刊行の『滅びの前のシャングリラ』で2年連続本屋大賞ノミネート。『汝、星のごとく』は、第168回直木賞候補、第44回吉川英治文学新人賞候補、2022王様のブランチBOOK大賞、キノベス!2023第1位、第10回高校生直木賞、そして23年、2度目となる本屋大賞受賞作に選ばれた。

 

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