6月26日(月)、第10回となる2023年度「料理レシピ本大賞 in Japan」の一次選考通過タイトルが発表されました(関連記事)。
総エントリー数134作品の中から一次選考を通過したのは、料理部門・大賞の全30作品、お菓子部門・大賞の全5作品、料理部門・ジャンル賞(こどもの本賞、エッセイ賞、コミック賞)の全15作品。一部の書店店頭では、それら候補作を集めたフェアがスタートしています。
ほんのひきだしでは、一次選考を通過したタイトルの中から話題のレシピ本を、短期連載形式でご紹介します。ぜひ、書店店頭に足を運んで本書を手に取り、気になる料理にトライしてみてください。
「料理レシピ本大賞」は、出版社各社がエントリーした料理レシピ本から、書店員と料理専門家が「わかりやすく作りやすい」「日本の食文化や食育に貢献できる」「おいしい、お客様に薦めたいと感じる」などの基準で投票し、得票数で受賞作を決定するものです。受賞作品の発表は、9月12日(火)の予定です。
【Vol.6】エッセイ賞ノミネート作『やまと尼寺精進日記』
今回、ご紹介するのは、エッセイ賞にノミネートされている、NHK「やまと尼寺精進日記」制作班『やまと尼寺精進日記』(NHK出版)です。
著者:NHK「やまと尼寺精進日記」制作班
発売日:2018年07月
発行所:NHK出版
判型:四六判
定価:1,760円(本体価格1,600円)
ISBN:9784140817278
『やまと尼寺精進日記』の目次
山中の尼寺に暮らす3人の女性の日常とアイデア料理を紹介
奈良県桜井市の山中にある音羽山観音寺。このお寺には、ご住職、副住職、お手伝いの3人の女性が、犬や猫たちとともに、季節の恵みを大切にした暮らしを営んでいました。
その暮らしぶりを伝えたテレビ番組シリーズ「やまと尼寺精進日記」(NHK・Eテレ)を書籍化したのが本書です。ご住職と副住職の慈瞳さん、そして働き者のお手伝い、まっちゃんたちが、日々親しんでいる料理のレシピや食材の保存・活用法を中心に、ご住職たちが培ってこられた生活上の工夫や知恵、伝統行事や祭事などが紹介されています。
山で採れる植物や麓に暮らす知人がつくる野菜をいただき、季節の移ろいを感じながら、お勤めと行事を大切にするその日常は、まるで「尼寺版スローライフ」。彼女たちの朗らかな笑顔や飾らない人柄も相まって、番組は多くの人から支持を得たそうです。
番組の反響もあって本書も好調に売行きを伸ばし、2019年には第2弾『やまと尼寺精進日記 2 ふたたびの年』、2022年には第3弾『やまと尼寺精進日記 3 ひとり生きる豊穣』も刊行され、シリーズ累計23万部を突破するほど売れているそうです。
- やまと尼寺精進日記 2
- 著者:NHK「やまと尼寺精進日記」制作班
- 発売日:2019年10月
- 発行所:NHK出版
- 価格:1,760円(税込)
- ISBNコード:9784140817988
奈良の山寺に暮らす3人の女性の朗らかな日常と、自然の恵みを生かすアイデアに満ちた料理の数々を、四季折々のしつらいと共に紹介します。彼女たちの人間的魅力や、問い合わせの多かったお寺の行事も収載し、季節に寄り添って生きる愉しさを、カラー写真やイラストを交えながらお届けするファン必携の一冊。本書は、2018年7月から2019年7月までにNHKで放送された「やまと尼寺 精進日記」と「やまと尼寺 献立帳」の内容を中心に構成しています。本書掲載のレシピは、住職、副住職、お手伝いのまっちゃんの3人が、自分たちのため、またはお参りにくる人のために作っているものです。本書をもとに、番組を参考に、材料や分量はオリジナルで工夫してお楽しみください。
(NHK出版公式サイト『やまと尼寺精進日記 2 ふたたびの年』より)
- やまと尼寺精進日記 3
- 著者:NHK「やまと尼寺精進日記」制作班
- 発売日:2022年11月
- 発行所:NHK出版
- 価格:1,760円(税込)
- ISBNコード:9784140819227
コロナ禍をひとり暮らすご住職の日常は、驚くほど変わっていませんでした。仏につかえながら季節の行事を執り行い、自然の恵みを大切に調理して、保存する。お寺を支える里のひとたちは、時に季節の野菜を持参し、時に本堂の修理を手伝い、進んでご住職をサポートする。そこには、地域のお寺を大切にする人々の信仰心と、それに応えるご住職のホスピタリティがありました。山の上のお寺で年配の女性がひとり暮らすその姿は、老いに対する心構えや、年齢を重ねても丁寧な暮らしをすれば豊かで愉しい日々が送れることを、私たちに教えてくれます。
こうしたご住職の姿(「ひとり生きる豊穣」)を中心に、秋冬の行事やお寺の日常をはじめ、ご住職による自身の来し方やお寺暮らしの知恵に関するモノローグ、多彩な里のひとたちの声を、季節の植物や料理、美しい景色の画像とともに収載。また、これまで刊行した書籍2冊では紹介していない四季の料理レシピも収めました。(NHK出版公式サイト『やまと尼寺精進日記 3 ひとり生きる豊穣』より)
『やまと尼寺精進日記』のオススメのページを紹介!
いつも笑顔で、よく笑い、よく食べるご住職。手先が器用で新しい工夫が大好きな副住職・慈瞳さん。働き者で力持ち、そしてイラストも得意というまっちゃん。彼女たちが、その年、その時期、その日に出会う“山の恵み”による一期一会の料理などから、オススメのページを紹介します。
1つ目は本書48ページ「視覚と嗅覚で楽しむ 初夏の台所仕事」から「梅の下ごしらえ」です。
食材をほとんど買わない、というお寺の暮らしを支えているのが、“里からの贈りもの”です。季節ごとの里の恵みを運んでくれる人々のおかげで、日々の暮らしは、さらに彩り豊かになっていきます。
いただきものの「梅」は、丁寧に下ごしらえし、梅酒、梅味噌、甘露煮、梅干し、梅ジュースに仕上げるそうです。
続いて2つ目が本書62ページ「季節の訪れを知らせる 野菜の滋味」から「夏の夕餉」です。
この夕餉は、大根のぬか漬け、じゃがいもの青ジソ磯辺揚げ風、ナスと長唐辛子の煮物、青ジソ入りおやき。いずれも里からの贈りものと山の恵みによるお膳です。
特に青ジソ入りおやきは、調理中に思いついた試作品でしたが、成功したようです。
3つ目は、本書82ページ「美しい緑色をコントラストでより鮮やかに」から「ギンナンの白和え」です。
お寺では秋の定番といえば、ギンナン料理だそうです。すり鉢で当たったギンナンを豆腐と和えて、さらに追いギンナンを上から盛り付けています。豆腐がギンナンの甘みを引き立ててくれる一品です。写真のように、柿の実をくりぬいた器に入れると、さらに季節感が増します。
番組の担当ディレクターから読者に向けたメッセージ(本書「はじめに」より)
お寺に行くたびに、普段見逃している何気ない物事の美しさやおもしろさに、ハッとさせられます。道の片隅にひっそり咲く小さな花や、ギンナンの実が姿を現すその瞬間。そしてそれらを全力で楽しむご住職たちの陽気な笑い声。
本当の“ゆたかさ”ってなんだろう? とそのたびに自分に問い直します。
それはもしかして「何でもない時間」かもしれないし、「人のために心や時間を尽くすこと」かもしれません。
3人の暮らしを間近に拝見しながら、私も答えを探し中です。
会社員をしていると、お寺の生活全部は真似できませんが、心に届いたちょっとのエッセンスを取り入れていけば、明日からの生活が少し楽しくなるかもしれない……。
みなさんにとっても、そうであることを願っています。
(本書「はじめに」より)