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  • 『#真相をお話しします』が大ブレイク!結城真一郎さんが贈る「“憎き”本屋への感謝状」

    2022年07月10日
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    ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    「#拡散希望」で、平成生まれの作家としては初めて、第74回日本推理作家協会賞短編部門を受賞した結城真一郎さん。その「#拡散希望」をはじめ、マッチングアプリや精子提供、リモート飲みなど現代的なテーマとミステリを掛け合わせた5編を収録の『#真相をお話しします』が、6月30日(木)に発売されました。

    すでに完売店続出と話題沸騰の本書。発売わずか4日で大重版が決定し、海外翻訳も進行するなど大ブレイクを果たしています。

    子どものころから無類の本好きでありながら、「本屋にはさんざんひどい目に遭わされてきた」という結城さん。今回は、そんな結城さんの「一つの計画」についてエッセイを寄せていただきました。

    結城真一郎
    ゆうき・しんいちろう。1991年、神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業。2018年、『名もなき星の哀歌』で第5回新潮ミステリー大賞を受賞し、2019年に同作でデビュー。2020年に『プロジェクト・インソムニア』を刊行。2021年には「#拡散希望」(「小説新潮」掲載)で第74回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。同年、3冊目の長編作品である『救国ゲーム』を刊行し、第22回本格ミステリ大賞の候補作に選出される。

     

    “憎き”本屋への感謝状

    せっかくの機会なので白状すると、本屋にはさんざんひどい目に遭わされてきました。

    まず思い出すのは、小学校高学年のときのこと。当時の私は、トイレの便座に腰かけて漫画を読むのが日課でした。「ONE PIECE」に「NARUTO-ナルト-」、そして「DRAGON BALL」――中学受験の勉強に励みつつ、その合間を縫って飛び込む冒険の世界は、背徳感も相俟ってまさに至福そのもの。長いときは、下手したら一時間くらい籠っていましたし、そのせいで幾度となく母親に叱られもしました。さすがに長すぎる、痔になるでしょ、と。

    でも、仕方ないですよね。だって面白いんだもの。止められないんだもの。だからこうして叱られるたび、内心では開き直っていました。俺に言うなよ。文句があるなら、これを描いた作者か、もしくはこれを売りやがった本屋に言ってくれ、と。

    次に思い出すのは、中学・高校時代のこと。当時の私は、折に触れて後悔していました。徹夜で試験勉強に取り組むはずが、気付けば小説を読み明かしているからです。『模倣犯』に『ゴールデンスランバー』、そして『バトル・ロワイアル』――ああ畜生、またやってしまった。眠い目を擦りつつ、通学の時間でどこまで追い上げられるだろうかと皮算用したのは、一度や二度じゃ済みません。これだって、もちろん本屋のせいです。ぶらっと下校中に立ち寄ってしまい、やたらそそられるPOPを目にし、試験が終わったら読もうと固く誓って購入したのが運の尽き――くそ、ふざけんな。もう二度と行くもんか。それなのにどうしてでしょう。その日の帰り道、懲りずにまた足を運んでいるのだから、もはや手の施しようがありません。

    高3の受験シーズンだってそうです。参考書だけを買うつもりで本屋へ行ったのに、気付けば何冊かの小説が付いてきていて、あろうことか、その参考書すらも必要以上に手元にある始末。どうせ全部やらないくせに。並べて眺めるだけなのに。いやはや、もはや取り組むことより、集めることそれ自体が目的化しているのではと思えてきますよ、はい。

    そうしてなんとか無事、大学生になった私は、一つの「計画」を立て始めます。こうなったらもう、より多くの人を同じ目に遭わせてやろう、と。自分と同じような“犠牲者”を一人でも増やしてやろう、と。

    もはや正気の沙汰ではありませんが、そうでもしないと溜飲が下がらなかったのです。いつの日か、見てやがれ。あのとき本屋にさえ寄らなければ、こんな面白い本に出会うことはなかったのに――そう後悔させてやる。そうやって、大勢の時間を根こそぎ奪い取ってやる。誰も彼も、みんな巻き添えだ。

    そしてついに、その準備が整いました。

    トイレの長時間利用について母親に叱られてからおよそ20年。あのときの少年がこしらえた爆弾の名は『#真相をお話しします』――これを全国の本屋に仕掛け、起爆し、大勢を吹っ飛ばすという算段です。もちろん、どこまでの破壊力があるか、現時点ではわかりません。もしかすると不発に終わるかもしれませんし、あるいは日本列島を激震させるかもしれません。でも、信じています。心から願っています。一人でも多くの人の手に、その爆弾が渡ることを――。

    かなりの誇張が含まれますが、大雑把に言うと、こんな心意気で日々小説を書いています。それくらい、本屋には苦い思いをさせられてばかりでした。面白そうな本ばっかり並べやがってと憤っていました。にもかかわらず、やっぱりどこか楽しみにしている自分がいます。へへっと舌なめずりしている自分がいます。さあ、次はどんな本で俺の時間を奪うつもりだ?

    いまだに痔は治りませんし、費やした時間もお金も計り知れませんが、それでも後悔はありません。というわけで、今日もまた、本屋に向かうとしますか。

    (「日販通信」2022年7月号「書店との出合い」より転載)

    著者の最新刊

    #真相をお話しします
    著者:結城真一郎
    発売日:2022年06月
    発行所:新潮社
    価格:1,705円(税込)
    ISBNコード:9784103522348

    子供が四人しかいない島で、僕らは「YouTuber」になることにした。でも、ある事件を境に島のひとたちがよそよそしくなっていって……(「#拡散希望」)。日本の〈いま〉とミステリが禁断の融合! 緻密で大胆な構成と容赦ない「どんでん返し」の波状攻撃に瞠目せよ。日本推理作家協会賞受賞作を含む、痺れる五篇。

    〈新潮社 公式サイト『#真相をお話しします』より〉

     

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