全国の書店員さんが、もっともおすすめの本を紹介する連載「わが店のイチオシ本」。
第68回は、福井県福井市にあるセレクト型書店、AKUSHU BOOK&BASEのストアマネージャー・石田美香さんのご登場です。
今回、石田さんが紹介してくださるのは、ご当地・福井の戦国ごはん小説『かすてぼうろ』です。「寄り添う本をおすすめしたい」という同店のコンセプトとも共鳴する一冊である本書について、おすすめポイントとともに綴っていただきました。
『かすてぼうろ』
著者:武川佑
発売日:2024年7月
発行所:光文社
価格:880円(税込)
ISBN:9784334103682
福井の美味しいもの!が多数登場。歴史好きの人にもおすすめの「寄り添う」物語
AKUSHU BOOK&BASEは、福井駅から車で約15分ほどの郊外にあるショッピングセンター、エルパ2階で営業中の書店です。「きっかけになる本を、寄り添う本をおすすめしたい」という想いのもと、本を通した会話やコミュニケーションを大事に日々営業しています。2024年秋で開店4周年を迎えました。
そんなAKUSHU BOOK&BASEのおすすめ本は、この夏文庫化された『かすてぼうろ』です。
『かすてぼうろ』は福井のご当地戦国ごはん小説で、戦国から太平の世へと変貌を遂げる時代の越前・福井が舞台です。主人公は田舎育ちの、料理の才に恵まれた女の子。彼女が色々な人に出会いながら、包丁一本で駆け抜けていく姿が描かれます。
おすすめポイントは大きく3つあります。
まず、主人公の魅力。まっすぐでひたむきな性格で、がんばれがんばれと応援せずにはいられません。
2つ目は、城主や名君など戦国の武将たちの魅力。戦国飯を通して、結城秀康に徳川家康など彼らの食の好みが見え隠れし、興味深いです。戦国の世の時代背景も描かれ、歴史好きな人にもきっと楽しんでもらえると思います。
そして3つ目、最大のおすすめポイントは、なんといっても描かれる福井の美味しいもの!です。甘海老の刺身、厚揚げ、小鯛のささ漬け、永平寺の辛口のお酒、越前蕎麦……。お腹が空いてきます。里芋のころ煮、私も大好きです。
また、タイトルにもなっている「かすてぼうろ」は、福井名物ではないですがとっても美味しそうに描かれており、作って食べてみたくなります。ほかにも観光スポットとしておすすめの地名も登場するので、ぜひチェックしてみてください。
店頭では、複数のおすすめ本コーナーで販売しています。手作りPOPはもちろん、なんと著者の武川佑先生が書いてくださったフリーペーパーやPOPも掲示させていただいています。お客様からは、「ほっこりした!」「続編はないの?」というありがたい感想もいただいています。いつか続編を読めたらいいなと淡い期待を抱いているところです。
最後に印象深い一文を紹介させてください。
「炊飯は人に寄り添うものであれ」(p.99)
炊飯はもちろんですが、本作はまさに人に寄り添ってくれるような物語。心に優しさがしみわたります。AKUSHUも寄り添う本屋を目指しながら、これからも本書をおすすめし続けます。
◆作り手からのメッセージ◆
作中の料理は、著者の武川佑さんが実際に福井を訪ね、食べて、美味しい!と感激した品々です。それゆえ料理や食事の描写は、本当に“垂涎”もの。私もゲラを読んでいるうちに登場する蕎麦や厚揚げが食べたくなり、会社からの帰路で購入したこともしばしばです。歴史好きはもちろん、料理好きの方もぜひご一読ください。
(光文社 文芸編集部 堀井朋子さんより)
AKUSHU BOOK&BASE(Tel.0776-57-2600)
〒910-0836 福井県福井市大和田2-1212 ラブリーパートナーエルパ2階
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