人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

  1. HOME
  2. 本屋を楽しむ
  3. 本屋のおすすめ
  4. 頑張ることを諦めない!読んだ人が“一歩”を踏み出すきっかけに:わが店のイチオシ本(vol.56 AKUSHU BOOK&BASE)

頑張ることを諦めない!読んだ人が“一歩”を踏み出すきっかけに:わが店のイチオシ本(vol.56 AKUSHU BOOK&BASE)

全国の書店員さんが、もっともおすすめの本を紹介する連載「わが店のイチオシ本」。

第56回は、福井県福井市にあるセレクト型書店、AKUSHU BOOK&BASEのストアマネージャー・石田美香さんのご登場です。

今回、石田さんが紹介してくださるのは、同店がある福井市が舞台の青春小説で、聖地巡礼企画も実施されている『千歳くんはラムネ瓶のなか』です。

同店がオープンしてから、平台でずっとおすすめしているという石田さん。作品を通して伝えたい想いや本書の魅力を綴っていただきました。

千歳くんはラムネ瓶のなか
著者:裕夢
発売日:2019年6月
発行所:小学館
価格:693円(税込)
ISBN:9784094517965
※現在8巻まで発売中

 

読んだ人の心に何かが生まれ、一歩を踏み出せるきっかけになる本

AKUSHU BOOK&BASEは、福井市の郊外ショッピングセンター内にあるセレクト型書店です。オープンは2020年11月ですが、実は一度閉店が決まり、SC直営の書店として生まれ変わったのは2022年12月のこと。運営会社は変わりましたが、「きっかけになる本を、寄り添う本をおすすめしたい」という選書スタイルを今も大事にしています。そのAKUSHUの平台で開店の頃からずっとおすすめしている本が、小学館のガガガ文庫『千歳くんはラムネ瓶のなか』、通称『チラムネ』です。

『チラムネ』は、福井市を舞台に描かれる青春小説です。ラブコメ要素はもちろん、地方都市ならではの高校生のリアルな悩みが描かれ、個性あふれるヒロインたちの群像劇でもあります。

『チラムネ』の魅力ですが、やっぱり一番はキャラクターにあります。ヒロインだけでなく、男性キャラ「推し」も生まれるほどのキャラの魅力。物語のキーワードのひとつが「相互理解」なのですが、たとえば、今はドライでクールな関係であったり、一線を引くことが、いい世渡りの方法、処世術になりがちな時代です。でも時に一線を超えても、わかり合おうとする、頑張ることを諦めない、一歩踏み出す彼や彼女たちの姿は熱くてちょっと泥くさいです。だからこそ、その想いが、紡がれる言葉の数々が、直球で心のど真ん中に突き刺さってきます。そして好き!になっていきます。

またもう一つの魅力として、風景や情景描写のリアルさもあります。福井県民はもちろんのこと、来福した県外の方が「同じ風景があった」「実在した」と驚くほどです。描かれているその場所の雰囲気や温度感、音と息遣い、ヒロインたちの日常がそこに「ある」と感じられること。文字とイラストだけ、映像がないのに目の前にある、「知っている」とその世界観を体感、再現できること。それってすごいことだと思いませんか?

『チラムネ』は、「このライトノベルがすごい!2022」で2連覇を達成し、殿堂入りもしているラノベです。ラノベの枠をもはや超えていて、それはアニメ化もされていないのに、聖地巡礼企画「チラムネ福井コラボ」が、この夏ですでに3rdシーズンを迎えることからもわかります。物語から伝わる熱が人を動かし、企画が生まれ、さらにその熱がまた広がっています。一つの物語から新しい物語が現実世界で生まれていく、そんな奇跡のような瞬間が積み重なって今のAKUSHUもあります。それくらい読んだ人の心に何かが生まれている物語です。きっと一歩を踏み出せるきっかけになりうる物語です。

『チラムネ』の根底にある「頑張ることはかっこ悪いことじゃない」「頑張る人の背中を押したい」という著者の裕夢先生のメッセージを、もっと多くの方に届けられるように、これからもおすすめしていきます。
 

 
※「AKUSHU BOOK&BASE」が入居する「ラブリーパートナーエルパ」は、作中に出てくる“聖地”でもあります。同店では、第8巻購入の方に「あくしゅの夏休み」と題した作者・裕夢先生の書き下ろしショートストーリーを収録した購入者特典(リーフレット)を、数量限定で配布中です。

 
▶『千歳くんはラムネ瓶のなか』&「福井市」コラボ 3rdシーズンについては こちら

 

◆作り手からのメッセージ◆

人生で一度きりの恋。誰かを思い涙した夜。今このときにかける、ありったけの情熱。「チラムネ」が届けてくれるのは、そうした、誰もが知る青春の「熱」です。誰もが経験し、それがひととき限られた宝物のような時間だと知るからこそ、この作品は読み手を魅了し続けるのでしょう。

(小学館 ガガガ文庫 岩浅健太郎さんより)

 

AKUSHU BOOK&BASE(Tel.0776-57-2600)
〒910-0836 福井県福井市大和田2-1212 ラブリーパートナーエルパ2階