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新婚でラブラブだけど、片思い!? 幼馴染み、片思い、新婚夫婦が絡み合う『ハツコイノツギ』

ハツコイノツギ

幼馴染みって厄介!?

「幼馴染み」と聞くと、素を出せる特別な間柄というイメージがあります。しかし、これが男女の幼馴染みとなると途端に複雑で厄介な関係になることも少なくありません。恋人や夫婦という関係よりも長い時間を共有してきたからこそ、その存在に不安を抱くこともあるでしょう。

そんな繊細な心の動きを丁寧に描いたのが、志村貴子先生の新作『ハツコイノツギ』です。2024年12月13日に発売された第1巻は、読む人の胸をじんわりと締め付ける作品です。

 

新婚でラブラブだけど、片思い!?

主人公の千佳(ちか)は10歳年上の駿(しゅん)に一目惚れし、告白して結婚という幸せを掴みました。愛されている実感があり、新婚カップルとして仲睦まじい日々を送っています。

ハツコイノツギ

しかし、ふとした瞬間に、駿の幼馴染みである忠実(まめ)の存在が胸をざわつかせます。

駿と忠実が今でも仲が良い様子を見るたび、千佳は夫婦として両思いであるはずなのに「片思い」のような気持ちになるのです。幼馴染みという関係の強さに改めて気づかされ、信じていても不安や嫉妬が募ってしまう千佳。

駿は忠実のことが好きだったんじゃないか、むしろ今でも好きなんじゃないか、悶々とする気持ちを抱える様子に共感をする人も多いのではないでしょうか。

特に印象的なのが、千佳が駿に「言わないで」とお願いするシーンです。

ハツコイノツギ

ハツコイノツギ

自分の中で勝手に不安を抱え、「忠実のことが好きなのではないか」と悩みながらも、その答えを聞くのが怖い。矛盾しているようでいて、それもまた人間らしい感情の揺れ動きです。この場面に、心を掴まれる読者も多いことでしょう。

 

毎話のタイトルが語る千佳の心

個人的にマンガを読む際に楽しみにしているのは、毎話ごとに付けられているタイトルです。単に第1話、第2話とだけ表記されている作品も多いので、タイトルがついているとついその意味を深読みしてしまいます。

本作も毎話のタイトルが付いているのですが、それがなんとも惹かれること!

ハツコイノツギ

一つひとつのタイトルが千佳の心情の揺れを象徴しているように感じられます。読後に改めてタイトルを噛み締めてみると、物語の新たな一面が見えてくるかもしれません。声に出したくなるような印象的なタイトルが多く、物語をより深く楽しませてくれます。

 

『こいいじ』を読むとさらに楽しめる

『ハツコイノツギ』は、「Kiss」で連載されていた志村先生の作品『こいいじ』のスピンオフです。『こいいじ』では、駿の兄・聡太に対する忠実の切ない片思いが描かれていました。そのため、『こいいじ』を読んでいる人にとっては、懐かしいキャラクターたちが再び登場する喜びを味わえるでしょう。

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もちろん、『こいいじ』を読んでいなくても物語を十分に楽しめる構成になっているので、初めて志村作品に触れる読者にも安心です。

 

年の差夫婦のマリッジ・ストーリーが動き出す

物語はまだ始まったばかりですが、千佳が駿の幼馴染みに不安を抱くように、駿もまた千佳に対して何かしらの思いを抱えている様子が描かれています。

ハツコイノツギ
新婚でありながらも、複雑な感情が絡み合う年の差夫婦のやきもきするマリッジ・ストーリーは、これからどのように進展していくのでしょうか。

幼馴染み、片思い、新婚夫婦という要素が絡み合った『ハツコイノツギ』は、読者に深い共感と心の揺れを与える作品です。これからの展開がますます楽しみです!

(レビュアー:Micha)

ハツコイノツギ 1
著者:志村貴子
発売日:2024年12月
発行所:講談社
価格:792円(税込)
ISBNコード:9784065378434

※本記事は、講談社コミックプラスに2024年1月17日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。