赤ずきんが探偵役を務める童話ミステリシリーズの第3弾が、ついに登場! アラビアンナイトの世界で起こる難事件の数々の、驚愕の真相とは?
昔ばなしをトリッキーな本格ミステリにする、という趣向で話題を呼んだ『むかしむかしあるところに、死体がありました。』シリーズを「日本篇」とすれば、童話の世界で起こる事件を探偵役の赤ずきんが解決する『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』以下のシリーズは「西洋篇」ということになるだろう。
「小説推理」での連載は、両者が交互に書かれるスタイルで、この『赤ずきん、アラビアンナイトで死体と出会う。』は西洋篇の第3弾である。
今回は枠物語になっていて、シャハリアールの章ではザザーン朝ペルシャの王、シャハリアール・ザザーンが登場する。妻に裏切られた彼は、女性を憎むあまり、国中の若い娘を宮殿に連行しては、片っ端から殺し始める。
400人目の生贄となった宰相の娘シェヘラザードは、寝室を訪れた王に赤いずきんをかぶった少女が、奇妙な事件を解決する話を、次々と聞かせる。
だが、夜明けとともに話は中断され、続きが気になって仕方ない王は、シェヘラザードを殺すことが出来なくなる。
つまり、有名な「千夜一夜物語アラビアンナイト」でシェヘラザードが語った物語が、赤ずきんの事件簿になっている、というのがこの本なのである。シャハリアールの章と赤ずきんの章では、文体が書き分けられているのも芸が細かい。
「アラジンと魔法のアリバイ」では、ランプの魔人の能力を使った驚愕のアリバイトリック。「アリババと首吊り盗賊」では、相言葉を知っているはずのアリババの兄が洞窟の中で餓死していた事件の真相。「シンドバッドと三つ子の事件」では、三重の鍵がかかったライオンの檻の中で血まみれの男が死んでいた事件のトリック。
どのエピソードも、童話ならではのファンタジックな設定の中に、事件の謎を解くカギが隠されているのだ。
一つ一つのエピソードが面白く、読者も次第に王様と同じ気分になっていく、という構成が素晴らしい。さらに最終話「アラビアの夜にミステリは尽きず」では、2つの章が意外な形で融合するのだが、その仕掛けも巧みである。アイデア満載の贅沢な連作と言えるだろう。
なお、『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』は福田雄一監督、橋本環奈主演で映画化され、Netflixで配信された他、たなかのかによるコミカライズも進行中で、メディアミックスの成功例としても注目される。
- 赤ずきん、アラビアンナイトで死体と出会う。
- 著者:青柳碧人
- 発売日:2024年10月
- 発行所:双葉社
- 価格:1,650円(税込)
- ISBNコード:9784575247749
双葉社文芸総合サイト「COLORFUL」にて『赤ずきん、アラビアンナイトで死体と出会う。』の試し読みが公開されています。
『赤ずきん、アラビアンナイトで死体と出会う。』の試し読みはこちら
『小説推理』(双葉社)2024年12月号「BOOK REVIEW 双葉社 注目の新刊」より転載
あわせて読みたい
・世界の童話の主人公がいろいろな事件に登場する驚き連続の連作ミステリ!|青柳碧人『赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。』
・無類の怪談好き青柳碧人が贈る、実話怪談短篇集の第2弾!|青柳碧人『踏切と少女 怪談青柳屋敷・別館』
・かぐや姫の正体、わらしべ長者の成れの果て……青柳碧人の日本昔ばなし×本格ミステリの人気作が文庫化!
・青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体があってもめでたしめでたし。』シリーズ第3弾は「こぶとり爺さん」「金太郎」が本格ミステリに!
・【青柳碧人さんの書店との出合い】新人作家から専業作家へ!“アポなし”書店回り
・怪談好き”のミステリー作家・青柳碧人が、学生時代から蒐集してきた実話怪談集|『怪談青柳屋敷』