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WEBTOONで大ヒットした『ビジネス婚』の勢いが止まらない!ドラマ化&単行本発売!

『ビジネス婚』単行本がいよいよ全国書店で発売開始!

大ヒット連載中の縦読みのフルカラーコミック『ビジネス婚―好きになったら離婚します―』が、ついに5月30日(木)に、全国書店で順次発売されました。それに先駆けて5月23日(木)からは、元櫻坂46で女優の菅井友香さんと、超特急のメンバーで俳優の草川拓弥さんとのダブル主演で、MBSドラマフィル枠(MBSでは毎週木曜 深夜1:29~)にてテレビドラマの放送がスタートしています。

▲ドラマの詳細情報はこちら

『ビジネス婚―好きになったら離婚します―』
原作:JAMTOON STUDIO 作画:キラト瑠香
発売日:2024年5月30日
発行:ファンギルド、発売:日販アイ・ピー・エス
定価:1,045円(税込)

【あらすじ】
「俺と結婚しませんか?ビジネスパートナーとして」訳あって恋愛抜きで結婚したいハイスぺ社長・堂ノ瀬司(28)と出会った佐山雅(28)。突然の提案ながら、雅にも事情があって利害が一致し、即同棲することに。この契約の条件はひとつ、お互い恋愛感情を持たないこと! なのに結婚に向けて始まった日々は、理想の生活×ときめきの連続で…。好きになってもバレてはいけない・ビジネス婚の行く末は…!?

今回は全国発売を記念して、お買い求めの方に特典ペーパーが特定の書店で配布されています! 特典ペーパーの配布は先着順で、なくなり次第店舗ごとに終了となりますので、ぜひお早めに!

 

『ビジネス婚』特典ペーパーと配布店舗はこちら

※特典はなくなり次第配布終了となります。配布状況については各書店へご確認ください。

 

フルカラーの縦読みデジタルコミック「WEBTOON」形式の恋愛漫画が大ヒット

『ビジネス婚』のドラマ化+単行本化を記念し、コミックの作画をされたキラト瑠香さんと、企画&編集を担当したJAMTOON STUDIOの並木香菜子さんに、作品の魅力や制作の苦労話などをインタビューにて伺いました。

作画担当のキラト瑠香さん(右)と編集の並木香菜子さん(左)

キラト瑠香(きらと・るか)
兵庫県出身。2013年B's-LOG COMICにてデビュー。読切作品やアンソロジーなどを描きつつ、2年半のアシスタントを経て、主に女性向け作品の執筆、連載を開始。代表作は『シーツの波間でみる夢みたいな』、その続編の『夢から覚めてもそばにいて』。

JAMTOON STUDIO
デジタルコミック出版社である(株)ファンギルドが設立し、2022年12月に創刊したフルカラー・タテ読み漫画レーベル「JAMTOON」を手掛けるWEBTOONスタジオ。「ファンタジー」「恋愛」「バトル」「ドラマ」「サスペンス」など、さまざまなコンテンツを制作し、日本のみならず海外での配信も実施している。

 

――デジタルコミックの大ヒットに続き、TVドラマ化と紙単行本化が実現しましたね。おめでとうございます。

キラト ありがとうございます。先日、撮影現場も見学させていただいたのですが、雅役の菅井友香さん、司役の草川拓弥さんはじめ、役者さんや制作スタッフさんの皆様がすごく作品に愛情を注いでくださっているのを感じたので、どんな風にドラマが仕上がっているのか、とても楽しみです。単行本もフルカラーは初めてですが、綺麗な仕上がりで感激しました……!

並木 もともと企画段階からドラマ化を目標にしていたのですが、本当に実現することができて、担当としてもとても嬉しいです。

――恋愛感情が芽生えたら離婚するという、『ビジネス婚』のアイデアはどこから生まれたんですか?

並木 『ビジネス婚』は編集部が原作(企画と構成)を担当しているのですが、私が“仕事好き同士の結婚”をテーマにした作品を担当したかった気持ちがありまして。仕事好きな同士なら、結婚もビジネス的に捉えられたら上手くいくのでは?という問いが企画の種ですね。

キラト 並木さんとは6~7年前から別の作品でもお仕事させていただいていたのですが(詳しくはこちら)、最初にバリキャリ同士の恋愛、というテーマを伺ったとき、すごく並木さんらしいなと(笑)。でもいつかは私も、結婚を軸とした恋愛作品を描いてみたいとは思っていました。

並木 キラト先生にはご提案時に作品イメージを持ってもらえるよう、企画資料もあらすじはもちろん、キャラの見た目や読んでる雑誌イメージに至るまで、最初から作りこみました。

作品テーマである“結婚をビジネス的に捉える”には、恋愛感情があると破綻してしまうので、【好きになったら離婚】というルールも最初から設定していた部分ですね。

 

徹底した描き込みで、華やかに、艶めかしく、ドラマチックな世界観を表現

――お二人にとって挑戦したかったテーマだけに、キャラクターの設定や描き方も綿密に準備されたと伺っています。

キラト そもそもWEBTOONが初挑戦だったので、まずは韓国作品のWEBTOONを見て、コマ割りや演出はもちろん、男性の体型や顔のトレンドなど、めちゃくちゃ研究しました。司はビジュアル面でも、骨格から並木さんと相談しながら作り込んでいきました。最初からかなり労力をかけたと思います。

並木 キラト先生の綺麗な絵柄、美しい男性が描ける魅力はフルカラー作品でも映えると確信していました。当初先生からいただいた司のイメージもその期待にたがわぬものだったのですが、綺麗さの中にかわいさも感じるイメージでした。この作品ではWEBTOONの本場の韓国でも人気が出そうな、より男性らしい体格や、社長らしい雰囲気(髪型や服装)も出していただくようにリクエストしました。

▲調整後の司のキャラのラフ(上)/実際のコミックの司(単行本・P.59、P.107)

 

並木 司は見た目以前の設定部分でも、時間をかけてキャラクターを作った1人です。仕事ができる社長であり、恋愛経験も豊富。そんな人が、どういうきっかけで恋愛感情が芽生えるのか? どうやって気持ちを伝えるのがリアルなのか……と、性格やリアクションで悩むところも多かったです。

キラト 司は私としても新鮮なキャラクターで、本質を掴むまで少し時間が必要でした。恋愛経験が豊富で女性の扱いが完璧にわかっている“ハイスぺ”社長なんですが、単なる御曹司ではなく、起業して努力してきた人間らしさも表現したい部分だったので……。その辺りは司視点の2話(WEBTOON版:単行本ではP.25~)や、実家挨拶辺りのお話で伝わっていれば嬉しいですね。

並木 一方で雅は結婚や恋愛に悩む等身大の、読者さんから共感されるかを大事にしたいキャラクターでした。見た目は綺麗さと大人っぽさを前提に、頑張り屋さんなキャライメージを先生に作りこんでいただきました。

キラト 最初は、韓国の女優さんやアイドルのお顔や全身をかなり参考にしていました。私が元々描いていたバランスでは、司の隣に並ぶとラブリー感やかわいさが出てしまっていました。なので、大人っぽく、けれどセクシーになりすぎず、を意識しました。連載が始まってからもそのあたりにはかなり労力をかけました。

▲調整後の雅キャラのラフ(本編に近いイメージ)

 

――なるほど。作画面で、WEBTOONだからこそ苦労した部分や見てほしいところはありますか?

並木 まずはフルカラー作品なので、色の表現を楽しんでいただきたいですね。ページ漫画だとモノトーンで表現される恋するときめきや人物の華やかな登場シーンなど、カラー効果もあってとってもキラキラしています。

キャラのビジュアルも、雅は髪に赤味が入っていて暖色系なので、服の色も紫やピンクなど彩度を高めにするなど、細かく色設定しています。

キラト 作画面といえば、背景は3D素材を使うことが主流なのですが、オリジナルで表現したいところは描いています。例えば雅の親友・あゆ子とオンライン通話するシーンでは、あゆ子には子どもがいるので、ぬいぐるみや子どもが描いた絵を作って飾ったり。

最近はクリスマスのシーンを描いたのですが、ツリーは素材を少しカスタムしたり、飾りもかわいくデザインして書き起こしたり、労力はかかりますが見て楽しい気分になってもらいたいので、やっています。ほかにも、2人は家にいるシーンも多いので、部屋着やパジャマを毎回変えたり、読者さんが飽きないような工夫をしています。

――とくに手が込んだ表現など、覚えていらっしゃいますか?

キラト 一番は雅が試着するウエディングドレスですね……。カラーは全部白の総レースなんですけど、線画ではいろんな模様のレースをミックスして、複雑に重ねて作っているんです。もちろんもう少し簡略化しようと思えばできてしまうんですが、ビジネス婚の世界は華やかに、艶めかしく、ドラマチックに演出したいので、ドレスシーンは特にそういう世界観にしようという発想で描きました。


▲華やかな服装はもちろん、何気ないシーンにも多くの色数や演出効果が使用されている。雅のウエディングドレス姿(上)/マンションの部屋(画像は単行本版より)

 

雅と司の繊細な「感情の揺れ」が描かれているのが魅力

――ストーリー的にもかなり作り込んでいらっしゃるのでしょうね?

並木 女性向け作品なのでまずは雅の恋愛感情からしっかり描きましたが、司の心情の変化も丁寧に描いています。前に触れた通り、司は恋愛経験豊富で、恋愛に自信があるからこそ“好きになったら離婚”という条件を出せたのですが、雅のことを本当に好きになる。

ビジネス婚なら完璧にできると思っていた人が本当の初恋に目覚めるのですが、そんな男性キャラの心の動きと変化をしっかり描けているところもぜひ見ていただきたいです。

――確かに、相手のことを好きになったら関係は終わり、という設定が生かされていて、雅と司は自分の気持ちを素直に出していいのかどうか、微妙な心の動きがみどころになっています。

並木 そのあたりの繊細な描写はキラト先生の力が非常に大きいです。もちろんシナリオにはセリフやモノローグでキャラの感情描写はありますが、恋をしているときの微妙な「雰囲気」や「表情」や「仕草」は、なかなか言葉だけでは描ききれない。

先生はシナリオを読み込んで細かな心情まで解釈していただき、ネーム(おおまかなコマの構成や人物の動き)で画としても発展反映させている。ネームと線画は50話以上拝見していますが、毎回すばらしいなと思っています。

キラト 雅にも司にも「感情の揺れ」が起こるシーンが結構あるので、しっかりめに戸惑わせたりそれに対するリアクションもゆっくり見せたり、感情の間は入れておきたいなと思っています。

モノローグシーンのコマもあったらいいな、と思う心情は追加したりもします。例えばキスシーンもしっかり見せるところと、スクロールしても見えない部分があるコマ割りも入れたりすることで、直接的なドキドキと想像するドキドキのどちらも楽しんでいただけたらと思っています。


▲キスシーンにも、これまでの見開きコミックにない「間」がある(画像はWEBTOON版より)

 

――そういう意味では、ドラマ化にあたって、2人の感情の揺れがどう描かれているのかも見どころの一つですね。期待するシーンなどはありますか?

並木 雅らしさが出たシーンの一つに「寝室問題に関して」のプレゼンがありますね。ビジネス婚では恋愛感情が芽生えたら離婚なのに、セックスはありなのか?という問題が初期に生じます。司は恋愛感情と生理的欲求は別=セックスできる、と肯定する。でも雅はセックスは好きな人とするものという考えがある。その意識の差を埋めるために雅は資料を作って、どういうルールでビジネス婚を運営していくか「プレゼン」をしたんです。

▲雅が「寝室問題」のプレゼンを開始(上)/真面目な顔で司の提案(セックス)を承諾する旨を表明

並木 素直には口にしづらい問題でも、「仕事」のフォーマットなら話ができるのでは、というビジネス婚らしいシーンです。そして描きたかったポイントは、セックスするかどうかを雅が真剣に伝えることによって、司がその真面目さに爆笑する。2人がパートナーとして噛み合いはじめた、きっかけにもなるシーンですね。

キラト まだ電子版のみの公開で単行本には収録されていないのですが、雅からセックスの「合図」を出すシーンもこの作品の一つの盛り上がりの場面なので、ぜひ見ていただきたいです。

あと、雅が司のバースデーをお祝いするシーンもいいですよね。これまで司はずっと「家」や「父親」から窮屈な価値観を押し付けられてきたのですが、それを雅が優しく溶かしてあげるシーンになっています。

 

今の女性は、恋愛としてのパートナーというよりは、人生としてのパートナーが欲しい

――これだけヒットしたのには、いろいろな要素があるのでしょうが、やはり大きなテーマとして「結婚」を扱ったこともあるのでしょうか。

並木 女性向け恋愛ジャンルにおいて「結婚」は避けて通れないテーマではありますね。いろんな角度で結婚をテーマにした作品がある中、『ビジネス婚』がヒットしたということは、やはり何か共感や憧れるポイントがあったから、だと嬉しいですね。

作品上ではわかりやすくするために“好きになったら離婚”という条件に絞って描いていますが、企画の初期にはもっと細かいルール設定を考えたりしていました。実際にビジネスでは企業が募集要項を詳細に出したり、応募側も職務経歴書を書くと思うので、司と雅が結婚前に細かい条件をすり合わせる展開も構想していました。

キラト 実際に今は、結婚をしなくても生きてはいけるし、生活を楽しむこともできるので、恋愛としてのパートナーが欲しいというよりは、人生としてのパートナーが欲しい、みたいな人は多いんじゃないですかね。だからこそ感情よりも尊敬がベースの婚姻関係を結ぶ司と雅に何かピンとくるものがあるのかな、って。

――この作品は最終的に2人に恋愛感情が芽生えますが、実際はそうでなくてもいい、と。

並木 『ビジネス婚』で本当に伝えたい部分はそこですね。2人には恋愛感情が芽生えますが、恋愛感情がなくても、尊敬があれば意外とその方がパートナーとしてずっと長続きするかもしれませんね。『ビジネス婚』はお見合い結婚、恋愛結婚に次ぐ「第3の選択肢」という想いで掲示してみましたが、第4、第5の選択肢も作品を通して作っていきたいですね。

キラト 今のところは読者さんの中心は女性なんですけれど、男性が『ビジネス婚』を読んでどう思っていただけるのかも興味があります。そして読者さんが、私だったらこういう『ビジネス婚』スタイルがいいな、みたいなイメージがあればぜひ教えてほしいです!

▲フルカラー単行本も好評発売中