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ヨシタケシンスケの妄想炸裂!「こんな本はあるかしら?」にあの手この手で応えるキュートな一冊『あるかしら書店』

2013年に発売された『りんごかもしれない』以降、『りゆうがあります』『もうぬげない』など大ヒット絵本を次々に生み出し、絵本のジャンルに新たな風を吹き込んだヨシタケシンスケさん。ある“お題”からさまざまに発想を広げていく作風が魅力ですが、「日常や感情のひとコマをユーモラスに切り取る」という視点はスケッチ集やイラストエッセイでも楽しむことができ、こちらも根強い人気を誇っています。

そんなヨシタケさんにとって、やはり「本」は昔から特別なものだったそう。今回発売された『あるかしら書店』は、「こんな本があったらいいな」「こんな本屋さんがあったら面白いな」というヨシタケさんの“本にまつわる妄想”を詰め込んだ一冊です。

ヨシタケさんらしいこのキュートな一冊について、ご本人にお話をうかがいました。

あるかしら書店
著者:ヨシタケシンスケ
発売日:2017年06月
発行所:ポプラ社
価格:1,320円(税込)
ISBNコード:9784591154441

 

「こんな本があったらいいな」「こんな本屋さんがあったら面白いな」を1冊に

――『あるかしら書店』は、どのようなきっかけで作られた本ですか?

『あるかしら書店』は、「asta」というポプラ社のPR誌での連載を一冊にまとめたものです。「何か本にまつわる連載を」という依頼をいただいて、「こんな本があったらいいな」「こんな本屋さんがあったら面白いな」といった“本にまつわる妄想”を、見開きで絵にしていくという形でスタートしました。毎月1回のペースで、2年ほど連載しました。

――『あるかしら書店』は、「本にまつわる本」の専門店。味のあるおじさんがいて、「こんな本あるかしら?」というお客さんの要望に「ありますよ」と本を出してくれる、本好きにはたまらないお店です。

この本に入っているお話は基本的に一つひとつ独立していて、「本にまつわる何か」ということ以上の関連はありません。そこで、本としての軸になるような世界観というか、物語が必要なのではないかと考えました。

連載中は「頭の中書店」というタイトルだったのですが、それも「もう少し不思議な響きのあるものにできないかな」と常々思っていて。「こういう本があるかしら」と聞くと「ありますよ」となんでも出してくれる、不思議な本屋さんがどこかにあって、いろんな人がいろんな本を探しに来る。お客さんの「あるかしら?」に、店主が「これなんか、どうかしら」と答える、その掛け合いも楽しめるのではないかと思いました。

この本には、実現可能なものから絶対に不可能なものまでいろんな嘘が入っているのですが、それを無理なく包み込める設定と、店主のキャラクターになった気がします。

▲店主のおじさんにモデルはいないそうですが、「こういう造形のおじさんが好きで、描いていて気持ちがいいので、こんな感じになりました」。

 

本ってそもそも何だろう?

―― 目次は「ちょっとめずらしい本」「本にまつわる道具」など、テーマごとに7つの棚に分けられていますね。ページ順に読めば、その世界観が一層深く味わえますし、気になった本を手に取るように、興味を持ったところからページをめくる楽しみもあります。

あまりにも内容がバラバラなので、「何かしらのテーマでくくるほうが、1冊の本として整理されるのではないか」と、編集者と相談しました。「実際の書店だったら、それぞれ別の棚に置いてあるだろうな」と後から枠組みを決めたので、厳密にいうと、ちょっと苦しいところもあるかもしれません(笑)。

▲章立てごとに棚に収められた“目次”。それぞれどんなお話なのか、想像するだけでもワクワクします。

 

―― ストーリー性のあるお話やひねりのあるシチュエーション、イラストで見せるページなど、一冊にさまざまな楽しみが詰まっていますが、それぞれのお話はどのように考えられたのですか?

“本にまつわる妄想”という縛りしかなかったので、「本ってなんだろう」「こういう本があったらどうだろう」と毎回イチから考えました。本そのものの話だったり、本を扱う人の話だったり、本の歴史だったり。時間や扱う人の立場を変えながら、いろんな角度から「本」を見られたらいいなと思っていたのですが、考えるのは結構大変でした。

―― どのお話も、短いながらアプローチがさまざまで、本を読むことや本そのものについてなど、大本に立ち返って考える機会になりました。

僕自身も「なんで紙なんだっけ」「なんで四角いんだっけ」と、毎回立ち戻ってお話を考えていました。

この本の中に「本が四角い理由」という話がありますが、これも「本って四角いよね」「なんで四角いんだろう」という疑問から、「昔はもっといろんな形があったけれど、ある時点で四角に統一されたのかも」という仮説を立てました。「それは誰がやったのだろう」「どういう理由だったのだろう」と遡って考えたのが、あの話です。

そういうふうに、読んでくれる人が「本ってそもそも何だろう」と根本に思いを馳せてくれて、本について何かを考えるきっかけになれば、この本を作った意味がありますね。