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【平和を願い、戦争を考える】おすすめ本5選

第二次世界大戦末期の1945年8月6日午前8時15分。人類史上初めて、広島に原子爆弾が投下されました。そのほかの地域でも度重なる空襲などにより、多くの人々が命を落とし、輝かしい未来が閉ざされました。

そして今なお、ロシアによる隣国ウクライナへの軍事侵攻など、世界では戦争が続いています。

今回は、子どもたちはもちろん、実際には経験していない世代の大人も、改めて戦争について学ぶことのできる児童書を5冊、ピックアップしました。

お子さんと一緒に平和について考えるきっかけづくりや、夏休みの読書感想文の一冊として、ぜひ手に取ってみてください。

 

愛する人を助けたい――。世代を超えて、読み継がれるべき物語|『ぼくはうそをついた』

ぼくはうそをついた
著者:西村すぐり 中島花野
発売日:2023年06月
発行所:ポプラ社
価格:1,650円(税込)
ISBNコード:9784591178218

ぼくはうそをついた』は、広島で生まれ育った著者が、すべての人が幸せに生きられる世界へ、という祈りをこめた物語です。

被爆60年の2005年、広島に住む小学校5年生のリョウタは、同居する祖父から、原爆で亡くなった祖父の兄・ミノルの話を聞くことになります。その祖父の話をきっかけに、リョウタは今も残る原爆の傷跡と、あらためて向き合い始めます。

リョウタが憧れる、6年生の女子バレー部キャプテンのレイは、共働きの両親にかわり育ててくれた曾祖母のことが大好きでした。原爆で息子を亡くしている曾祖母は、夏になると記憶がまだらになり、我が子を捜し始めます。そして、息子を思う曾祖母のためにレイは、男の子のようにどんどん髪を短くします。そんな、レイの曾祖母を救いたくて、リョウタはある「うそ」をつきます。

カバーには、何かを語りかけるような目線を送る主人公・リョウタが描かれています。カバーをめくった表紙に美しい線画で描かれている、リョウタとレイの表情にも注目です。

過去もそして今も、傷ついている⼈々がいること、戦争は決して繰り返してはならない過ちなのだと教えてくれる物語です。

 

世界で読み継がれてきたロングセラー作品を、新訳で復刊!|『世界で最後の花』

世界で最後の花
著者:ジェームズ・サーバー 村上春樹
発売日:2023年06月
発行所:ポプラ社
価格:1,760円(税込)
ISBNコード:9784591178102

なぜ人間は戦争を繰り返すのか?

わたしたちは戦争のない未来をつくることができるのか?

雑誌「ニューヨーカー」で活躍した著者・ジェームズ・サーバーによって、第二次世界大戦開戦時に描かれた名著『世界で最後の花』が、村上春樹さんの新訳で復刊されました。

第十二次世界大戦が起きた世界。文明は破壊され、町も都市も、森も林も地上から消え去ってしまい、残された人間たちは、ただそのへんに座りこむだけの存在になってしまいました。ある日、ひとりの若い娘がたまたま世界に残った最後の花を見つけます。その一輪の花を、娘はひとりの若い男と一緒に育てはじめます。

絵も文章もシンプルですが、そこに込められた大切なものがストレートに伝わってきます。繰り返し戦争が起こってしまう「今」を生きるわたしたちに託された平和への願い。違う世界で起きていたとしても、決して他人事で済ますべきではないと考えさせられます。

世界で読み継がれる、「戦争」と「平和」について改めて考えることのできる物語です。

 

40年以上沖縄と向き合った著者の集大成|『なきむしせいとく 沖縄戦にまきこまれた少年の物語』

なきむしせいとく
著者:たじまゆきひこ
発売日:2022年04月
発行所:童心社
価格:1,760円(税込)
ISBNコード:9784494012480

1945年の「沖縄戦」。日本軍とアメリカ軍が沖縄本島を中心に激しい戦いを繰り広げ、多くの人々が命を失いました。

なきむしせいとく 沖縄戦にまきこまれた少年の物語』の主人公・せいとくは、いつも泣いているので、みんなから「なちぶー」と呼ばれています。出征していたせいとくの父に続き、中学生の兄まで少年兵として招集されてしまいます。残されたせいとくと母と妹の3人は、少しでも安全な場所へ行くため、南へ避難します。ですが、アメリカ軍の砲撃でせいとくは母を失い、さらには妹とも生き別れてしまいます。

家族を失い、空襲や地上戦に巻き込まれながらも強く生き抜くせいとくは、いつしか涙をながすことすらなくなってしまいます。

本書は、第54回「講談社絵本賞」を受賞しました。40年以上沖縄で取材を続け、「もし自分が沖縄戦に巻き込まれていたら」とせいとくの立場になって絵本を制作してきた著者の田島征彦さんは、受賞者挨拶で「こんなにつらい絵本制作ははじめてだった」と語っています。

幼いせいとくの目線で、戦争の残酷さを真正面から伝えている本書には、田島さんの平和への強い願いが込められています。

 

運命に立ち向かい、「クロ」と人が紡いだ絆の物語|『ラーゲリ犬クロの奇跡』

ラーゲリ犬クロの奇跡
著者:祓川学 田地川じゅん
発売日:2023年07月
発行所:ハート出版
価格:1,650円(税込)
ISBNコード:9784802401555

ラーゲリ犬クロの奇跡』は、第二次世界大戦後の引き揚げ時代が舞台となっています。日本の敗戦後、日本人や日本兵たちは、ソ連軍から戦争犯罪人として扱われ、捕虜となりました。シベリアからの引き揚げは1947年から1956年にかけて行われ、47万人もの抑留者が日本へ帰国し、愛する家族と再会を果たしましたが、死に別れ再会できなかった家族も多かったといいます。

ラーゲリ(収容所)で十分な食料も与えられず、栄養不足のまま飢えに苦しみ、極寒の中で強制労働をさせられていた兵士たちの前に現れたのは、シベリア生まれの子犬・クロでした。クロは、昨年実写化された映画「ラーゲリより愛を込めて」の劇中にも登場しています。本書には、映画では語られなかった、過酷な抑留生活を送る中で抑留者たちに勇気と生きる希望を与え続けたクロの感動の実話が描かれています。

広島、長崎、沖縄とともに、世代が代わっても引き継いでいかなければならない戦争の記憶です。

 

衝撃の記録。ウクライナの絵本作家が鉛筆で描く実体験|『戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々』

戦争日記
著者:オリガ・グレベンニク 奈倉有里 渡辺麻土香 チョン・ソウン
発売日:2022年09月
発行所:河出書房新社
価格:1,595円(税込)
ISBNコード:9784309208633

戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々』は、ウクライナの絵本作家が侵攻直後からの避難生活を鉛筆1本で描いたドキュメンタリーです。

ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始した2022年2月24日。著者のオリガ・グレベンニクさんは、その日からマンションの地下室での避難生活を余儀なくされ、ハリコフ(ハルキウ)から西部の街リヴォフ(リヴィウ)を経て、ブルガリアへ脱出するまでの過程を鉛筆でスケッチし続けました。

万が一、死んでしまっても身元がわかるようにと、子どもたちの腕には名前と生年月日、そしてオリガさんの電話番号を書きました。「どうしてそんなの書くの?」と理由を聞く子どもに、オリガさんは「遊びをしているの」「『戦争』っていう遊びよ」と答え、子どもたちが恐怖にかられないよう振舞っていました。

幼い子どもたちを守るために母や夫との別れを経験し、ブルガリアで難民となったオリガさんが描く戦争の現実と、「戦争反対」への強い思い。心に迫る絵と切実な文章で綴られた、今こそ読まれるべき一冊です。