シリーズ累計発行部数70万部を突破した、「図書館に行きたくなる!」と話題の図書館お仕事漫画『税金で買った本』。
5月8日(月)には、最新7巻とともに、『税金で買った本 公式ファンブック 図書館ともっと仲良くなれる本』も発売された本作の原作者・ずいのさんに、本作の成り立ちから今後の展開まで、メールインタビューにてお聞きしました!
税金で買った本(1)(第7巻まで発売中)
原作:ずいの、漫画:系山冏
発行所:講談社
発売日:2021年12月
価格:726円(税込)
ISBN:9784065261682
小学生ぶりに図書館を訪れたヤンキー石平くん。10年前に借りた本を失くしていたことをきっかけに、あれよあれよとアルバイトすることに!
借りた本を破ってしまった時は? 難しい漢字の読み方を調べたい時は? ルールに厳しくも図書を愛してやまない仲間と贈る、読むと図書館に行きたくなる図書館お仕事漫画、誕生です!(講談社コミックプラス『税金で買った本(1)』より)
【プロフィール】
原作・ずいの
1990年、静岡県出身。2019年『蜜吸系男子』で「月間新人漫画賞奨励賞」受賞。図書館勤務を経て、2021年「ヤンマガWeb」(講談社)『税金で買った本』で漫画原作者デビュー。現在も「ヤングマガジン」にて同作品を連載中。
原作者の実体験が活かされた、一味違った図書館漫画
——『税金で買った本』には、本の選び方や働いている人の事情、イベントの運営の仕方など、図書館の“裏側”が描かれています。なぜ図書館の漫画をつくろうと思われたのですか。
最初はまったく違うジャンルの漫画を考えていたのですが上手くいかず、私が過去に図書館での勤務経験があったため、図書館が舞台のお話を考えました。既存の図書館モノではあまり取り扱われない、弁償や寄贈などをなるべく取り上げるように心がけています。
——エピソードごとに挟まれるコラム「図書館だより」も、勤務経験がある方ならではの内容で、図書館が身近に感じられます。作中のエピソードは、ずいのさんの実際の体験がもとになっているのでしょうか。また、お気に入りのエピソードがあれば教えてください。
体験がもとになっているものも、取材をもとにしたものも、そうでないものもあります。
41~43話の移動図書館のお話(「はたらくくるま」①~➂、第6巻に収録)は、初めて本格的な取材をもとに描いたお話でしたし、この漫画では珍しく前向きなテーマを描けたので、個人的に気に入っています。
▲『税金で買った本(6)』p.52~53より
——ずいのさんの勤務時代も含めて、図書館に関する思い出やうれしかったことなどがあればお聞かせください。
図書館勤務中にうれしかったことはあまり思い出せませんが、しいて言えば、紛失していた本が弁償手続き前に見つかるとうれしいですね。
——主人公の石平くんが図書館と関わるようになった第1話のエピソードを思い起こします。主人公がヤンキーだったり、筋肉キャラの図書館員がいたり、物静かな図書館のイメージとは違った登場人物が出てくるのも本作のおもしろさですが、キャラクターはどのように設定されたのですか? また、ご自身に近いキャラクターは誰ですか?
キャラクターは、読者の皆さんになるべく好きになってもらえるように考えています。私と内面が一番近いのは白井です。
▲左から2番目が、愛する図書館の本と人を守るため、筋トレで鍛えあげた図書館員・白井
▲『税金で買った本 公式ファンブック 図書館ともっと仲良くなれる本』には、単行本第7巻までに登場した主要キャラクターの紹介を掲載
図書館で勉強の楽しさに開眼!
——本作では、図書館がきっかけとなって知ることや調べていく過程を楽しむ様子がいきいきと描かれています。また、知識を得ることで登場人物が前に進んだり、変化を恐れずに受け入れたりしていく姿がとても素敵です。ずいのさんのなかで、知ることの喜びに触れたエピソードがあれば教えてください。
大学に入学してから、大学図書館で興味ある分野を自力で深く調べられるようになり、初めて、ウワ~ッ勉強スゴイたのし~!と思いました。それまで試験のために興味のないことを覚えるのが、ただただ苦痛だったので。
大学の図書館の閲覧席は、ものすごく落ち着く構造になっていたので好きでした。
——コミックスの巻末に掲載されている「中学校の図書室と石平くん」も毎回楽しみにしています。学校図書館の裏側や事情も、今後作品で取り上げられる機会はありますか?
お楽しみいただけてうれしいです! 単行本第9巻収録予定の、67~69話で、学校図書館についても少し触れます。
——白井が語る「図書館は弱い人のためのものです」というセリフも印象的でしたが、作品を通してどのようなことを伝えたいとお考えですか?
あまり啓蒙的になるのも良くないと考えているのですが、「公共図書館がなんのために、どのような考えで運営されているか」というのは、できるだけ正確に作中でお伝えできればと思います。
——ずいのさんの思う良い図書館とはどんな図書館ですか。図書館そのものへの思いもあればお聞かせください。
全国の公共図書館や学校図書館すべてが、司書資格をもった専任の職員がいて、難しい質問や調査にもすぐ対応できる、利用者が気軽に頼れる図書館になったらいいなと思います。
実際の図書館について知ることができるファンブックも読みどころ満載!
——『税金で買った本』が「全国書店員が選んだおすすめコミック2023」で第8位となりました。作中に、なぜ図書館に漫画を置くことが難しいのかがわかるエピソードがありましたが、図書館と書店との役割や機能の違いについてはどのようにお考えでしょうか。
同じ本を扱う仕事を題材にした漫画として、書店員の皆様に応援いただけていることを大変光栄に思います。書店は「本を売ること」を目的としていますが、図書館は「本を収集、保存し、利用してもらうこと」を目的としているので、そこから本の選び方や並べ方などの違いがあるかと思います。
——5月8日に『税金で買った本 公式ファンブック 図書館ともっと仲良くなれる本』も発売されました。ずいのさんのおすすめの企画、見どころなどをご紹介ください。
全部最高なのですが、実際の図書館について知ることができる記事はほかの漫画のファンブックにはない要素だと思うので、おすすめです。
——最後に読者の方へのメッセージをお願いします。
今後も、『税金で買った本』を楽しんでお読みいただけますと、うれしいです!
——ありがとうございました!
▲公式ファンブックは『税金で買った本』に学ぶ図書館Q&Aなど図書館についての記事も充実
税金で買った本 公式ファンブック 図書館ともっと仲良くなれる本
原作:ずいの、漫画:系山冏、編:講談社
発行所:講談社
発売日:2023年5月
価格:1,430円(税込)
ISBN:9784065310885
本書のおもな内容
・かなりの脇役までも紹介するキャラクターガイド
・単行本第7巻までの全話を網羅したストーリーガイド
・白井さんが作成した「クソ利用者図鑑」
・原作:ずいの先生×漫画:系山冏先生の制作秘話対談
・現役図書館司書さんに聞く「図書館司書という仕事」
・一度は訪ねてみたい日本全国図書館ガイド
・『税金で買った本』設定資料集を初公開!
・ファンインタビューは作家の山田詠美さんと芸人のニッチェ・江上敬子さん
・ずいの先生による「オリジナル図書館だより」と二人の先生による書き下ろし漫画付き
など(講談社コミックプラス『税金で買った本 公式ファンブック 図書館ともっと仲良くなれる本』より)
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