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【9月1日は防災の日 「もしも」の前に読んでおきたい防災本特集vol.3】もしものとき、映像は命を守れるのか『災害と映像 防災ドラマは社会を救えるのか』

災害と映像アイキャッチ

9月1日は防災の日 本から始める、もしもの備え

9月1日は「防災の日」です。地震や台風など、いつ起こるかわからない災害に備えて、日頃からできることを考えるきっかけとなる日です。
防災というと、非常食や防災グッズを準備することを思い浮かべがちですが、まずは「知ること」も大切な備えのひとつです。
ほんのひきだしでは、家族みんなで防災について考えるきっかけになる本を集めました。

今回は『災害と映像 防災ドラマは社会を救えるのか』(有斐閣)をご紹介します。
首都直下型大地震のリスクはかねてより指摘されているにもかかわらず、私たちの多くはその備えに万全を期しているとは言いがたいのではないでしょうか。そこに映像コンテンツの力はどのような効果を持ちうるのか、本書は大規模データとその検証を通し、その可能性を探ります。
ぜひ書店店頭で手に取ってみてください。

 

災害と映像書影

『災害と映像 防災ドラマは社会を救えるのか
著者:安本真也
発売日:2026年4月
発行所:有斐閣
定価:4,950円(税込)
ISBN:9784641175143

 

【章立て】

序章   日本人は自然災害に備えられるか?
第1章 日本映画から分析する災害に対する共通イメージの変化
第2章 防災啓発のコミュニケーション
第3章 首都直下地震の被害想定をめぐるコミュニケーション
第4章 被害想定をもとにした『パラレル東京』の効果実験
第5章 誰が『パラレル東京』を観たのか──分析手続きとデータの概要
第6章 知識は深まるのか──『パラレル東京』が知識面に及ぼした効果
第7章 防災啓発に効果的な映像とは何か──『パラレル東京』が認知面に及ぼした効果
第8章    備える人と備えない人の厚い壁──『パラレル東京』が行動面に及ぼした効果
終章   感情に働きかける防災啓発番組の可能性

 

「防災意識」が行動につながらない理由

日頃から防災の必要性を理解していても、具体的な備えを始めるのは簡単ではありません。本書は、災害映画の内容分析と、NHKの防災啓発ドラマ「パラレル東京」の視聴者調査を通じて、映像が人びとの災害イメージやリスク認知、行動に及ぼす影響を検証します。
映像は恐怖感情を喚起し、危険を自分事として捉えるきっかけになりますが、認知の変化がそのまま備えにつながるわけではありません。専門書ですが、防災啓発の難しさを知ることで、まずはあなた自身の備えを見直すことにつなげてほしい。この本はそんな1冊になっています。

 

「パラレル東京」から考える、映像の力と限界

本書が主に取り上げたのは、首都直下地震を描いたNHKの防災啓発ドラマ「パラレル東京」でした。このドラマは、視聴者にどのような影響を与えたのでしょう?
本書は、放送直前、直後、3か月後の3時点で同じ対象者を追跡する調査によって、その効果を丁寧に明らかにします。現実感のある映像・演出は恐怖を呼び起こし、地震へのリスク認知を高めました。いっぽう新たな備えを一律に促したわけではなく、もともと備えていた人の意識を再確認させる効果が中心でした。防災メディアの力と限界を真摯に受け止め、どう活用できるかを考えさせる学術書です。

 

災害映画は、社会の災害観をどう変えてきたか

私たちは災害を、映像を通じて想像し、理解しています。本書の前半では、日本で製作された災害映画を分析し、社会に共有されてきた災害イメージの変化を読み解きます。近年の作品では、災害による破壊そのものよりも、喪失を抱えながら復旧・復興へ向かう人々の姿に力点を置いて描かれるようになりました。災害を一時的な見せ場として消費するのではなく、災害と共存せざるを得ない現実を受け止めようとする社会の変化が読み取れます。映画を入口に、防災と日本社会の関係について考えてみませんか。

 

【編集者のコメント】

私たちは「地震大国」で暮らしています。もちろん自ら望んでなど全くないわけですが、足下の揺れ自体を否定することもそれはそれで難しい。対照的に、本書が示す「にもかかわらず備えに取り組まない私たち」という現実のほうは揺らぎのないもののようです。安本氏らの研究が示すとおり、映像によって備えを促す効果もないわけではない。けれども、その必要性を自分ごととして捉える道筋の一つにありうるのは、啓発の難しさ自体を知ることによって、逆説的に読者のほうが備えに取り組む、という別の経験なのかもしれません。ぜひ一緒に考えていただければと思います。

 

著者プロフィール

安本真也

やすもと・しんや。1987年兵庫県西宮市生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士後期課程単位取得満期退学。博士(社会情報学)。2026年4月より東京大学大学院情報学環講師。専門は災害情報論、社会心理学、メディアコミュニケーション、社会調査。著書に『災害と映像――防災ドラマは社会を救えるのか』(有斐閣)。論文に「2024年8月8日に発表された南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)に対する住民の評価と防災行動の分析」『災害情報』23 (2)など。

 

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