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作家・図書館・書店、そして読者がつながる“文化の輪” 直木賞作家・今村翔吾発案、47都道府県代表の一冊が競う「本の甲子園」の概要発表

honkoushien

作家・図書館・書店・読者がつながる“文化の輪”

2026年に開催される、図書館員が選ぶ新たな文学賞「本の甲子園」の概要が発表されました。

「本の甲子園」は一般社団法人ホンミライの代表理事で直木賞作家の今村翔吾さんが発案した文学賞で、全国47都道府県の公共図書館員が、地元在住作家の作品(日本の小説)を選出し、全国高等学校野球選手権大会のようなトーナメント方式で「おすすめしたい1冊」を選ぶというものです。

本賞が掲げる最大のテーマは、「地域の図書館・書店・作家、そして読者がつながることで、地域から出版文化を活性化すること」です。従来の文学賞とは一線を画す取組に注目が集まっています。

 

地域と作家を結ぶ “地元在住・自薦”という新しい応募のかたち

「本の甲子園」とほかの文学賞との違いの1つが、“地元在住の作家による自薦”という応募条件です。その背景には、作家が地域の一員となり、地域の書店や図書館と連携することで、地域からの出版文化を活性化するという期待が込められています。

また、山形県新庄市や佐賀県佐賀市など、多くの地方・地域とゆかりの深い今村さんには、地域とのつながりを望みながらも、「どう関係をつくればいいのかわからない」という若手作家からの悩みも多く寄せられるそうです。

本企画における“自薦”は、そういった作家が世間や地域との接点を自ら掴みにいくためのきっかけにしてほしいという今村さんの願いも込められています。

 

“空白県”歓迎! 地方から文化を育てる、新しい出会いの土壌に

作家が県にいない場合や、エントリーない“空白県”の生まれる可能性について、今村さんはあえて「空白県が生まれてほしい」と語るのには、明確な理由があります。

「例えば新人1年目の作家が『あの県に行けば代表になれるかも!?』となって移住したりして、そこでまた地方から文化を発信する担い手になってほしい」(今村さん)

空白県の存在自体が、若い作家が地方へ移住し、地域文化を盛り上げるきっかけになりうる。これもまた、「本の甲子園」の目指すところが出版文化を振興するプロジェクトであることが表れています。

 

縁や運を味方に 熱狂を生む“トーナメント制”の真意

本企画でもっとも特徴的なのは、その選考方法です。

トーナメント戦では、1つの対戦において、5人の図書館司書が「出会いを感じた本」を基準に投票し、さらに投票した図書館司書からランダムに3人の選考委員を選び、勝敗はその選考委員の投票結果で決定します(準決勝と決勝戦の選考委員は10人中5人を選ぶ)。そのため、3人がA、2人Bの作品を選んでいても、その後選ばれる3票がA、B、Bだった場合はBが勝ち上がるという仕組みです。

当初は「本で競い合うことはどうだろう」という議論や、通常の文学賞と異なり作品が1対1で対決するトーナメント制について懸念があったそうです。

しかし、図書館と書店に共通する「本との出会いは縁である」という考え方を重視した、縁や運の要素を強く含んだ選考方法を採用し、さらに、勝ち抜き方式のトーナメント制を導入することで、作家が“地元代表”として応援される仕組みを作り、地域と作家のつながりをより強いものにしていきたいという意図がこめられています。

既に著名作家からのノミネートもあり、思わぬ対決が生まれることでさらなる注目が期待されています。

 

世代を超えた“伝説の一戦”が生まれる可能性も!? 読者も熱狂するマッチメイク

トーナメント制ならではの醍醐味は、実績も年代も違う作家同士の、予想外の対戦が実現することではないでしょうか。

作家歴30年の大御所と、1年目の新人作家が相まみえる……。そうした異世代対決が読者にも大きな興奮をもたらすはずです。今村さんも「おもしろいマッチメイクが生まれたら、読者もきっとワクワクするはず」と期待を寄せています。

今村さんが「本の甲子園」に込めた願いは、図書館・在住作家・書店が協力し、本が売れ、作家や書店にもプラスとなり、図書館にも新しいつながりが生まれ、地域の文化が発展していく未来です。

図書館の新たな文学賞「本の甲子園」、今後の動向に注目です。

 

本の甲子園選考概要

【対象作品】
47都道府県それぞれの地元に「在住」する作家による自薦作品 。日本の小説(NDC分類913.6)に属する本で、 発売から1年以内(2024年10月~2025年9月)に刊行された日本の小説。
※最新刊が2024年10月~2025年9月に刊行されている場合は、シリーズ第一作をエントリーすることが可能
※文庫の場合は文庫オリジナル作品のみ対象

【作家エントリー】
エントリー期間:2026年2月28日(土)まで 作家申し込みはこちら

【図書館員エントリー】
エントリー期間:2026年2月28日(土)まで 図書館員申し込みはこちら
※対象は公共図書館で図書館業務に従事している方、学校図書館で図書館業務に従事している方で、勤務先の運営形態や雇用形態、司書資格の有無は不問

【選考方法】
全国の公共図書館員、学校図書館員が、「地元(ご当地)作家として勧めたい」「面白かった」と感じた本を選び投票。勝敗決定 「本との出会いは縁である」という考えに基づき、 各対戦はランダムに選ばれた図書館員5名の投票によって決定。

【選考時期】
2026年2月28日(土) 本賞に参加する作家・図書館員の募集締切
2026年3月2日(月) 選考委員(図書館員)向けZOOM説明会
2026年6月1日(月) 各都道府県の代表作品発表
2026年7月~9月 トーナメント戦(1~3回戦・準々決勝)
2026年10月20日(火)~22日(木) 準決勝戦・決勝戦(図書館総合展にて)

【決定時期】
47都道府県の頂点に輝く一冊は、2026年10月に決定予定

発案者:今村翔吾
主催:一般社団法人ホンミライ
共催:株式会社図書館流通センター 、日本出版販売株式会社
後援:一般財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)、公益社団法人読書推進運動協議会

・本の甲子園
公式サイト:https://www.honno-koshien.com/
X:https://x.com/honno_koshien

 

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