2025年に一番売れた本は『大ピンチずかん3』！　文庫断トツの『国宝』、2025年を象徴する作品に｜2025年年間ベストセラー

12月1日（月）、2025年の年間ベストセラー（日販調べ）が発表されました（集計期間：2024年11月20日～2025年11月18日）。

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「癒し」「共感」がキーワード！定評ある作品もランキング上位に

2025年のベストセラーは、身体や心の癒しにつながる作品や、共感をもたらす作品、すでに定評のある作品がランキング上位を占める結果となりました。

ここには、近年高まっているウェルビーイング志向や“失敗しない選択”をしたいという消費者の志向が強く表れていると考えられ、とりわけ、口コミやSNS評価における共感性や確実性の高まりは、近年のベストセラーランキングを大きく左右する要因になっています。

なお、今年大きな旋風を巻き起こした『国宝』は、文庫のため総合ランキングは対象外となっていますが、口コミで話題となって圧倒的な売行きを記録した代表例であり、“今年を象徴する作品”として、堂々の文庫ジャンル第1位を飾りました。

 

 

総合ランキング

シリーズ3作目で上半期・年間総合第1位を獲得

2025年年間ベストセラーは、上半期に続き『大ピンチずかん3』が総合第1位に輝きました。

「大ピンチずかん」シリーズは、日常に起こる“あるある”なピンチをユーモアたっぷりに紹介し、そのピンチを通じて子どもが自分の失敗や感情を受け入れるきっかけを作る作品として、子どもから大人まで多くの共感を集め、シリーズ累計270万部の大ヒットとなっています。シリーズを重ねるごとに売上を伸ばし、ついにシリーズ3作目で上半期・年間総合第1位を獲得しました。

第2位には第22回本屋大賞受賞作である『カフネ』がランクインしました。

現代社会の問題や厳しい現実に傷ついた人々が、「食」を通じて心を癒し、生きる力を得ていく姿を描いた同作は、読了後に大切な人を抱きしめたくなるような温かさや癒しをもたらすと話題になり、上半期の総合第3位から、1つ順位を上げました。

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第3位には、『改訂版 本当の自由を手に入れる お金の大学』がランクイン。昨今の物価高を背景に、自分の働き方やお金との向き合い方を見直す人が増えたことが、同書が継続して支持される理由だと考えられます。

また、第20位の『覚悟の磨き方』は、幕末期の思想家・教育者である吉田松陰が残した言葉を現代人にあわせて超訳した内容で、働き方や価値観が多様化する現在、「自分はどう生きていくのか」を問う人々に愛読され、2013年の発売ながら、いまもなおロングセラーとしてランクインしています。

自己を高め、経済的、社会的に良好な状態を実現するヒントとなるビジネス書が総合ランキングでも目立つ結果となりました。

第6位には雨穴さんの最新作『変な地図』が、2025年10月末の発売にも関わらずランクインしました。

図や絵を多く用いている本書は、それらをヒントにまるで自分が謎解きをしているかのような体験ができる作品。「変な」シリーズのヒットもあり、雨穴さんへの注目度の高さがうかがえます。

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部門別ランキング

【単行本フィクション】『カフネ』が第1位！雨穴 最新作『変な地図』も急上昇！

総合第2位にもランクインした、第22回本屋大賞受賞作である『カフネ』が、上半期に引き続き単行本フィクション部門第1位を獲得しました。

作中では、弟を失った主人公・薫子が、弟の元恋人である料理人のせつなに出会い、「食べること」を通じて生きる希望を取り戻していく様子が描かれています。現代社会で生きづらさを感じている人に寄り添う物語として共感と支持を集め、上半期に続く連覇となりました。

第2位には、雨穴さんの「変な」シリーズ最新作『変な地図』がランクイン。“雨穴作品”に欠かせないキャラクター・栗原が主人公となり、図や絵で「古地図」の謎を読み解く新感覚のミステリーとして話題になりました。

第3位にランクインした『謎の香りはパン屋から』は、第23回「このミステリーがすごい！」大賞の受賞作です。

パン屋×ミステリーという新しい組み合わせで、ミステリーの要素がありながら、ほっと心があたたまるストーリーと、読んでいると焼きたてのパンの香りが漂ってくるかのような描写で人気を集めました。

第4位には背筋さんの『近畿地方のある場所について』がランクインしました。

2023年8月の単行本発売時から注目を集め、今年の7月には単行本とは異なる内容の文庫版が発売されたほか、8月には映画化されるなどで話題を呼び、上半期の第6位から順位を上げました。

 

【単行本実用】健康志向が主役に　『すべてを蒸したい せいろレシピ』が実用書ランキング首位

単行本実用部門第1位は、第12回料理レシピ本大賞の料理部門大賞受賞作『すべてを蒸したい せいろレシピ』が獲得しました。

油を使わずに調理できる「せいろ」は、調理器具としての使いやすさやヘルシーさが支持されて注目を集めています。また、『心も体ももっと、ととのう 薬膳の食卓365日』や、『一生役立つ きちんとわかる栄養学』などがランクインしていることから、身体的・精神的に良好な状態を求める志向の高まりがランキングにも反映されていることがうかがえます。

さらに、NHKドラマがきっかけとなり、薬膳に関心が寄せられたことも理由のひとつだと考えられます。

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第2位の『世界一簡単！70歳からのスマホの使いこなし術』は、上半期の単行本実用部門で第1位となった後も人気が持続し、スマホ操作に不安をもつシニア層にとって頼りになる一冊として定着しています。2025年7月には、第2弾『70歳からのスマホの使いこなし術 2』が刊行されました。

第3位の『とっさに言葉が出てこない人のための脳に効く早口ことば』は、脳トレ博士として知られる川島隆太教授と、早口ことば芸人の大谷健太さんがタッグを組んだ脳トレ本です。シニア層の悩みに応える実用書が上位にランクインする結果となりました。

第5位には、世界的に大ヒットしている謎解き本『ミステリー・パズル　MURDLE』がランクインしました。

次々と起こる殺人事件を名探偵が解決していくという物語性のある謎解き本で、頭を使う推理パズルの要素に読み物としてのおもしろさが融合したことで、パズルファンだけでなくミステリーファンの支持も集めていると考えられます。

2025年1月には、第2弾『とっさに言葉が出てこない人のための脳に効く早口ことば　スパ
ルタ』が刊行されました。

 

【文庫】映画の大ヒットが追い風に！『国宝』の人気が止まらない

文庫ジャンルでは、『国宝』が圧倒的な売行きで堂々の第1位を飾りました。

歌舞伎役者という生き方にすべてを捧げた人間の人生を生々しくも美しく描いた同書は、2021年9月に文庫版が発売され、今年6月の映画公開によって映像の美しさや世界観が加わり、口コミで広がった映画の大ヒットを追い風に、電子版も含めたシリーズ累計発行部数は200万部を突破しました。

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上半期ベストセラー文庫部門で第1位だった『青い壺』が、年間ベストセラーでも第2位となりました。2011年に復刊され、原田ひ香さんによる推薦帯やさまざまなメディアで取り上げられたことが反響を呼び、口コミが広がったことで現在もヒットが継続しています。

『国宝』、『青い壺』ともに、メディアでの話題性と消費者の確実性志向の強まりがリバイバルヒットを生み出した結果ともみてとれます。

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第7位には、実際に起きた事件を題材にした小説『BUTTER』がランクインしました。

2024年に英語版が刊行され、「The British Book Awards 2025」のDebut Fiction部門を含め、イギリスで3つの文学賞を受賞するなど、フェミニズム小説として高く評価されヒット。この夏には世界累計100万部突破を記念した日英リバーシブルカバーが登場し話題となりました。

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【新書ノンフィクション】二宮和也 独自の見解が由来『独断と偏見』が年間で第1位に

新書ノンフィクション部門は、二宮和也さんによる初の新書『独断と偏見』が第1位となりました。

同書は、二宮和也さんが10の四字熟語をテーマにした100の問いに答える形式で構成された一冊です。タイトルの『独断と偏見』は、一般論ではなく独自の視点に基づいた個人的な見解が多かったことに由来しており、自身の感情をストレートに表現した内容が大きな反響を呼びました。

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第2位には『人生の壁』がランクイン。著者の養老孟司さんが自身の半生を振り返り、悩み多き現代人に向けて「どうやって壁を乗り越えるか」を語る内容で、上半期に引き続き、幅広い世代の読者から支持を得ました。

第5位の俵万智さんの『生きる言葉』は、自身の体験と歌人という視点から、現代のさまざまな場面において、言葉の力を使って他者とどのようにコミュニケーションをとるべきかを示唆する内容です。

SNS時代の現代において、言葉のあり方・使い方に悩む若い世代や、俵万智さん自身の子育てエピソードに共感した子育て世代からの支持が、ヒットにつながったと考えられます。

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