第78回野間文芸賞ほか、各賞の受賞作品・受賞者が決定!
11月5日、第78回「野間文芸賞」、第47回「野間文芸新人賞」、第63回「野間児童文芸賞」ならびに第7回「野間出版文化賞」の受賞作品と受賞者が発表されました。
これらの賞は、講談社の初代社長・野間清治氏の遺志により設立された財団法人野間文化財団が主催する文学賞です。日本の文芸の質的向上と、その発展に寄与することを願い設けられました。
本記事では、各受賞者のプロフィールや野間児童文芸賞受賞作のあらすじ、野間出版文化賞の授賞理由をご紹介します。
第78回野間文芸賞:村田沙耶香『世界99(上・下)』

著者:村田沙耶香
発売日:2025年3月
発行所:集英社
定価:2,420円(税込)
ISBN:9784087718799
性格のない人間・如月空子。
彼女の特技は、〈呼応〉と〈トレース〉を駆使し、コミュニティごとにふさわしい人格を作りあげること。「安全」と「楽ちん」だけを指標にキャラクターを使い分け、日々を生き延びてきた。
空子の生きる世界には、ピョコルンがいる。
ふわふわの白い毛、つぶらな黒い目、甘い鳴き声、どこをとってもかわいい生き物。
当初はペットに過ぎない存在だったが、やがて技術が進み、ピョコルンがとある能力を備えたことで、世の中は様相を変え始める。(集英社公式サイト『世界99(上)』より)
【プロフィール】
村田沙耶香
むらた・さやか。1979年8月14日、千葉県印西市生まれ。46歳。2003年「授乳」で群像新人文学賞小説・優秀作を受賞しデビュー。2009年『ギンイロノウタ』(新潮社)で第31回野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』(朝日新聞出版)で第26回三島由紀夫賞、2016年「コンビニ人間」(「文學界」)で第155 回芥川龍之介賞を受賞。その他の著書に『マウス』(講談社)、『星が吸う水』(講談社)、『ハコブネ』(集英社)、『タダイマトビラ』(新潮社)、『殺人出産』(講談社)、『消滅世界』(河出書房新社)、『地球星人』(新潮社)、『生命式』(河出書房新社)、『変半身』(筑摩書房)、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』(KADOKAWA)、『信仰』(文藝春秋)などがある。
〉『世界99』の特設サイトは、こちら
第47回野間文芸新人賞:鳥山まこと「時の家」(講談社『群像』2025年8月号掲載)

著者:鳥山まこと
発売日:2025年10月
発行所:講談社
定価:2,090円(税込)
ISBN:9784065412275
青年は描く。その家の床を、柱を、天井を、タイルを、壁を、そこに刻まれた記憶を。
目を凝らせば無数の細部が浮かび、手をかざせば塗り重ねられた厚みが胸を突く。
幾層にも重なる存在の名残りを愛おしむように編み上げた、新鋭による飛躍作。(講談社公式サイト『時の家』より)
【プロフィール】
鳥山まこと
とりやま・まこと。1992年(平成4年)、兵庫県宝塚市生まれ。33歳。2023年、「あるもの」で第29回三田文學新人賞を受賞。著書に『時の家』(講談社)。
第47回野間文芸新人賞:ピンク地底人3号「カンザキさん」(集英社『すばる』2025年8月号掲載)
『カンザキさん』
著者:ピンク地底人3号
発売日:2026年1月7日
発行所:集英社
定価:1,650円(税込)
ISBN:9784087700350
大学卒業後、引きこもりを経て、僕が働くことになったのは、離職者続出、いつでも求人中の超絶ブラックの配送会社。
そこで先輩として出会ったのが、誰にでも優しい人格者のミドリカワさんと、「殺すぞぼけ」と人を罵り、蹴りを入れる悪魔のようなカンザキさんだった。
ナンバーワンの配送員になって幹部を目指す! と豪語した同期は、カンザキさんと組んで入社2週間で辞めた。要領の悪い同期はカンザキさんに殴られ続け、走るトラックの助手席から飛び降り、入院してしまう。そしてカンザキさんと組まされた僕は、カッター片手の彼に、荷台の上へ引きずり込まれ「服を脱げ」と命じられて――。(集英社公式サイト『カンザキさん』より)
【プロフィール】
ピンク地底人3号
ぴんくちていじんさんごう。1982年(昭和57年)12月19日、京都府京都市生まれ。42歳。同志社大学文学部文化学科美学及芸術学専攻(現文学部美学芸術学科)卒業。劇作家、演出家。2012年、『明日を落としても』で佐藤佐吉演劇祭2012カンフェティ賞、2018年、『わたしのヒーロー』でせんだい短編戯曲賞大賞、2019年、『鎖骨に天使が眠っている』で劇作家協会新人戯曲賞を受賞。「カンザキさん」が小説デビュー作。
第63回野間児童文芸賞:斉藤倫『しじんのゆうびんやさん』
しじんのゆうびんやさん
著者:斉藤倫、画:牡丹靖佳
発売日:2024年11月
発行所:偕成社
定価:1,760円(税込)
ISBN:9784036432608
ちいさな街のちいさな郵便局ではたらくふたり、ガイトーとトリノス。
ある日、ガイトーは、一度も手紙をもらったことがないという灯台守のじいさんに、「手紙」を書いてみることにした。「みょうなてがみもあったもんだ」
配達したトリノスがつぶやくと、灯台守はこういった。
「あんた、しらないのか。これは、詩、って、もんだよ」詩って、なんだろう?
その輪郭をやわらかに描き出す、詩人が書く「しじん」の物語。(偕成社公式サイト『しじんのゆうびんやさん』より)
【プロフィール】
斉藤倫
さいとう・りん。1969(昭和44)年生まれ。詩人。2014年『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)で長篇デビュー。同作で第48回日本児童文学者協会新人賞、第64回小学館児童出版文化賞受賞。おもな作品に『波うちぎわのシアン』(偕成社)、『えのないえほん』『ポエトリー・ドッグス』(以上、講談社)、『新月の子どもたち』(ブロンズ新社)、『はるとあき』(うきまるとの共作/小学館)、『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』「私立探検家学園」シリーズ(以上、福音館書店)などがある。
第7回野間出版文化賞:柚木麻子
■授賞理由
2017年に単行本、2020年に文庫版が刊行された『BUTTER』は、2024年にイギリスとアメリカで英語版が出版されたことをきっかけとして話題を呼び、全世界で累計120万部を突破し、38か国での翻訳出版が決定している。特にイギリスでは大きく評価され、2024年には「Books Are My Bag Readers Awards 2024」Breakthrough Author および「Waterstones Book of the Year 2024」を、2025年には「The British Book Awards 2025」Debut Fiction部門を受賞して3冠を達成したほか、英ダガー賞の翻訳小説部門の最終候補となった。本作は世界的なベストセラーとなったことで日本の小説の可能性を世界に示し、ワールドワイドに日本の出版文化の発展に貢献したといえる。
【プロフィール】
柚木麻子
ゆずき・あさこ。1981年8月2日、東京都生まれ。44歳。2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞し、2010年に同作を含む『終点のあの子』でデビュー。2015年『ナイルパーチの女子会』で第28回山本周五郎賞を受賞。2016年同作で第3回高校生直木賞を受賞。他の著作に「アッコちゃん」シリーズ、『伊藤くん A to E』『らんたん』『ついでにジェントルメン』『あいにくあんたのためじゃない』など。『BUTTER』は38か国で翻訳が決定、Polly Barton が翻訳を手掛けたイギリス版・アメリカ版などが出版され、全世界で累計120万部を突破。イギリス国内では「Books Are My Bag Readers Awards 2024」Breakthrough Author、「Waterstones Book of the Year 2024」、「The British Book Awards 2025」Debut Fiction部門を受賞し、3冠を達成。「英国推理作家協会賞(ダガー賞)」の翻訳小説部門の最終候補にもなり、世界中から注目を集めている。
第7回野間出版文化賞:吉田修一
■授賞理由
映画「国宝」が社会現象となり、原作小説は上・下巻で累計200万部超えのベストセラーとなった。膨大な取材に基づいた緻密な描写で歌舞伎界の人間ドラマを表現し、日本の伝統文化がより多くの人に受容されるきっかけを作った。書店やメディアは『国宝』キャンペーンをさまざまな形で展開しており、出版界を活気づけている。
【プロフィール】
吉田修一
よしだ・しゅういち。1968年9月14日、長崎県生まれ。57歳。1997年に「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞し、デビュー。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞、『パーク・ライフ』で第127回芥川賞、2007年『悪人』で第61回毎日出版文化賞、第34回大佛次郎賞、2010年『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞、2019年『国宝』で第69回芸術選奨文部科学大臣賞、第14回中央公論文芸賞、2023年『ミス・サンシャイン』で第29回島清恋愛文学賞を受賞。作品は英語、フランス語、中国語、韓国語などに翻訳され、『東京湾景』『女たちは二度遊ぶ』『7月24日通り』『悪人』『横道世之介』『さよなら渓谷』『怒り』『犯罪小説集』『路』『太陽は動かない』など映像化された作品も多い。2016年より芥川賞選考委員。
第7回野間出版文化賞:李相日
■授賞理由
2025年6月公開の映画「国宝」は観客動員数1,060万人、興行収入160億円を突破し、原作小説『国宝』をベストセラーへと導いた。社会現象になった『国宝』は映像で小説の世界観を巧みに表現し、文芸と映画の新たな可能性を提示し、出版文化の発展に貢献したといえる。
【プロフィール】
李相日
り・さんいる。1974年1月6日生まれ、51歳。大学卒業後、日本映画学校(現:日本映画大学)にて映画を学ぶ。卒業制作作品「青~chong~」が「ぴあフィルムフェスティバル」のアワード2000でグランプリを含む4賞を独占受賞。新藤兼人賞金賞受賞の「BORDER LINE」(2003)を始め、さまざまな作品で賞を受賞。2006年公開「フラガール」が第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞。2010年公開「悪人」は、第34回日本アカデミー賞13部門15賞受賞、最優秀賞主要5部門を受賞。「許されざる者」(2013)、「怒り」(2016)、「流浪の月」(2022)でも多くの賞を受賞。歌舞伎を題材にした最新作「国宝」(2025)は、カンヌ国際映画祭「監督週間」部門で世界初上映。吉田修一作品では「悪人」「怒り」に続いて話題作となり、第38回東京国際映画祭黒澤明賞を受賞。
第7回野間出版文化賞【特別賞】:スーパー戦隊シリーズ
■授賞理由
1975年登場の「秘密戦隊ゴレンジャー」からスタートした「スーパー戦隊シリーズ」は、未来を担う子どもたちにとってのエンターテインメントであるだけでなく、若手俳優の登竜門としての存在感も大きく、近年では戦隊ヒーロー出身の俳優たちがあらゆる場面で活躍を広げている。本シリーズは人気コンテンツとして幼児誌の出版文化を支えてきたばかりでなく、数多くの出版物の映像化において欠くことのできないスターを数多く輩出してきた。今年50周年をむかえた本シリーズは、多面的に映像と出版をつなぐ重要な作品シリーズとして出版文化に大きく貢献した。
【プロフィール】
1975年4月5日に放送が開始された「秘密戦隊ゴレンジャー」から始まった TVシリーズ。スーパー戦隊シリーズ 50 周年記念作品「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」が現在放送中の特撮テレビドラマである。主に5人の戦士がさまざまな色のスーツを身にまとい、アイテムや巨大ロボットを駆使して悪の軍団と戦う作品で、50年間、未就学児童から小学生まで男女を問わず人気を博し続け、今や二世代、三世代まで語り継がれる人気シリーズである。「侍戦隊シンケンジャー」からは松坂桃李、「烈車戦隊トッキュウジャー」からは志尊淳と横浜流星、その他の作品からも山田裕貴、千葉雄大、竜星涼といった多くの人気俳優を輩出しており、人気俳優の登竜門としても注目されている。テレビの放送だけでなく、映画、ビデオ作品、配信作品も多数製作され、東京ドームシティの「シアターGロッソ」で通年のヒーローショーが行われており、さらにアメリカでは「パワーレンジャー」シリーズとして大人気となる。『テレビマガジン』などの講談社の幼児誌でも、人気コンテンツとして誌上で通年掲載されており、付録のテーマとして扱われることも多い。
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