一般社団法人ホンミライの代表理事で直木賞作家の今村翔吾さんは、10月24日(金)に実施された第27回図書館総合展の講演会「本の未来を 作家と読者が共に創る、これからの読書文化」の席上で、図書館の新たな文学賞「本の甲子園」を2026年夏~秋頃に開催すると発表しました。
「本の甲子園」は、全国47都道府県の公共図書館員が、地元在住作家の作品(日本の小説)を選出し、全国高等学校野球選手権大会のようなトーナメント方式で「おすすめしたい1冊」を選ぶというものです。

対象となるのは、NDC分類「913.6」(日本の小説)に属する本で、2024年10月から2025年9月までに刊行された作品です。まずは地元在住作家が自らの作品をエントリー。その中から各都道府県で代表となる一冊を、各地域の図書館司書の投票によって選抜。その後は甲子園大会のようにトーナメント方式で47都道府県の頂点に輝く一冊を2026年10月頃に決定するという流れです。
トーナメント戦では、図書館司書が「出会いを感じた本」を基準に投票。投票した図書館司書からランダムに3人の選考委員を選び、勝敗はその選考委員の投票結果で決定します(準決勝と決勝戦の選考委員は5人)。

大賞決定後は、その地域の公共図書館と書店と作家が、「地元の出版文化を活性化する」ことを目的に、図書館や書店でのトークイベント、講演会、サイン会のほか、図書館内での展示、SNSでの発信などを行う予定です。

今村さんは、書店議連のメンバーとして、2023年10月から行われた「書店・図書館関係者における対話の場」で、書店・図書館の連携促進の方策として「図書館本大賞」(今回の本の甲子園の素案)を提案した経緯を説明。その対話の場での一定の成果は認めつつも、「本の文化の凋落のスピードが早い。もう、図書館界と出版業界の不毛な争いを止めて、未来を生きる若い人たちに向けて本の文化を残すために、何か面白いことを図書館と出版業界でやらないといけない」と危機感を露わにしつつ、「本の甲子園」の企画の背景を話しました。
![]()
講演会後の今村さんと図書館員によるトークセッションでは、苫小牧市立中央図書館館長の富田歩美さんが「実は本屋大賞がすごくうらやましかった。(本の甲子園は)すごいやりたい」、長岡市立互尊文庫(ミライエ長岡)TRC統括責任者の丸濵晃一さんが「地域の図書館のミッションでもあります。全力で応援したい」、大和市立図書館館長の松田彰さんが「これを機に図書館と書店の取り組みが大きな流れになると思う。新しい取り組みにわくわくしています」、泉大津市立図書館館長の河瀬裕子さんが「地域での書店との連携が全国に広がる、すごい楽しみです」、指宿市立山川図書館館長の久川文乃さんは「新しいことをスタートすることに不安もありますが、期待感もあってわくわくしています」と話していました。

▲今村翔吾さん(左から4人目)と講演会に参加した図書館員たち

▲今村翔吾さん(左から3人目)とトークセッションに参加した図書館員たち
「本の甲子園」
主催:ホンミライ、共催:図書館流通センター、日本出版販売
