人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

  1. HOME
  2. ニュース
  3. ランキング
  4. 2025年上半期に一番売れた本は『大ピンチずかん3』!本屋大賞受賞作『カフネ』や、部門別ではM-1王者の『漫才過剰考察』もランクイン|2025年上半期ベストセラー

2025年上半期に一番売れた本は『大ピンチずかん3』!本屋大賞受賞作『カフネ』や、部門別ではM-1王者の『漫才過剰考察』もランクイン|2025年上半期ベストセラー

2025年上半期ベストセラー

5月30日(金)、2025年の上半期ベストセラー(日販調べ)が発表されました(集計期間:2024年11月20日~2025年5月20日)。

 

2025年上半期ベストセラーのキーワードは「ウェルパ」(※)

ランキングした作品の傾向として、「自分らしく生きること」や、「心の健康」、「暮らしの豊かさ」などを連想させる作品への関心につながっていました。近年注目されているウェルビーイングへの志向が、大きく変化する社会環境のなかでますます高まり、身体的・精神的・経済的・社会的に安定・安心を求める傾向が反映されたランキングとなりました。

※ウェルパ:「ウェルビーイング・パフォーマンス」の略。自分の行動や購入する商品・サービスによって、いかにウェルビーイングな状態 (=身体的、精神的、社会的に良好で、持続的に幸福な状態にあること)になれるかという評価軸

また、昨今の物価高により、買い物に失敗しないよう、価値を明確に証明できる商品を購入するロジカルショッピングという考え方が台頭したことで、長く支持を集めるロングセラー作品が多数ランクインしました。

〉〉2025年上半期ベストセラーランキングはこちら



 

総合ランキング

大人も子どもも楽しめる『大ピンチずかん3』が総合第1位に!

2025年上半期ベストセラー総合第1位は『大ピンチずかん3』でした。「大ピンチずかん」シリーズは、日常に起こる「大ピンチ」をユーモアたっぷりに紹介したもので、今回から、大ピンチの原因をうっかり度合いで振り返り、次の失敗に気を付けることができる「うっかりメーター」が初登場しました。新機軸の登場で進化を続ける本書は、日常のピンチを通じて、子どもが自分の失敗や感情を受け入れるきっかけを作る作品として、子どもはもちろん、大人からの支持も集めました。

大ピンチずかん 3
著者:鈴木のりたけ
発売日:2025年04月
発行所:小学館
価格:1,650円(税込)
ISBNコード:9784097254010

【関連記事】

・鈴木のりたけさんのインタビュー記事もチェック!『大ピンチずかん』はどのように生まれた?
子どもも大人も楽しめる!絵本『大ピンチずかん』鈴木のりたけさんにインタビュー!

・『大ピンチずかん』は、書店員さんのおすすめ本としてもご紹介されています!
vol.64 長野県:TSUTAYA 東松本店|子どもも大人も「あるある!」と一緒に楽しめる『大ピンチずかん』(わが店のイチオシ本)

・鈴木のりたけさんの人気作品もご紹介!
鈴木のりたけさんのおすすめ絵本10選|売上ランキング最新版

 

第2位には、 『改訂版 本当の自由を手に入れる お金の大学』がランクインしました。本書は、経営者・投資家で、SNSでお金にまつわる情報を発信をしている著者の両@リベ大学長さんが、一生お金に困らない「5つの力」をわかりやすく解説した実践型のガイドブック。「新NISA」などの金融制度はもちろん、「証券口座やクレカ、銀行などの選び方」など新規内容を追加し、旧版をアップデートした改訂版です。昨今の物価高とそれに続く円安など、世相に対する不安がさらなる需要を呼び、ランクインにつながりました。

本当の自由を手に入れるお金の大学 改訂版
著者:両@リベ大学長
発売日:2024年11月
発行所:朝日新聞出版
価格:1,650円(税込)
ISBNコード:9784023323780

 

また、2025年本屋大賞受賞作の『カフネ』が第3位、2024年同賞受賞作の『成瀬は天下を取りにいく』が第15位にランクインしました。いずれの作品も、テーマや主人公の状況は異なるものの、「心の健康」や、「自分らしく生きること」を求める読者のニーズに合ったストーリーが支持されています。

カフネ
著者:阿部暁子
発売日:2024年05月
発行所:講談社
価格:1,870円(税込)
ISBNコード:9784065350263

成瀬は天下を取りにいく
著者:宮島未奈
発売日:2023年03月
発行所:新潮社
価格:1,705円(税込)
ISBNコード:9784103549512

 

部門別ランキング

【単行本フィクション】全国の書店員が選んだ いちばん!売りたい本『カフネ』が堂々第1位!

総合第3位にもランクインした、第22回本屋大賞受賞作である『カフネ』が単行本フィクションジャンル第1位を獲得しました。本作は、弟を失った主人公・薫子が、弟の元恋人である料理人のせつなに出会い、生きる希望を取り戻していく物語。登場人物同士が関係を築いていくさまや、「食」が「心の健康」に通じていることを丁寧に描いた本書は、生きづらさを感じている人にも優しく寄り添う物語として支持を集めました。

第2位にランクインした『謎の香りはパン屋から』は、パン屋を舞台に“日常の謎”を解く連作ミステリーで、第23回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。主人公が軽快に日常の謎を解き、ほっと心があたたまるストーリーと、ページから焼きたてのパンの香りが漂ってくるかのような魅力的な描写で人気を伸ばしました。

謎の香りはパン屋から
著者:土屋うさぎ
発売日:2025年01月
発行所:宝島社
価格:1,650円(税込)
ISBNコード:9784299062642

 

第6位と第7位には、背筋さんの『近畿地方のある場所について』『口に関するアンケート』がそれぞれランクインしました。雨穴さんの「変な家」シリーズで話題になった、ホラーの要素を取り入れたモキュメンタリー(※)の手法による没入感の高いフィクション作品も、引き続き人気となっています。

※モキュメンタリー:フィクションをドキュメンタリーのように見せかけて演出する表現手法

 

【単行本ノンフィクション】人気芸人の“考察本”がランクイン!

単行本ノンフィクションジャンルの第3位には『漫才過剰考察』がランクインしました。M-1グランプリ2023、2024を連覇した令和ロマンの髙比良くるまさんが、歴代のM-1グランプリ分析や全国で全世代にウケる漫才など、お笑いを“過剰に”考察した著作で、テレビで多数紹介されたことに加え、M-1グランプリ史上初の連覇を果たしたことなどから、人気に火がつきました。

漫才過剰考察
著者:髙比良くるま
発売日:2024年11月
発行所:辰巳出版
価格:1,760円(税込)
ISBNコード:9784777831180

また、第4位には同じく芸人である霜降り明星・せいやさんの、『人生を変えたコント』がランクインしました。本作は、自身の実体験を基に、笑いによっていじめを跳ね返してきた生き様を描いた半自伝的小説。芸人による著書のランクインは近年にない動きで、好きな芸人を応援したいという「推し活」目的の購入も、その理由のひとつだと考えられます。

また、第5位にランクインした『私が見た未来 完全版』は、1999年に発売され、すでに絶版となった『私が見た未来』を基に、完全版として2021年に発売されたものです。東日本大震災を予言していたとして話題となりましたが、2025年7月に大災難が起こるとも予言しており、再び話題となっています。

 

【単行本ビジネス】『改訂版 本当の自由を手に入れる お金の大学』をはじめ、ロングセラーが数多くランクイン!

総合第2位の『改訂版 本当の自由を手に入れる お金の大学』が、単行本ビジネスジャンル第1位となりました。第2位には発売から2年が経過している『頭のいい人が話す前に考えていること』がランクインし、第4位の『嫌われる勇気』や、第10位の『人は話し方が9割』なども同様に、発売から数年経っているロングセラーが上位にランクインしています。ビジネス書では、多くの人に読まれているという「価値を証明できる」ロジカルショッピングの考え方に当てはまる作品がランクインする傾向が特に強く表れています。

頭のいい人が話す前に考えていること
著者:安達裕哉
発売日:2023年04月
発行所:ダイヤモンド社
価格:1,650円(税込)
ISBNコード:9784478116692

第3位の『人生は「気分」が10割』は、「気分がコントロールできれば人生もコントロールできる」ことをうたっており、第6位の『世界の一流は「休日」に何をしているのか』は、世界の一流ビジネスパーソンに共通する、休日に対する考え方を紹介しており、いずれも「ウェルパ」を重視する世相を反映するランキングとなりました。

 

【新書ノンフィクション】ぶつかっても大丈夫。「壁」シリーズ新作のテーマは“人生”

養老孟司さんの「壁」シリーズ新作の『人生の壁』が、新書ノンフィクション部門の第1位となりました。養老さんが自身の半生を振り返りつつ、悩み多き現代人に向けて、「生きていくうえで壁にぶつからない人はいない。それをどう乗り越えるか。どう上手にかわすか」を提案し、幅広い読者の支持を得ました。

人生の壁
著者:養老孟司
発売日:2024年11月
発行所:新潮社
価格:968円(税込)
ISBNコード:9784106110665

 

第2位には『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』がランクインしました。本作は2024年4月に発売され、同年10月には「書店員が選ぶノンフィクション大賞2024年」を受賞。その後も、「新書大賞2025」で大賞を受賞するなど、多くのビジネスパーソンの共感を呼ぶことでロングヒットとなりました。

第5位には『荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方』、第7位にはNON STYLE・石田明さんによる『答え合わせ』がランクインするなど、従来アカデミックなラインアップの多かった教養新書においても、気軽に手に取りやすく、より読みやすい内容が読者に求められている傾向が表れました。

 

【文庫】発売から約14年、『青い壺』ヒットの理由とは?

新装版の発売から14年、有吉佐和子さんのロングセラー『青い壺』が文庫部門の第1位となりました。本作は、ある陶芸家の焼いた青磁の壺がさまざまな人の手に渡っていく過程と、その時々の持ち主や周りの人々の人間関係を描いた短編集で、1998年に絶版となったものの、文庫編集者の目にとまり2011年に新装版として復刊されました。2022年には「こんな小説を書くのが私の夢です」という、原田ひ香さんによる帯文がきっかけでブレイクし、昨年11月にNHK「おはよう日本」で特集されると大きな反響があり、10万部の重版がされる異例のヒットとなりました。

青い壺 新装版
著者:有吉佐和子
発売日:2011年07月
発行所:文藝春秋
価格:847円(税込)
ISBNコード:9784167137106

 

第2位には東野圭吾さんの「マスカレード」シリーズ第4作『マスカレード・ゲーム』、第3位には伊坂幸太郎さんの『ペッパーズ・ゴースト』が続き、定番作品の根強い人気がうかがえるランキングとなりました。

 

関連記事

2024年上半期に一番売れた本は『変な家2 ~11の間取り図~』! キーワードは「タイパ」「コスパ」「感情移入」「共感性」|2024年上半期ベストセラー

2024年ベストセラーランキングは「変な家」シリーズが三冠!MEGUMI美容本や『大ピンチずかん2』が部門トップ