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  • 物量減、ドライバー不足、休暇取得……物流危機の現状を説明「2020年の大きなテーマ」

    2019年12月25日
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    新聞之新聞社 諸山 誠
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    物流危機の現状を説明「来年の大きなテーマ」

    出版流通改善協議会※1(相賀昌宏委員長)が12月13日に開いた「再販関連」説明会で、日本出版取次協会(取協)の田仲幹弘理事(トーハン副社長)が、出版物流の絶対量の減少が輸送会社の経営危機を招き、出版物流が崩壊し始めている深刻な状況を説明した。

    ※1… 日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合からなる。

    田仲理事は「輸送会社の働き方改革や法令順守に対応して、出版物流が安定的に維持できるよう慣習や既得権といったものを捨て、時代にふさわしい形に整備し直す必要がある」と雑誌配送などのルール改定を業界全体で議論したいと要望。これを受けて相賀委員長も出版輸送の危機について理解を示し、「この取り組みこそ、来年の大きなテーマ。輸送というよりも、むしろ出版の危機と言ってもいい。この課題にどう取り組んだか、来年の『出版再販・流通白書』※2にまとめたい」と応じた。

    ※2… 出版流通改善協議会 著・文、日本書籍出版協会刊行。

    【写真】「来年の大きなテーマ」と話す相賀委員長

    田仲理事は、10月16日に開かれた日本雑誌協会(雑協)の理事会に取協の近藤敏貴会長(トーハン社長)が出席し、「出版流通の危機」について説明したことを報告。「そこで近藤会長が話したことを改めて、この場で説明する。目の前にあるのは出版物流を支えている輸送会社の経営危機。といって輸送会社の問題だけで済ますことはできない。出版物流は、輸送会社にかなり無理を押し付けて成り立っている。その無理が限界を迎えた。出版業界の人間はその点をよく理解するべき」と切り出した。

    物流危機は出版業界だけでなく、日本の全産業の課題でもある。とりわけ、政府が推進する働き方改革では長時間労働の是正などに取り組んでいるが、長時間労働が常態化している輸送業界はそのターゲットにされていると指摘。「今年6月、労働基準監督署によってある大きな輸送会社が摘発された」(田仲理事)。

    その背景には、今年4月から順次施行されている働き方改革関連法がある。時間外労働の上限規制や有給休暇の年5日間の取得の義務化などを盛り込んだ法律だ。さらに、7月には貨物自動車運送事業法が改正され、輸送会社が働き方改革などに取り組めるように荷主配慮義務が新設された。田仲理事は「荷主の責任も問われるようになる。荷主側に優越的地位の乱用があれば、公正取引委員会からも指導される。荷主は一次的には取次、運んでいるのは出版社の商品なので、我々もまったく無関係ではいられない」と訴えた。

    働き方改革関連法の流れを受けて、取協では有給休暇の年5日間取得について、全国で共同配送を担っている輸送会社19社にアンケート調査を実施。現状でドライバーが有給休暇5日を取得できているのは全体の25%。かつ全体の35%は1日も有給休暇を取れていないという実態が浮かび上がった。「コンプライアンス(法令順守)の面から早急に是正しないといけない」(田仲理事)と強調した。

    また、全産業の輸送業界において挙げられる、もう一つの問題が慢性的なドライバー不足。長時間労働のため若い人材を獲得できず、ドライバーの高齢化も進んでいる。2020年には10万人超のドライバーが不足するという予測もある。

    田仲理事は「実際に商品を運んでいるのは、19の輸送会社の下請けや孫請けだ。車両台数20台以下の中小零細企業で、ここ10年でその規模の会社は5,000社つぶれている。元請けの19社がどうにか持ちこたえても、孫請けの会社が倒産すれば、出版物流は致命的なダメージを負う」とし、さらに、大手輸送会社の中にも出版物流は不採算部門として頻繁に出版輸送からの撤退を申し入れてくるという。「コンプライアンスや人手不足といった複合的な理由であるため、単なる値上げだけでは問題は解決しない」と説明する。

    出版輸送特有の課題もある。輸送量全体の7割を占める雑誌の物量が毎年約10%ずつ減っている現状だ。毎年10%ずつ減少すると、7年で半減してしまう計算になる。それにもかかわらず、コンビニエンスストア(CVS)や書店への配送軒数は微増している。輸送会社は業量が減って収入も減る中、輸送にかかるコストが変わらないため収支は悪化。輸送会社としては、「多くのものを運ぶ」「配送ルートを合理化して採算性を上げる」の2つしか選択肢がない状況だ。

    【写真】輸送危機について語る田仲理事

    さらに田仲理事は「雑誌の物量は減り続けている。一方で輸送会社が勝手に配送ルートや、配送頻度を変えることはできない。そこで、物量減少のトレンドを前提として、全国の書店に出版物を届けるかたちに出版物流の構造、仕組みを再設計していくしかない。出版社や書店、取次など業界全体で、配送頻度や発売日指定の緩和などを考えていくべきだ」と提案した。

    その第一歩として休配日の拡大、週休2日制に向けて取協は取り組んでいる。トラック輸送会社で構成する全国物流ネットワーク協会がドライバー不足を解消し、法令順守にのっとったドライバーの勤務時間を実現した上で安定的に出版輸送を継続させるために「全ての土曜日を休配日にしてほしい」という要請文書を取協に提出したからだ。取協はこうした輸送会社の要望に対応していく考えで、「徐々に休配日を増やして、最終的には土曜日にかかわらず、週休2日を実現したい。一部の雑協の理事にはご理解いただいている」と田仲理事。

    続けて「そもそも出版物流のネットワークが維持できなければ、売り上げも何もあったものではない。どんなにいい本でも書店に並ばなければ意味がない。それぞれの立場があるのは分かるが、出版輸送の状況は想像以上に深刻、これまでの前提条件、慣習、既得権といったものをここでいったん捨てる覚悟で臨まないと前には進まない。出版物流を維持する最も大切な目的のために業界を挙げて建設的な議論をしていきたい」と改めて要望した。

    (「新聞之新聞」2019年12月18日号より転載 ※一部編集)




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