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「たまひよ」が29年ぶりの大リニューアル!読者に“ジャストフィット”な6冊に

4月15日に、29年振りの大リニューアルを果たした『たまごクラブ』『ひよこクラブ』。妊娠期、育児期をそれぞれ初期、中期、後期に分けた、6冊の雑誌へと生まれ変わりました。今回の新創刊に込めた、老舗雑誌ならではの狙いと思いについて、編集統括ディレクターの米谷明子さんに綴っていただきました。

 

創刊号前夜――生まれ、成長する人に「おめでとう」。

「たまひよ」は2022年4月、妊娠・育児期を成長時期別に分けた6冊の雑誌に生まれ変わった。日本の出生数が過去最少を更新する81万人となったこの時代に、あえて媒体を増やして29年振りの新創刊である。読者の変化や、創刊の意味をご説明したい。

29年前と今の大きな違いは情報の取り方である。当時は、病院、親、育児書(一部雑誌)など、自分より年長の人に正解を求めていた。そこに、読者の体験談を全面に打ち出した「たまひよ」の登場は画期的だった。「他のママはどうしているの?」と同世代のリアルの中に答えを見つけ、自分だけではないと安堵したり、参考にしたり。

それが今ではweb、アプリ、SNS……、気になったことは検索すれば、人に聞かずとも無料でわかる時代になった。コロナ禍を経てこの数年、健診や立ち合い出産、両親学級などの制限があり、多くの人が孤独な妊娠・育児生活を余儀なくされたが、SNSでのつながり、YouTubeなど一般の人も発信する動画コンテンツに助けられた人は多かった。

一方で、形ある雑誌を拠り所としてくれた人も多かった。緊急事態宣言下の2020-21年に「ひよこクラブ」は2回完売をしている。妊娠したら、赤ちゃんが生まれたら、たまひよを買うのが夢だったと、改めて雑誌=喜び、手に取る目標としてくれていることを感じた。

ならば、その価値を変えることなく、時代に合わせた形に進化すべきと、新創刊のプロジェクトは動いた。

①雑誌側の都合ではなく、読者にジャストフィットした6冊の雑誌に
近年読者から「雑誌をいつ買ったらいいかわからない」という声が増えていた。「妊娠初期でつわりで苦しく、出産の特集はまだまだ遠い」「過ぎてしまった特集はもういらない」など、必要ない情報への読者の違和感は強い。

また、新刊発売日だから雑誌を購入するのではなく、「今の自分のタイミング」「自分に必要な情報のフィット感」が望まれており、思い切って時期にセグメントした雑誌に構成し直した。この6つの分け方は、たまひよオリジナルであり、29年間読者を見続けてきたからわかる、関心事の切り換えタイミングと自負している。

②未来の顧客を意識した誌面作り
話題のZ世代(※)だが、彼らは非常に「たまひよ」に近いところにいると考えている。「たまひよ Z世代の妊娠出産育児に関する意識調査」(2021年実施)では、「将来結婚したい」「子どもを持ちたい」が男女とも80%を超えている。彼らは地球環境や社会課題に意識が高く、一方で家族やごく身近な仲間を大切にする傾向も強い。彼らが妊娠・育児に夢や希望を持てる雑誌であることも目指した。

具体的には「思い切って文字情報を減らし」、好みである「淡いきれいめ色」の表紙にした。各特集誌面も、文字要素を約7割に減らし、写真やイラストで一目でわかる構成に一新した。また環境配慮のため別冊を同梱していたPP袋をなくし、グッズ付録箱もまとめて外表紙でくるむ形を採用した。

以上、書くと容易だがここまで大刷新をした苦労は、きっと同業の方には察していただけるのではないかと思う。

そしていよいよ発売日の前夜……。最後の確認をして、販促担当と一緒に帰途についた。SNSである書店員の「たまひよ6冊になって、入れ替えやっと終わった。大変だったー!」というつぶやきを見つけては、申し訳ないと思う一方、一緒に新創刊の時を迎えている心強さを感じた。人生の最初の「おめでとう」を形にして伝えてきたのが妊娠・育児の雑誌である。数々の妊娠・育児雑誌を送りだしてきた各社先輩への感謝で胸が熱くなる、創刊の醍醐味を感じた静かな夜だった。

 

最新号(7月15日発売)はこちら

後期のたまごクラブ 2022年 08月号
著者:
発売日:2022年07月15日
発行所:ベネッセコーポレーション
価格:1,320円(税込)
JANコード:4910159010828

中期のひよこクラブ 2022年 08月号
著者:
発売日:2022年07月15日
発行所:ベネッセコーポレーション
価格:1,320円(税込)
JANコード:4910177010824


ベネッセコーポレーション たまひよ編集統括ディレクター
米谷明子 YONEYA Akiko
1967年青森県生まれ。妊娠・育児系の出版社を経てベネッセコーポレーション入社。「たまごクラブ」「ひよこクラブ」編集統括ディレクター、「妊活たまごクラブ」編集長。1993年のたまひよ創刊時は別の出版社の新米編集者だった。新しい価値観を持った雑誌が誕生した、そんな発売日前後の光景を覚えている。


(「日販通信」2022年7月号「編集長雑記」より転載)