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  • 第4回「親子で読んでほしい絵本大賞」は通学路の冒険を描いた『がっこうに まにあわない』

    2023年03月18日
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    ほんのひきだし編集部
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    2023年3月14日(火)、JPIC読書アドバイザークラブ(略称:JRAC ジャラック)は、第4回「親子で読んでほしい絵本大賞」の贈賞式を開催しました。

    「親子で読んでほしい絵本大賞」は、司書、読みきかせボランティアなど、子どもに絵本を手渡す経験が豊富なJRAC会員が、過去1年間の新刊絵本400冊の中から、「親子で読んでほしい絵本」を投票で選考し、表彰するものです。

    第4回大賞には『がっこうに まにあわない』(ザ・キャビンカンパニー作/あかね書房刊)、今回から新設されたベビー賞には『いっしょだね いっしょだよ』(きむらだいすけ作/講談社刊)が選ばれました。

    (写真左から)受賞者のきむらだいすけさん、ザ・キャビンカンパニーの阿部健太朗さんと吉岡紗希さん

     

    大賞は大分の廃校で生み出された『がっこうに まにあわない』

    『がっこうに まにあわない』の著者であるザ・キャビンカンパニーは、阿部健太朗さんと吉岡紗希さんの夫婦二人組による絵本作家、美術家。大分県生まれのお二人は、由布市の廃校をアトリエにして、絵本をはじめとするさまざまな作品を生み出しています。

    『がっこうに まにあわない』は、ある理由から「絶対に学校に遅れちゃいけない」とあわてる男の子のある朝の“冒険”を、スピード感あふれるダイナミックな絵とともに描いた作品です。

    がっこうにまにあわない
    著者:ザ・キャビンカンパニー
    発売日:2022年06月
    発行所:あかね書房
    価格:1,650円(税込)
    ISBNコード:9784251099556

    家を飛び出し、あわてて走る男の子。今日は絶対に学校に遅れちゃいけないのだ。でもゆくてには、水たまりじゃぶじゃぶ、歩道橋ぐねぐね、大きな犬たちがわんわん、踏み切りは閉まったまま。なんて、じゃまするものばっかり。さてこの男の子、学校に間に合うの? そして最後に待っているのは……。にぎやかハッピーな世界を突っ走るスピード感あふれる絵本。いつもの通学路が冒険の旅に変わるかもしれない!?

    〈あかね書房公式サイト『がっこうに まにあわない』より〉

    本作は、ご自身の子どもに時間や曜日の概念を教えたときに、「不思議な罪悪感」を覚えたことがきっかけで生まれたそうです。

    「車に乗っている」「遊んでいる」「お風呂に入っている」という「今」を生きていた子どもが、「あと○分で保育園が始まる」という焦りや、「月曜日は保育園に行かなくてはならない」という義務に目覚めた瞬間を見たというお二人。そのことに切なさを感じる一方、それは人間として社会で生きていく上では大切なことと考えています。

    いつも、そんなふうにさまざまな思いや考えを話し合いながら、ぎゅっとまとめて絵本にしている中、特に「学校に間に合うのか、間に合わないのか」が論点になったと語るラストは、「絵本は子どもが生きていくのに必要な何かを与えていくものでもある」という思いが導いたものでした。

    「この10年ずっと絵本のことを考えてきて、先輩たちなど関わってくださったみなさんの言葉を一つひとつ思い返しながら、これでいいのかと日々悩んで作っているので、この大賞をもらえたことがすごく励みになりました。大分の廃校で2人きりで悶々としながら描いているので、今回の受賞や、作品の読み聞かせをしていますという声を聞いたり、子どもたちの反応を見たりすると、作ったものがちゃんと届いているのだなと本当に幸せに思います。最高の本になりました。ありがとうございました」と交互に言葉を重ねながら、喜びと感謝を語りました。

     

    ベビー賞は親子の体温を感じ合える『いっしょだね いっしょだよ』が受賞

    ベビー賞は、「親子で読んでほしい」というテーマにあわせ、赤ちゃん絵本を対象にした賞を作ってはどうかというお客様、JRAC会員の声を受けて設けられました。

    受賞作『いっしょだね いっしょだよ』の著者であるきむらだいすけさんは、自然科学系のイラストを中心に手掛け、アートワークショップなどの活動も展開しているクリエーター。本作も、著者ならではの知見を活かしながら、動物の親子の情景をぬくもりあふれるタッチで描いています。

    いっしょだねいっしょだよ
    著者:きむらだいすけ
    発売日:2021年11月
    発行所:講談社
    価格:1,430円(税込)
    ISBNコード:9784065259474

    ながい首に、ちょっとながい首。
    おおきなおかおに、ちいさなかお。
    ページをめくるごとに、いろいろな動物の親子が登場します。
    からだのいろやかたち、そして行動。
    親子、兄弟もみんな一緒だね。

    親のぬくもりを感じながら、すくすくと育つ子どもを見守るまなざしを
    豊かなタッチの絵で描きます。

    ページの中には、あれあれ? 何かが隠れているよ。見つけてね!

    〈講談社BOOK倶楽部『いっしょだね いっしょだよ』より〉

    『いっしょだね いっしょだよ』といろいろな動物の親子によって繰り返されるフレーズは、きむらさんが「僕ら一人ひとりがみんな、社会で生きている仲間なんだよということを感じてほしくて」書いたもの。

    そんな本書を制作したきっかけについて、きむらさんは次のように語っています。

    「赤ちゃんに意味がわからなくても読み聞かせる。その次に意味がわかる年代に読み聞かせる。そうすると、今度は子どもが自分で本を選んできて、うろ覚えだったり、創作したりしながら自分で絵本を読み始めます。

    僕は実は、そのタイミングが一番好きなんです。そのときに、繰り返して喋れるポピュラーな言葉、シチュエーションとして『いっしょだね いっしょだよ』と、一番小さなコミュニティの中で体温を感じあうことがひとつのテーマだったと思います」

    贈賞式は、受賞者それぞれの自著の読み聞かせが行なわれたほか、質疑応答の際にはお互いの回答を受けて、ザ・キャビンカンパニーのお二人ときむらさんが会話を繰り広げるなど、受賞作2作の雰囲気そのままに、終始和やかな会となりました。

     

    第4回「親子で読んでほしい絵本大賞」入賞作品

    大賞:『がっこうに まにあわない』(作/ザ・キャビンカンパニー、あかね書房)
    2位:『バスが来ましたよ』(文/由美村嬉々、絵/松本春野、アリス館)
    3位:『2ひきのカエル そのぼうきれ、どうすんだ?』(作・絵/クリス・ウォーメル、訳/はたこうしろう、徳間書店)
    4位:『王さまのお菓子』(文/石井睦美、絵/くらはしれい、世界文化社)
    5位:『夜をあるく』(作/マリー・ドルレアン、訳/よしいかずみ、BL出版)
    6位:『えんどうまめばあさんと そらまめじいさんの いそがしい毎日』(原案・文/松岡享子、文・絵/降矢なな、福音館書店)
    7位:『スープとあめだま』(作/ブレイディみかこ、絵/中田いくみ、岩崎書店)
    8位:『そだててみたら…』(作・絵/スギヤマカナヨ、赤ちゃんとママ社)
    9位:『はだしであるく』(文/村中李衣、絵/石川えりこ、あすなろ書房)
    10位:『へび ながすぎる』(作/ふくながじゅんぺい、こぐま社)

     

    第4回「親子で読んでほしい絵本大賞」概要

    【選考方法】
    JRAC会員40名からなる選考委員が、季刊誌「この本読んで!」2022年春号から冬号で紹介された400冊の新刊絵本(2021年9月から2022年8月までに刊行された絵本)の中から大賞候補作品12冊を選出。その12冊をJRAC会員有志が読んで、1位から3位を選んで投票。今回、最終選考の投票には108名の会員が参加。

    投票結果、選考理由などは、「この本読んで!」(2023年春号)に掲載されています。

    この本読んで! 86号(2023年春号)
    発売日:2023年03月
    発行所:出版文化産業振興財団
    価格:1,320円(税込)
    ISBNコード:9784802156448


    【JPIC読書アドバイザークラブ(JRAC)とは】
    一般財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)では、読書活動を推進するために、1993年より「JPIC読書アドバイザー養成講座」を開設。JPIC読書アドバイザークラブ(JRAC)は、この講座の修了生有志による自主運営組織。会員は全国に約600名が在籍し、図書館、出版社、地域のおはなし会などで読書推進活動を展開している。

     

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