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  • 広範な読書遍歴と紙へのこだわりが生んだ新雑誌「スピン/spin」

    2022年11月11日
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    ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    河出書房新社創業140周年カウントダウン企画として、9月27日に創刊された「スピン/spin」。その名づけ親である恩田陸さんはじめオールジャンルの表現者が集結、紙の専門商社とコラボレーションするなどさまざまなこだわりが評判を呼び、発売2日目で増刷が決定と大きな注目を集めています。

    そんな新雑誌には、編集人である河出書房新社・尾形龍太郎さんの読書遍歴と紙への思いが大いに込められているのだそう。創刊までの道のりとその思いについて、尾形さんにエッセイを寄せていただきました。

    文藝増刊 スピン 2022年 10月号
    著者:
    発売日:2022年09月27日
    発行所:河出書房新社
    価格:330円(税込)
    JANコード:4910078221022

     

    私の読書遍歴と新雑誌「スピン/spin」

    小学生の頃は「ジャンプ」全盛でした。「夢」が詰まったその少年誌の爆発力は今に至るまで私の身体の中で衰えることを知らず、「マガジン」「サンデー」「チャンピオン」も合わせて毎週欠かさず買っています(青年誌系の連載漫画はコミックで収集)。

    さらに同時期から中学生にかけて、アガサ・クリスティ、エラリー・クイーン、コナン・ドイル、エドガー・アラン・ポーの沼にハマりました。

    高校生の頃に講談社ノベルスやカッパ・ノベルスに出会います。貪るように読みました。

    その影響もあってか、推理小説、特に警察小説がいまだに好きで、毎週必ず書店の文庫・新刊コーナーへ捜索にいきます。

    この頃に出会ったのが河出文庫の「文藝コレクション」と江戸川乱歩です。その流れで幻想文学を密かに愛読するようになります。

    そんな学生時代、ずっと読んでいたジャンルがあります。純文学です。

    御多分に洩れず、私も文学に救われた一人です。読書という浮き輪にしがみつきながら、現実世界で溺れずに済んだ瞬間もありました。

    1998年に河出書房新社に入社し、1999年6月に「文藝」編集部に異動、そこから20年ほど同部署で過ごしました。新人賞である文藝賞をはじめ、現代の純文学に触れる機会は多くなりました。しかし、プライベートでの読書傾向は、学生時代とほぼ変わっていません。

    以上のような節操のない読書遍歴を過ごした私が中心となり立ち上げたのが、新雑誌「スピン/spin」です。

    2026年に創業140周年を迎える河出書房新社が、そのカウントダウン企画として贈る「オールジャンル」+「紙」の季刊誌です(全16号)。

    私は紙の本が好きで、本が鞄の中に入ってないとソワソワしてしまう人間です。だから(というのもなんですが)「紙」での創刊にこだわりました。

    ブックデザインは「文藝」時代から20年近くお世話になっている佐々木暁さんにお願いしました。「紙」への愛がとても深いデザイナーです。「この時代に、なぜ紙の雑誌を創刊するのか?」という、ものすごく基本的なことを話し合う日々が半年近く続きます。

    この時間の中で、紙の専門商社・株式会社竹尾とのコラボレーションも生まれました。毎号、表紙と目次の紙を変える仕掛けも施しています。ぜひ手に取り、視覚・触覚でその違いをお楽しみください。

    さらにジャンルの「枠」を取り払いました。

    (私の読書傾向にもよるのですが)作品ジャンルだけでなく、書き手のジャンルもさまざまな雑誌、それが「スピン/spin」です。

    誰か一人でも気になる書き手がいれば手に取り、そして新しい書き手と出会って欲しいし、私も出会いたい。「オールジャンル」に込めた思いです。

    紙の本よりも電子書籍を利用するという読者も増え、ジャンルの細分化はますます加速しています。そのような時代だからこそ、「スピン/spin」はその逆に挑戦したいと思います。
    声高に「紙を残せ!」と主張するつもりはありません。

    ソフト・ハード両面から、「紙」の雑誌・「紙」の読書の魅力を読者に届ける。そのことだけは忘れずに、全16号、走り抜けたいと思います。

    次号も2本の新連載がスタート予定。創刊号は重版もしましたので、全号揃えてみてはいかがでしょうか。ちなみに、年間定期購読(4号分)いただくと、特製栞・3枚をプレゼントします。

    河出書房新社の新たな挑戦を、お楽しみください。


    河出書房新社「スピン/spin」編集人
    尾形龍太郎 OGATA Ryutaro
    1975年生まれ。98年株式会社河出書房新社入社。99年より編集部に所属。「文藝」編集部を経て、現在は書籍全般の編集を担当。


    (「日販通信」2022年11月号「編集長雑記」より転載)




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