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  • 【Vol.5:直島翔】編集者が注目!2022はこの作家を読んでほしい!

    2021年12月27日
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    ほんのひきだし編集部
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    2020年から続く新型コロナウイルスの流行で、人々の生活や価値観が大きく変化した2021年。一方で、本を開くだけで無限に想像力と世界が広がる「文芸書」が、身近なエンターテインメントとして再認識される年でもありました。

    ほんのひきだしでは「編集者が注目!2022はこの作家を読んでほしい!」と題して、各出版社の文芸編集者の皆さんから【いま注目の作家】をご紹介いただきます。

     

    小学館編集者 柏原航輔さんの注目作家は「直島翔」

    直島翔(なおしま・しょう)
    1964年、宮崎市生まれ。立教大学社会学部社会学科卒。新聞社勤務。社会部時代、検察庁など司法を担当。『転がる検事に苔むさず』にて第3回警察小説大賞を受賞し、デビュー。『恋する検事はわきまえない』はその続編となる。

    小学館では、警察小説ジャンルに特化した新人賞「警察小説大賞」を主催しています。2021年の大賞作『転がる検事に苔むさず』にて作家デビューした直島翔氏は某新聞社現役記者で、かつては東京地検を担当していました。東京地検といえば数多の大物政治家を摘発してきた特捜部です。彼らが動けばほぼ大事件なわけですから、取材は熾烈を極めます。

    夜討ち朝駆けの末、検察関係者からネタを取ったとしても記事にはできない。まず裏取りがなされていない。当局側の世論誘導の可能性もある。だから関係者に取材をする。しかし知る人間が少ない。そうこうする間に他社に追いつかれる。悔しい経験を何度もしてきたそうです。直島氏は当時を、「取材すればするほど書けないことも多くなっていった。何も知らなかった、もしくは知らないふりをしていたら書けたけど……」と苦笑いします。

    本題に入ります。『転がる検事に苔むさず』の続編となる『恋する検事はわきまえない』を目下、校了しています(2022年2月中旬発売予定)。3人の個性派検事と1人の交番巡査が登場する連作短編集になります。第3編にあたる「海と殺意」の主人公・久我周平は、日陰を歩みつづけた中年検事です。なぜ出世できないかといえば真面目に取り調べするから。「落とし所」がわからない検事は、組織として扱いづらいというわけです。

    実は、久我にはモデルとなる検事が実在します。作家・柚月裕子氏との対談のなかで、直島氏は、〈警察から上がってきた証拠を集約して公判に上げるのが、検事のオーソドックスな仕事です。しかし、それ以上のことをやるのが検事としての責務と考え、取り調べに誇りをかけている人がいました〉(「STORY BOX」2021年9月号掲載)と明かしています。

    ところで、警察任せにせず、自分で被疑者と向き合い、供述を取っていく……そんな検事に、私はある人の姿を重ねてみたくなります。当局側から得た情報を鵜呑みにせず「それ以上のこと」を取材してきた直島氏です(本人は謙遜するでしょうが)。

    書かなかった記者は、書けなかった記者ではない。むしろ書かなかったことで、たくさんのものを守ってきたのだと想像します。あのとき表に出なかった話が、今になって直島氏の「ひきだし」から取り出され、小説執筆に活かされているのだと。第2作といわず、今後もコンスタントに活躍するにちがいない直島氏に、ぜひ注目してください。

    (小学館 出版局 文芸編集室 柏原航輔)

    転がる検事に苔むさず
    著者:直島翔
    発売日:2021年09月
    発行所:小学館
    価格:1,760円(税込)
    ISBNコード:9784093866170

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