• fluct

  • 『桜のような僕の恋人』TikTokで話題!「泣ける」物語と装丁で中高生の心をつかむ

    2020年11月03日
    楽しむ
    ブックジャーナリスト 内田 剛
    Pocket

    2017年2月の発売から約3年半。「きっと涙が止まらない。美しく儚い、恋の物語。」のキャッチコピーで知られる本書が、季節に合わせたカバーの掛け替えという「映える」仕掛けと、読者によるTikTokの投稿から火がつき、40万部を超えるベストセラーとなっています。

    そのヒットの理由と今後の展開について、集英社の文庫編集部・信田奈津さんと書籍販売部の島田雄一郎さんにお話を伺いました。

    桜のような僕の恋人
    著者:宇山佳佑
    発売日:2017年02月
    発行所:集英社
    価格:660円(税込)
    ISBNコード:9784087455489

    story
    美容師の美咲に恋をした晴人。彼女に認めてもらいたい一心で、一度は諦めたカメラマンの夢を再び目指すことに。そんな晴人に美咲も惹かれ、やがて二人は恋人同士になる。しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。美咲は、人の何十倍もの早さで年老いる難病を発症してしまったのだった。老婆になっていく姿を晴人にだけは見せたくないと悩む美咲は……。

    〈集英社公式サイト『桜のような僕の恋人』より〉

     

    今回取材にご協力いただいた方

    (写真左)集英社 文庫編集部 主任 信田奈津さん
    (写真右)同 書籍販売部 主任 島田雄一郎さん

     

    ストーリーを反映させた春夏秋冬のフルカバー帯が好評

    ――本書は発売当初から文庫の注目作品として力を入れられていましたよね。

    信田 そうですね。著者の宇山佳祐さんはテレビドラマの「スイッチガール!!」や「信長協奏曲」など脚本家として実績がある方です。将来的な映像化を見込んで初版部数も1万5千部でスタートしました。

    文庫本としては異例ですが、プルーフ本を作成して、書店員の皆さんからの推薦コメントを集めて拡材も作成しました。当時『君の膵臓をたべたい』(文庫化は2017年4月)が大ヒットしており、「泣ける本」の需要も高まっていましたから発売のタイミングも良かったと思います。

    桜の季節に合わせた2017年2月の刊行が決まっていましたが、前年の10月からそうした準備をしていました。書き下ろし新刊とはいえ、文庫本でこんなに早くから販促に取り組んだ例は、あまりないのではないでしょうか。

    ――内容の良さがあってのこととは思いますが、ジャケットもまた素晴らしいです。

    信田 宇山さんのたっての希望で、イラストはソーシャルゲームのイラストやキャラクターデザインで活躍されている「LAL!ROLE」さんにお願いしました。作品の空気感が伝わる、本当にいい表紙になったと思います。

    タイトルに“桜”が入っていますから、オリジナルのカバーは春のイメージにし、2月の発売時には桜をテーマにしたコーナーでしっかり展開していただきました。

    島田 物語は春夏秋冬と四季の移ろいとともに展開されます。そこで、12万部以降の重版のタイミングで、四季それぞれのバージョンでフルカバー帯を作成し、季節ごとに掛け替えることにしました。読者からの反響もとても良く、クリアファイルやポストカードなどプレゼント用の特典イラストとしても好評です。

    SNSで表紙の写真と一緒に「読んだよ」という投稿が拡散されて、若い読者が反応してくれました。

    ▼物語に登場する春夏秋冬のシーンを切り取ったカバーも好評

    ――思わず写メを撮って拡散したくなる、まさにインスタ映えするデザインですね。季節感もストレートに伝わってきます。売れ方はどのような感じだったんですか。

    信田 ジャケ買いもあって最初から火がついていた印象です。「Seventeen」のモデルの大友花恋ちゃんやGENERATIONS from EXILE TRIBEの片寄涼太さん、「Myojo」で連載している中島健人さんなどがオススメ本として取り上げてくれるなど、紹介してくださった芸能人の方たちのファン層にも広がって、3年間ずっとコンスタントに売れています。

    2019年と2020年は夏の文庫フェア「ナツイチ」にもラインナップされて、全国の書店さんの目立つ場所で並べていただき、大きな後押しとなりました。

     

    「TikTok」の動画をきっかけに若い読者に大反響

    ――そしてこの夏は店頭で一時的に品切れ続出になったと聞きましたが、一体何が起きたのでしょうか?

    島田 今年の7月の2週目から売上部数が跳ね上がりました。もともとナツイチ銘柄の中でも売上は良好だったのですが、それにしても大きな反応があり、原因を探ってもしばらくわからなかったんです。

    調べているうちに、読者の方が投稿した「TikTok」での動画がきっかけとわかりました。この動画が29万回という驚異的な回数再生されて10代がメインの若い年齢層の方たちに注目されました。

    この動画に反応してくれた方々の中には、普段書店にあまり足を運ばない方もいたようで、書店店頭でご自分のスマホ画像をかざしながら「この本はどこにありますか?」と質問される方が続出したそうです。

    信田 著者の宇山さんのところにまで、「本がないのですが、どうしたらよいでしょうか」と問い合わせが入ったと聞きました。重版部数からみると、この「TikTok」効果は12万部ほどあったと考えられます。私たちもまったく予想もしなかったような大反響に、本当に驚いています。

    ――桁違いの爆発ぶりですね。

    信田 SNSだけでなく、リアルな場での口コミなども効いているのではないでしょうか。

    島田 さらに嬉しいのは7月の反応が一過性のものではなく8月、9月と3か月続いていることです。8月いっぱいでナツイチのフェアは展開が終了し始めますが、それ以降の、特に土日に売上が上がっています。全国的に動いていることと、すぐに収束しない点に、これからの手応えも感じています。

     

    著者・宇山佳祐さんの単行本にも注目

    ――宇山佳祐さんの最新の単行本も評判です。

    島田 2018年11月に発売した『この恋は世界でいちばん美しい雨』もTwitterで評判になりました。「2019啓文堂書店文芸書大賞」にも選ばれて、発売2年で12刷6万部突破のヒットとなっています。文庫と単行本が併売できる販売台を作成して、双方読者の方に手に取っていただけるよう工夫しています。

    信田 また、新作も弊社で準備中ですので宇山さんのこれからの活躍もぜひご期待ください。

    この恋は世界でいちばん美しい雨
    著者:宇山佳佑
    発売日:2018年11月
    発行所:集英社
    価格:1,540円(税込)
    ISBNコード:9784087711684

    ――今後の展開もとても楽しみですね。

    島田 『桜のような僕の恋人』は、今年の夏の大ブレイクで現在、41万5千部となっています。現在、書店さんの店頭では、「40万人が号泣。」のキャッチコピーと、四季それぞれの名場面が描かれたパネルとともに展開していただいています。

    信田 際立ったイラストの良さが伝わるカバーのバリエーションも季節ごとに登場させていますので、ぜひご注目ください。これまでは若い読者を中心に支持していただいていますが、この作品はストーリーに力があり、幅広い読者の方の心に必ず響くものがあります。世代を超えて読んでいただければうれしいです。

    ――さらに多くの読者にこの感動が届くといいですね。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

    ▼元書店員であり、「POP王」としても知られる本記事のライター・内田剛による本作のPOPがこちら




    タグ
    Pocket

  • GoogleAd:SP記事下

  • GoogleAd:007

  • ページの先頭に戻る