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本好き著名人活用し、書店に通う習慣づくりへ 東京都書店商業組合が取り組む「#木曜日は本曜日」

東京都書店商業組合は10月6日、本屋へ足を運ぶ習慣づくりを目指した新プロジェクト「#木曜日は本曜日」プロジェクトを開始した。本屋と本を愛する著名人、インフルエンサー、作家など十数名が「人生を変えた本」をテーマに選んだ書籍10冊を東京都内約180店舗の特設棚で毎週木曜日から順次販売。

同時に「人生を変えた本」のエピソードを語るインタビュー動画も公開して、読者の来店を促す試みに取り組んでいる。

 

「本屋には出会いがある」井之上常務理事 上白石萌音さん皮切りに5か月間実施

10月6日、同日からスタートするプロジェクト「#木曜日は本曜日」の記者発表会が東京都中央区の八重洲ブックセンター本店で開催され、多くの報道陣が駆け付けた。

▲「#木曜日は本曜日」の記者発表会の様子。左から2人目から順に東京都書店商業組合副理事長・渡部満さん(教文館)、俳優・歌手の上白石萌音さん、同組合常務理事・井之上健浩さん(久美堂)

会では東京都書店商業組合常務理事の井之上健浩さん(久美堂代表取締役社長)がプロジェクトの概要を説明しながら、「本屋には自分が知らない本、好きだと思っていなかった本との出会いがある。そんな本屋がこのままではなくなってしまう。そこでお客様が継続的に本屋に来たくなるきっかけをつくるプロジェクトを立ち上げた。その名も『#木曜日は本曜日』プロジェクト。1週間に1度、木曜日に本屋に来てほしいという思いを込めて企画を作った」とプロジェクトの趣旨を語った。

また、副理事長の渡部満さん(教文館代表取締役社長)は、「本屋には、思いがけない本を発見する出会いがある。その場である本屋を盛り上げていきたい。その思いに数多くの著名人の方々が共感し、本屋をピンチから救おうと立ち上がってくれた。東京のみならず全国の書店、出版社を巻き込んで、本屋に行くことへの思いをお客様に伝え、習慣にしてもらいたい」とプロジェクトに対する思いを語った。

来年2月までの5か月間、毎週木曜日に人生を変えた10冊を紹介する本好き著名人のトップバッターとして登壇したのが、俳優・歌手の上白石萌音さん。自らの「人生を変えた10冊」を披露し、「いろんな気持ちになれる本を集めた。緊張がほぐれたり、にこにこしたり、時には涙がこぼれたり、いろんな気持ちを揺さぶってくれるのが本」と選書のポイントを話した。

その中から伊坂幸太郎著『アイネクライネナハトムジーク』の私物を手に取り、「手になじむ、愛着ある、大切で大好きな一冊。ネタバレ厳禁の本だが、平凡な人が日々の暮らしの中で小さな奇跡や挫折をのりこえて生きていくという内容の連作短編集。伏線回収が見事。記憶を消してまっさらな気持ちでこれを読みたい。初めて読んだ時の感動が忘れられない。何度読んでも心がぶるぶる震える」とお薦めの一冊について語った。

その後、八重洲ブックセンターの書店員のアドバイスを受けながら、選書した10冊を展開する特設棚にそえるPOPの作成にチャレンジ。「本の数だけ本の色がある」という思いを込めて、「十冊十色」と書いたPOPを作成した。最後に、「本屋さんに一生通います。人生何が起こるか分からないが、一生本を読んでいる自信はあるので、一生お世話になります」と書店へエールを贈った。

上白石さんの選んだ10冊は以下の通り。
『アイネクライネナハトムジーク』伊坂幸太郎(幻冬舎)、『悲しみよ こんにちは』フランソワーズ・サガン(新潮社)、『こんとあき』林明子(福音館書店)、『さがしもの』角田光代(新潮社)、『常設展示室』原田マハ(新潮社)、『もものかんづめ』さくらももこ(集英社)、『うたうおばけ』くどうれいん(書肆侃侃房)、『チャックより愛をこめて』黒柳徹子(文藝春秋)、『バカの壁』養老孟司(新潮社)、『夜と霧』ヴィクトール・E・フランクル(みすず書房)

 

「デジタル技術活用による業界活性化プロジェクト」を活用

同プロジェクトは東京都中小企業団体中央会の特別支援「デジタル技術活用による業界活性化プロジェクト」として、同中央会から委託を受けた東京都書店商業組合が運営するもの。今年7月に同組合の申請が採択され、7月の理事会で「『木曜日は本曜日』習慣化プロジェクト特別委員会」の設置とプロジェクト開始を承認、事業がスタートした。

同中央会の特別支援によるプロジェクトの取り組みは今回で2回目。昨年には書店の歴史や店主の個性などをインタビュー形式で動画を作成し、同組合のYouTubeチャネル「東京の本屋さん ~街に本屋があるということ~」で約70店を紹介。さらに、SNSを使って本や書店の情報を発信することで読者獲得を目指すSNSの勉強会を開催するなど、デジタルを駆使した読者への直接アピールに努めている。

今回は、読者の忙しい日々の中でゆっくり本と向き合う時間として、週の真ん中に位置する「木曜日」に目を向け、週に1回は本屋へ足を運ぶ習慣づくりを目指そうというチャレンジだ。
同組合常務理事で「木曜日は本曜日」習慣化プロジェクト実行委員会委員長を務める小川頼之さん(小川書店代表取締役)は次のように思いを語る。

「本屋の最大の魅力でもある“まだ見ぬ本との偶然の出会い”をより多くの方に体験していただきたいという思いで『#木曜日は本曜日』プロジェクトを開始するに至りました。週の前半を頑張った自分にご褒美の一冊、週の後半を楽しむための一冊を探しに、ぜひ『木曜日』に遊びに来ていただきたいと思っています」

 

特設サイトで動画を公開

オープニングイベントを開催した10月6日には特設サイトをオープン。著名人らの人生を変えた10冊やインタビュー動画を掲載している。オープニングイベントにも登壇した上白石さんのインタビュー動画などのほか、13日からは歴史を面白く学ぶラジオ「COTEN RADIO」の運営に取り組むCOTEN代表取締役の深井龍之介さん、20日からはフリーアナウンサー・宇賀なつみさんによる人生を変えた10冊とその動画も順次公開している。

動画は同組合のYouTubeチャネルでも視聴することができる。また、公式Twitter(@honyoubi)も開設してこれらの取り組みについて読者へのアピールに努めている。

ちなみに上白石さん出演のスペシャルムービーのタイトルは「世の中が嫌になった人にオススメの本」。動画前半では、上白石さんが選んだ絵本と小説の紹介と、それぞれの本を読んだ時のエピソードについて語っており、動画後半では上白石さんが東京・南麻布の小川書店に来店して店内を“散策”し、お気に入りの本に出会うという内容だ。

深井さんは「僕の“認知”が変わった本」というタイトルで、前半は深井さんが選んだ3冊を紹介するとともに、それぞれの本を読むことでどんな情報をインストールできるのか、などを語った。動画後半では東京・目黒区中根の八雲堂書店にて、深井さん流の本屋さんの回り方を披露している。

同組合加盟の約180の書店では実際に各著名人の10冊を販売。購入特典として本棚をイメージした「#木曜日は本曜日 限定しおり」(各著名人の顔入り)も店頭配布している。

▲フリーアナウンサー・宇賀なつみさんバージョンのしおり

上白石さんが選んだ10冊は絵本から文芸書、人文書までと幅広く、COTENの深井さんは「社会善」をテーマに哲学書などを中心に選書した。

深井さんは「僕自身、『自分自身の認知を広げる場』として日ごろから本屋さんを利用しています。本屋さんやそこに売られている本は、自分たちを遠くへ連れて行ってくれる存在だと感じているため、今回のプロジェクトを通じて、皆さんにも本屋さんに足を運んでいただき、新しい世界へ導いてくれるような本と出会っていただければな、と思います」とのコメントを寄せている。

今後も、続々と著名人やインフルエンサーなどが代わる代わる登場し、それぞれの10冊を紹介していくが、組合加盟以外の書店も自店で展開しやすいように、ロゴなどを特設サイトからダウンロードできるようにするなど自主的参加を促している。「今回のプロジェクトで助成金を使えるのは東京都の加盟書店のみだが、本屋へ通う習慣づくりを広めていくためにも、他店の自主的な参加はウェルカム」という。

プロジェクト終了後の「#木曜日は本曜日」の今後については未定だが、「秋の読書推進月間のような業界横断型の読書推進キャンペーンが今年から始まった。業界内でこの取り組みを活用してもらい、もっと大きなうねりにしていければ」としている。

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(「日販通信」2022年11月号より転載)