全国の書店員さんが、もっともおすすめの本を紹介する連載「わが店のイチオシ本」。
第71回は、滋賀県草津市にあるふたば書房南草津店のコミック・文庫担当、池田雛子さんです。
今回、池田さんが紹介してくださるのは、「このマンガがすごい!2023」オンナ編の第5位にランクインしたSFファンタジー漫画『星旅少年』です。本書のおすすめポイントは、世界観、言葉、絵、物語をはじめたくさんあるという池田さん。その魅力をたっぷり綴っていただきました。
『星旅少年』の冒頭部分も掲載していますので、あわせてチェックしてみてください!
『星旅少年(1~5)』
著者:坂月さかな
発売日:①2022年4月
発行所:パイ インターナショナル
価格:①1,100円、②~⑤各1,210円(すべて税込)
ISBN:①9784756256492
絵、色、建物、キャラクター……たくさんの“素敵”が詰まった優しい物語
ふたば書房南草津店は、JR南草津駅を降りてすぐ近くの施設・フェリエ南草津の2階にある、オープンして1年ちょっとの本屋です。本だけではなく、さまざまな雑貨や文房具も多く販売しています。
当店がおすすめする本は『星旅少年』です。
表紙の青が目を惹くこの本は、星旅人303という少年の旅の記憶です。トビアスの木の毒によってほとんどの住民が眠りについたまどろみの星を旅する彼は、行く先々でさまざまなひとやものに出逢います。残されたそれらを記憶・保存し、そして寄り添いながら、303は少しずつ変化していきます。
この本をおすすめしたい理由はたくさんあります。世界観が素敵なところ、言葉が印象的なところ、絵が綺麗なところ、物語が素敵なところ、などたくさんです。今回はそうしたおすすめしたい素敵なところをご紹介したいと思います。
まず、なんといっても絵が素敵です。さまざまなものや建物、キャラクターの絵、すべてがかわいくてずっと眺めていられます。シンプルな線の細かい描き込みがとても素敵です。
『星旅少年』にはさまざまなものが登場します。書いた文字が砂になるペンや指を鳴らしてスイッチのオンオフができるランプなど、個性的でおもしろいものばかりです。そうしたものの絵がこれまた素敵で、現実にもこうしたものがあればいいなあと思います。
色もとても素敵です。黒から青へのグラデーションや、青色の鮮やかさがとても綺麗で、その中にひとつふたつ差し込まれている赤色がさらに目を惹きます。
物語も素敵です。この本は、星旅人303の旅の記憶でありつつ、303を取り巻く人たちの物語でもあります。303や、彼の相棒である505、505の後輩ククロナ、303が旅する星で出逢うひとたち。
彼らには彼らの過去があり、物語があります。このお話は、そうしたところに静かなスポットライトが当てられています。ひっそりと眠りについていく住民たちのなかに残っている、誰にも知られることはなかったはずの記憶に寄り添い、そこに確かにあったことをなかったことにしない。そうした誠実さがこの本にはあります。
たくさんの素敵なところのある『星旅少年』は、うまく眠ることのできないときにもおすすめです。なんだか不安で眠れないなあ、という時にこの本を読むと、知らぬ間に力んでいた心身がゆっくりとほどけていき、落ち着いて寝ることができます。最高の眠りの友です。
『星旅少年』は、建物の絵が好きな人、青色が好きな人、夜が好きな人、眠れない人、優しい物語が読みたい人に自信をもっておすすめできる1冊です。著者の坂月さかな先生の作品集『プラネタリウム・ゴースト・トラベル』も併せて読むと最高です。ぜひ、読んでみてください。
- プラネタリウム・ゴースト・トラベル
- 著者:坂月さかな
- 発売日:2021年04月
- 発行所:パイインターナショナル
- 価格:2,068円(税込)
- ISBNコード:9784756254870
◆作り手からのメッセージ◆
池田様のコメントのとおり、眠れない夜に読みたい、寝る前に1話ずつゆっくり読みたい、温かい飲み物と一緒にほっと一息つきながら読みたいといった声をよくいただいております。『星旅少年』を読むひととき、忙しない日常を忘れ、少し寂しいけど優しい世界を303と一緒に旅してもらえれば嬉しいです。
(パイ インターナショナル 編集部 斉藤香さんより)
『星旅少年』の冒頭を試し読み!
ふたば書房南草津店
Tel.077-564-5528
〒525-0059 滋賀県草津市野路1-15-5 フェリエ南草津2F
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