全国の書店員さんが、もっともおすすめの本を紹介する連載「わが店のイチオシ本」。
第69回は、大阪府河内長野市にある文教堂河内長野店の文芸書担当、樽野芙美さんのご登場です。
今回、樽野さんが紹介してくださるのは、第45回日本シャーロック・ホームズ特別賞を受賞し、第23回本格ミステリ大賞【評論・研究部門】にノミネートされた『シャーロック・ホームズの建築』です。シャーロック・ホームズ研究家の北原尚彦さんと一級建築士の村山隆司さんが、コナン・ドイルの書いた文章を分析し、物語の中に登場する建物を考察した異色のホームズ本です。そんな本書について、おすすめポイントとともに綴っていただきました。
『シャーロック・ホームズの建築』
文:北原尚彦、絵・図:村山隆司
発売日:2022年2月
発行所:エクスナレッジ
価格:2,200円(税込)
ISBN:9784767829777
「館もの」が好きな人にも!「ベイカー街221B」「バスカヴィル館」はどんな建築だったのかがわかる建物研究本
文教堂河内長野店は、大阪府河内長野市、南海高野線と近鉄長野線の河内長野駅前のショッピングモール「ノバティながの」4階にある地域密着型の書店です。
私がご紹介したいのは、『シャーロック・ホームズの建築』です。
ホームズファンなら必読、ホームズはそれほどでなくても、ミステリ(特に館もの)が好きという方ならきっと楽しんでいただけると、自信を持っておすすめいたします。
内容はタイトル通り、コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』シリーズに登場するさまざまな建物を研究する本です。
説明不要のベイカー街221Bの下宿を始めとして、「あの女性」アイリーン・アドラーが住んでいた「ブライオニー・ロッジ」のような普通の家もあれば、「バスカヴィル館」(『バスカヴィル家の犬』)のような広壮なマナーハウス、さらにはそれ自体がミステリの道具である……。これは具体的なことは書けませんが、正典(念のため、原作のことです)に登場する建物の外観や間取り図が描き出され、読めばその登場する物語を読まざるを得なくなります。
文章だけを手がかりに具体的なヴィジュアルを描き起こすというのは相当難しそうですが、著者コンビは北原尚彦氏のホームズ愛と知識、村山隆司氏の建築に関する造詣の深さという強力な武器を手に、そこへ正面から堂々と切り込んで料理しきっています。しかも私のようなただのホームズファンで、建築については全くの無知、という人間が読んでも十二分に楽しめる文章と美しい絵に、ありがとうございます、と言いたくなりました。
また当時の建築に関する解説も、しっかり専門的かつ丁寧(書き忘れていましたが本書は月刊『建築知識』の連載をまとめた本であり、その方面も本気なのです)なので、純粋にとても勉強にもなり、英国建築に興味がある方にもおすすめできます。建築への興味から手に取られた方は、どうぞこの機会にホームズの魅力を知ってください。
そんなわけで、「マニアック! ホームズ本の世界」として、ほかにもホームズ研究本を集めて展開してみました。といっても全体的なマニア度は、正直序の口だと思います。踏み込めばどこまでも沈んでいく沼……もとい奥深く楽しめる世界ですので、興味のある方はぜひ、入門書からでも手に取っていただければ幸いです。
正典のほうは、当店文庫コーナーに各社から刊行されているものがございますので、読み返したくなった方はそちらでお待ち申し上げております。
▲ホームズ研究本を集めた「マニアック! ホームズ本の世界」
▲「担当者イチオシ!」の書籍として、『シャーロック・ホームズの建築』を展開中
◆作り手からのメッセージ◆
ホームズ研究家の北原尚彦先生と一級建築士の村山隆司先生が、コナン・ドイルの書いた文章を分析し、間取りの細部に至るまで緻密に建築を設計した一冊です。
はじめて『シャーロック・ホームズ』を読んだときに感じた未知への期待と高揚が詰まっています。頁を開くとヴィクトリア朝の光景が広がります。
(エクスナレッジ 書籍編集部 佐藤美星さんより)
文教堂河内長野店(Tel.0721-56-4946)
〒586-0015 大阪府河内長野市本町24-1 ノバティながの北館4階