人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

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“バーミキュラのブランド思想とお客様を繋いでくれるのが本” 自社拠点に「COOKBOOK LIBRARY」を導入したバーミキュラの思い

「町工場から世界最高の製品を作りたい」という想いから生まれた、メイド・イン・ジャパンの鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」。手掛けるのは、1936年に創業した老舗鋳造メーカーの愛知ドビーです。

2019年12月には、「最高のバーミキュラ体験」をテーマに、バーミキュラブランドの世界観を発信する拠点「VERMICULAR VILLAGE(バーミキュラ ビレッジ)」を愛知県・名古屋市にオープンしました。

ここでは、“バーミキュラで調理した料理の美味しさ”や、“メイド・イン・ジャパンのものづくり”を体験することができます。

そして、2021年12月には、東京都・渋谷区代官山に「VERMICULAR HOUSE(バーミキュラ ハウス)」をオープン。「バーミキュラ」を楽しめる拠点を拡大しています。

両施設には、「食」をテーマにした本を取りそろえる「COOKBOOK LIBRARY(クックブックライブラリー)」が併設されています。ここでは、コーヒーや焼き菓子とともに新刊書籍や古書を楽しむことができます。

(写真上:バーミキュラ ビレッジ、写真下:バーミキュラ ハウス)

バーミキュラの世界観を伝えるアイテムとして重要な役割を果たしているという「本」について、愛知ドビー代表取締役副社長の土方智晴さんにお話を伺いました。

土方智晴
1977年生まれ。愛知県出身。
大学卒業後、トヨタ自動車に入社。原価企画などに携わる。
2006年、代表取締役社長の兄・邦裕の要請に応えて愛知ドビーに入社。
精密加工技術を習得し、バーミキュラ全製品のコンセプト策定から製品開発までを主導する。
日経クロストレンド「マーケター・オブ・ザ・イヤー2020」を受賞。




――まずは、バーミキュラの世界観を発信する場所であるバーミキュラ ビレッジ、バーミキュラ ハウスについてお聞かせください。

バーミキュラ ビレッジ、バーミキュラ ハウスともにコンセプトは「最高のバーミキュラ体験」を提供することです。訪れる方々にとって、バーミキュラのある生活がより豊かになるような提案をしています。

バーミキュラの製品は基本的に高価です。フライパンひとつでも2万円を超えるものがあるので、お客様の中にはなかなか手を出しづらいという方もいらっしゃると思います。

私達は、バーミキュラブランドのすべてが世界最高の調理器具だと思っていますので、お客様には、安心して購入していただきたい。

そのために、まずは購入前に、レストランやベーカリー、デリカテッセンといった飲食施設で、「バーミキュラで作ったものは最高に美味しい」ということを体験していただきたいと思っています。

また、その場でバーミキュラ製品を使って調理していただける体験型ショップも用意しています。バーミキュラ製品を何の心配もなく使いこなせることを体感していただき、帰ったら「この料理を作ってみよう!」と楽しい気持ちになれる場を提供しています。

――バーミキュラ製品に興味がある人というと、料理上級者がターゲットなような気がしますが、お客様は初心者よりも上級者の方が多いですか?

いいえ、私たちは、初心者の方と上級者の方、双方に魅力的にうつる製品づくりを心掛けています。例えば、バーミキュラは二つの側面があって、ひとつは世界のトップシェフにも愛されるような調理性能を持っている点、もうひとつは、料理の苦手な人でも失敗することなく想像を超える味を出すことができるという点です。

ですので、お客様の中には、料理が苦手だけど始めてみたいという方もたくさんいらっしゃいますし、トップシェフの方々もたくさんいらっしゃいます。

――その中で、クックブックライブラリーはどういう役割を果たしているのでしょうか。

いくつかあるのですが、大きな点は「バーミキュラブランドの世界観」をお客様に視覚的に感じていただけるということです。

クックブックライブラリーの本は、バーミキュラのストーリーやコンセプトと親和性のあるものを展開しています。そのため、スタッフが説明しなくても、本のカテゴリーやビジュアルを見ていただくだけで、バーミキュラブランドがどこに向かって行っているのか、何を目指しているのかということを、お客様に知っていただくことにとても役に立っています。

名古屋にあるバーミキュラ ビレッジでは世界各国の「食」に関する約3,000冊の本がそろい、代官山にあるバーミキュラ ハウスは、“FOOD LIFE - 食と暮らし - ”をテーマに、11カテゴリーに細分化して、約1,500冊の本を展開しています。

11カテゴリーは、「食と暮らし」「食と健康」「食と美容」「食とサスティナブル」「食とローカル」「食とテクノロジー」「食とアート」「食と物語」「食と心」「食と旅」「食と絵本」と、幅広い分野に及びます。

こういう本があるということは、こういうことを大切にしているブランドなんだ、世界に目を向けているブランドなんだ、食とテクノロジーというところまで考えているブランドなんだ……など。バーミキュラブランドのテーマを言葉で発信していなくても、選書されたものを見て感じとっていただけます。

また、バーミキュラはひとつひとつの製品に時間をかけて開発しているので、毎月、毎年といった短いサイクルで新製品を出すブランドではありません。一方、書籍はさまざまなジャンルやテーマがあるので、本棚に変化を出すことができます。いつお客様が来ても、新鮮な気持ちで、新しいものを手に取っていただけるという点でも役立っています。

――選書の部分で軸になっているコンセプトはありますか。

選書については、日本出版販売・リノベーション推進部の中澤佑さんにお願いしています。バーミキュラというのは何なのか、というところはもちろん、食やライフスタイルだけではなく、デザイン性・建築の分野にもこだわりを持っているブランドだということを考慮して選書していただいています。

また、世界のトップシェフたちとも交流があるので、彼らのレシピだったり、世界の料理だったりと、バーミキュラのバックボーンとなっている要素を中澤さんと一緒に洗い出して、そのテーマに合ったものを選んでいただいています。

料理の一番楽しいところは、どんな食材を組み合わせてどういうものを作るかという、クリエイティブな部分にあると思います。自分で新たな料理を作ることが料理の一番楽しい部分だと思っているので、ここにある書籍を見て、新しいインスピレーションを得ていただきたいです。

――バーミキュラという自社製品を扱っている会社が、外部のものである「本」を扱う点で戸惑いはありましたか。

まったくありませんでした。自分たちでイチから選書や売場づくりをしたら戸惑いはあったと思いますが、中澤さんがいつも素晴らしい提案をしてくれますし、その提案を毎回楽しみにしています。自分たちでも気付かない部分が見えてきて、確かに「バーミキュラってこういう側面もあるな」と気付かされることがあります。

また、スタッフの教育、情報収集という点でも役に立っています。選書しているのは私やスタッフではなく中澤さんなので、我々が知らない本ばかりです。でもそれは、中澤さんが「これはバーミキュラブランドと関係があるものだ」と選んでいただいているものなので、仕事で行き詰ったときなどには、そうした本からヒントを得ることが多々あります。

こうした新しい知識に関してもそうですし、デザインに関しても、そこから新たなインスピレーションを得て、いろいろな場面に役立てることができています。

シェフが「新製品にあわせてこういうレシピを作ろう」という時にも、本を見に行くことが多いですね。イメージを膨らませるにあたり、Webで調べるよりもいい結果になる気がします。

――今後、「本」についての展望はありますか。

もっとスタッフがお店に並んでいる本に触れて、お客様に提案できるようにしたいですね。例えば、“スタッフの今月のおすすめは「〇〇〇」です”など、そういったことをやっていきたいです。

スタッフの成長、お客様への提案力という面でも、よりグレードアップしていけるのかなと思います。

ショップでブランドの想いやビジョンを伝えきることは、実はとても難しいのです。当初は、「どうやったら伝わるだろうか」と頭を悩ませました。製品の機能については接客でカバーできても、ブランドストーリーや考え方はお伝えしにくい。そういう意味でも、バーミキュラのブランドの思想とお客様を繋ぐものとして、今後も本を活用していきたいと思っています。

 

店舗情報

VERMICULAR VILLAGE
住所:愛知県名古屋市中川区舟戸町4 運河沿い
アクセス:名鉄「山王駅」から徒歩約14分、あおなみ線「ささしまライブ駅」から徒歩約15分
公式サイト:https://www.vermicular.jp/village/

VERMICULAR HOUSE
住所:東京都渋谷区猿楽町28-14
東急東横線「代官山駅」から徒歩約3分
公式サイト:https://www.vermicular.jp/house/