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おすすめの新書200点を一挙展開!「夏新書2023」三省堂書店神保町本店にて開催中!

三省堂書店 夏新書フェア1

7月2日(日)より、新書へのあふれんばかりの愛を詰め込んだフェア「夏新書2023」が、三省堂書店神保町本店仮店舗1階にて実施されています(三省堂書店神保町本店は、ビル建て替えに伴い仮店舗で営業中)。

本フェアを企画・実施した同店の大西香苗さんに、企画の成り立ちから読書の魅力についてまで、お話を伺いました。

 

21社200点の新書を揃えた横断型フェア!ブックカバーと小冊子のノベルティも

――この企画は、書店店頭の風物詩となっている夏の文庫フェアに対して、発案されたそうですね。

途中で担当を離れた時期もありますが、私は10年ほど前から新書と文庫をおもに担当しています。その2ジャンルをセットで担当している書店員は多いと思いますが、書店員や出版社の営業さんから「文庫が好き」というお話を聞くことはあっても、新書についてはあまりそういった声を聞かなくて不思議に感じていました。

新書は良書やロングセラーも多く、昔から「夏の文庫フェア」があるなら、新書のフェアがあってもいいのではないかと思っていましたし、せっかくであれば、出版社にかかわらず、広く各社のおすすめ銘柄を揃えて新書の魅力をアピールしたいと考えました。

そこで出版社の方に、新書の合同フェアについてヒアリングしてみたところ、かなり前向きな反応をいただけたので、懇意にしてもらっている各社の担当の方にお声がけをして、21社にご参加いただけることになりました。

――今回のフェアでは、オリジナルブックカバーと小冊子を制作されているそうですね。

文庫のフェアになぞらえて、オリジナルのノベルティと小冊子を作りたいと考え、その制作費用として各出版社さんに1,000円の参加費をいただいています。そのうえで、各社10点までの選書と、小冊子に掲載する100字の紹介文を寄せていただくようお願いしました。

しかも、最終的にフェアとして取り上げる作品は、選書いただいた中からこちらで決定させていただくという不躾ともいえる内容でしたし、作品の選定からコメントの作成まで、出版社さんがどこまで1店舗のために労力をかけてくださるのかはわかりませんでした。しかし、「参加したい。楽しみです」と前向きにおっしゃっていただいたり、「1,000円で足が出ませんか?」とこちらの懐具合を心配してくださったり、ひとつのフェアを作り上げる仲間というお気持ちが感じられてうれしかったです。

▲ブックカバーは各出版社やレーベルのロゴを散りばめたデザイン。新書サイズの小冊子には、フェア全点を紹介文とともに掲載

 

幅広い世代の誰もが読める、前向きな気持ちになれる本をセレクト

――フェアの対象作品は200点と大規模なものですね。

200点中、約170点が出版社さんのセレクトの中からピックアップしたもので、残りの約30点は私と新書担当スタッフが独自に選んでいます。

横断型の企画ならではだと思うのですが、今回のフェアでは出版社やレーベルをミックスして、英語、アート、芸術、国語と、中学校の教科をイメージしてジャンルごとに分類しています。出版社の方にも「版元に関係なく、入り交じって並んでいるのがいいですね」「一つのレーベルだけよりも、力を合わせることで、より多くの人の“おもしろい!”“知りたい!”に応えられるのでは」とご好評をいただいています。

――出版社には「中高生の読書感想文用にもイケる全年代にオススメしたい本で」と選書を依頼されたそうですね。

まず、幅広い世代の誰もが読める、前向きな気持ちになれる本を並べたいという気持ちがありました。

また、文庫の夏のフェアは、読書感想文としてのニーズが高いと感じます。実際に私も中学生ぐらいのときに、各社のラインアップの中から選ぶといいよと先生に言われましたし、いまも中高生の方がそのために買っていかれます。それならいっそ、この新書フェアも読書感想文の題材にふさわしい本を選びたいと考えました。そのため、読者対象や思想的に偏りがあるものは、今回のフェアからは外しています。

▲神保町本店仮店舗の杉浦正人本店長(右)と、企画者の大西香苗主任(左)。棚上部の学校の黒板をイメージしたフェアパネルは、社内のデザイナーとともに制作

 

▲店頭のPOPの左上には各教科のマークがついていて、ジャンルがわかりやすい

 

リアルな店舗だから楽しめる、おもしろい企画を

――出版社のセレクトからさらに絞られるのは大変なのではと思いましたが、そういったポリシーに則って選ばれたということですね。

私自身が10年間、新書の販売に携わってきましたし、読んでもきましたので、ある程度ロングセラーは把握できています。たとえば岩波ジュニア新書なら『砂糖の世界史』、中公新書なら『科挙』のように、自分がお薦めしたい本、思い入れがある本も足しながら選びました。

また、どのようなジャンルでも大人向けの専門的な本はしんどいかもしれませんが、テーマにまつわる歴史やおもしろい“ネタ”のようなものがつまっている新書は、15歳前後でしたら読めるのではないかといった観点からも揃えています。

――まさに長年担当されてきた書店員さんの腕の見せ所ですね。ブックカバーは広告効果もありつつ、夏らしいスッキリしたデザインですが、反応はいかがですか?

カバーの試作が上がったときには、社内からも「かっこいい」「いいね」と言ってもらえました。こうした“ギミック”があることで、普段新書になじみがない人にも「おもしろそう」と手に取ってもらえたらうれしいですね。

――貴店では、オリジナルブックカバーレーベル「BOOK COVER FOR BOOK LOVER」も立ち上げていらっしゃいますね。

現在、神保町本店ビルが建て替え中のため、この仮店舗では従来の売場の規模を5分の1ほどに縮小して営業しています。以前ご紹介いただいた「短歌を贈る~わたしのこころを動かした、31文字の世界~」のフェアもそうですが、蔵書量も減っている中、それでも神保町の三省堂書店に行ってみようと思っていただけるよう、リアルな店舗だからこそ楽しめる、おもしろい企画を打ち出そうという本店長の指示のもと、店舗一丸となって取り組んでいます。

今回のフェアに関しても、ハッシュタグを作ったり、拡材にQRコードをつけたりして、お客様にも発信していただけるような環境を整えています。参加出版社さんにもTwitterでの拡散をお願いしています。

▲写真撮影やSNSへの投稿を歓迎するPOPを掲示

 

――お客様にフェアを知っていただくには、SNSの活用は欠かせませんね。

バズりたくてもバズれないですし、炎上のリスクなどもありますが、その中でも楽しみながら、できる範囲でやっていこうと考えています。Twitter にアップするのもPOPを書くぐらいの感覚でお客様に親しんでいただこうというのが当店の方針ですので、各対象書籍についてTwitterでご紹介していくことも考えています。

▲同店のTwitterでは「#夏新書2023」のハッシュタグで、各作品の紹介も実施

 

――フェアへのお客様の反応はいかがですか?

新書とは、縦173mm×横106mm(新書判)のサイズで刊行されるものを指しますが、このタイプの書籍を「新書って言うんだね」と話しているお客様がいらっしゃいました。ご存知の方も多いかもしれませんが、「新書」も「文庫」も業界用語でもあるのかもしれません。こうやってフェアとして展開することで、新書というジャンルに興味をもっていただければと思います。

新書は一般書籍の中でも低価格ですが、時事が詰まっているものから社会、歴史、心理、物理、経済までジャンルも多く、入門書、教養書として読んでいただけるものが揃っています。コンパクトでありながら出版社各社が中身の充実した本を出していて、読書にハードルを感じていらっしゃる方にも、気負わずに買っていただけるのではないでしょうか。

今回は200点と豊富な品揃えで展開していますので、店頭で眺めていただき、少しでも興味が湧いた一冊があれば、手に取っていただければうれしいです。昨今は総合新刊書店が減りつつあり、店頭で新書の品揃えを豊富にするのが難しくなってきていると聞きます。弊社は新書の構成比が比較的高く、レーベルも揃えています。この機会に、「新書に強いお店」として打ち出せたらと思っています。

――フェアは8月末まで開催とのことですので、せっかくの夏休み、中高生をはじめ、多くの方に新書を手に取っていただけるといいですね。

本にはさまざまなジャンルがありますので、もちろん合う、合わないはあるかもしれません。

新書は基本的にノンフィクションを扱っていますので、小説のように空想の世界には連れて行ってくれません。しかし、「いままでこう思っていたけれど、こういう考え方もあるんだ」「こういうやり方もあるんだ」と自分の現在地を確認し、本を通して自分と会話をしながら発見があるのも新書を読む楽しみの一つだと思っています。そうした経験を重ねていくと、本の中で読んだことが実際に活きてくる場面も訪れると思いますので、ぜひ当店のフェアでそんな一冊との出合いを楽しんでいただきたいです。

▲同店入ってすぐの天井からは、「夏新書×夏文庫」のパネルが。左手の壁沿いの棚で新書フェア、突き当りのスペースで文庫が展開されている