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  • コロナ禍における書店と地域のあり方とは?文榮堂×山口大学による地方創生プロジェクト 「空間体験」をビジネスにしたチームに最優秀賞

    2021年02月20日
    本屋を歩く
    日販 中四国九州支社 中村
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    地域の老舗書店である文榮堂と山口大学による産学連携プロジェクト「文榮堂×山口大学 地方創生プロジェクト」が、4回目となる2020年度も実施されました。

    「文榮堂×山口大学 地方創生プロジェクト」は、書店を媒介させた地域活性化を目的に、2017年度より続くプロジェクト。今回は8月にスタートし、文榮堂のこれまでの歩みと昨年度の最優秀賞プレゼンからプロジェクトの意義と目的について学んだあと、「ニューノーマル時代における本と書店の地域貢献」をテーマに、参加学生16名が4チームにわかれて企画を考え、文榮堂の一角に用意された「本棚1本」を思い思いに演出し、自分たちの“書店”として2か月間営業しました。

    営業期間は、いずれも2020年11月6日から12月31日まで。その間学生たちは、書店のコンセプトメイクはもちろん、選書・発注・ディスプレイ・販促活動・営業管理まで自分たちで手がけ、売れ行きや来店客の反応をまめにチェックしながら改善を続けました。

    4軒の書店の名前は、「ゆらりぼん」「未来書店」「restart」「PASS&TRAVEL」。営業した結果は「本が売れたか」ではなく、地域の課題をいかに解決したか、つまり「その書店があることでいかに地域に貢献できたか」という視点で総合的に評価され、次年度以降のプロジェクト活動につなげられます。

    「文榮堂×山口大学 地方創生プロジェクト」記事アーカイブはこちら

     

    “贅沢に時間を使うレトロ空間”「ゆらりぼん」が最優秀賞に

    4書店の中で最優秀賞に輝いたのは、“レトロ”をテーマに売り場づくりした「ゆらりぼん」(松田ゼミ所属/経済学部4年生2名・2年生3名)。暗幕のように布で囲われた空間が、ゆらりぼんの“店内”です。

    本棚に並べられた書籍は、吉本興業の創業者・吉本せいをモデルに描かれた山崎豊子さんの直木賞受賞作『花のれん』や、大正~昭和初期の文化を解説した『モダンガールのスゝメ』、「日本懐かしお菓子大全」など。レトロ雑貨や音楽、香りなどをあわせて配することで、五感を刺激し、「非日常ながらどこかほっとする贅沢な時間」を演出しています。

    ロゴマークをはじめ、壁に貼ったポスターもメンバーの自作。山口大学商品資料館から当時のレコードやランプを借りるなど、すみずみまでこだわった演出がされています。

    書店としての最大の特徴は、商品だけでなく、空間料(入場料)を設けて店全体に価値付けをしたこと。

    また、アナログな場所ならではのツールとして「文通」を採用し来店客と交流する一方で、SNSではクイズも交えながら情報発信を行なうなど、コミュニケーション活動も積極的に行ないました。

    「ゆらりぼん」企画チームは、ニューノーマル時代の課題を「オンライン主流の時代であり、人との関わりや『体験』が希薄化すること」、また地域としては「非日常を味わえる空間が少ないこと」が課題であると分析。これらを解決するために、リアルな場でしかできない「非日常の空間体験」を前面に押し出し、来店の動機づくりと地域ニーズに応えられるものとして、今回の企画を考えたのだといいます。

    最優秀賞に選ばれた理由は、空間体験をビジネスにするという発想の柔軟さと、企画・プレゼン内容の充実度、SNSの運用まで含めた企画実現性の高さ。特に「空間演出の質の高さ」は、全審査員から高く評価されました。

    ▼他チームの企画

    「未来書店」(松田ゼミ所属/経済学部2年生4名)
    漠然とした不安な毎日を過ごす就活生をターゲットに、悩みの種類に応じた選書フェアを実施。コロナの影響で「就職活動や働き方」への不安を抱える学生の「見えない将来」を「見える将来」に変える、厳選した5冊の本を並べる。

    「restart」(平野ゼミ所属/経済学部3年生4名)
    “おうち時間”に新たな趣味を始めたいけれど、何をしたいかわからない。そんなニーズにおみくじや心理テストで応え、書店店頭でのセレンディピティを演出。「意外とこの趣味私にあってるかも。」筋トレや料理など、家の中でできる趣味を、おみくじや入門書、雑誌などを通して提案。

    「PASS&TRAVEL」(平野ゼミ経済学部3年生3名)
    伝言板を通じて「人と人が繋がる場」を提供。伝言板には「本の紹介欄」「本の募集欄」「自由記述欄」があり、間接的にいろいろな人と交流ができる。あえて「伝言板」というアナログなツールを設置することで、物理的な関わりも重視した。

     

    コロナ禍における「書店と地域のあり方」とは

    「書店というリアルな場の魅力」と「地域活性化」をかけあわせる従来のコンセプトに、「ニューノーマル時代」という新たな要素が加わった、2020年度の「文榮堂×山口大学 地方創生プロジェクト」。

    学生たちの企画を山口大学の担当教授はどう見たか、総括として振り返っていただきました。

    平野哲也准教授より(山口大学経済学部経営学科)

    本年度の文榮堂プロジェクトでは「ニューノーマル時代における本と書店の地域貢献」を共通テーマとしつつ、多彩なコンセプトによる店舗と企画が生まれました。

    ゆらりぼん:非日常とレトロ空間
    未来書店:将来を「見える化」する演出
    restart:セレンディピティと「遊び」
    PASS&TRAVEL:アナログと伝言板

    コンセプト(概念)は暗闇で対象を照らす「サーチライト」ですが、学生たちはそれぞれの「光」を手に「コロナ禍における書店と地域のあり方」を探求しました。本年度はコロナ禍で変化した「生活シーン」や「人と本の出会いの場」、「コミュニケーションの方法」を再考する店舗デザインを起点に戦略を組み立てました。

    もちろん、早い段階でコンセプトを形にしたグループもあれば、試行錯誤を繰り返したグループもありました。大学もオンライン講義へ移行し、文榮堂プロジェクトもオンラインの併用を余儀なくされました。学生たちは、オンラインや対面会議による戦略の策定・実行・修正を繰り返し、時には、大学でのアンケート調査や顧客の行動観察、店舗の設営や修理のため、大学と店舗を何度も往復しました。私たち教員の終わりなきフィードバックとの悪戦苦闘の末、それぞれの「着地点」へ向けたストーリーを描きました。

    コロナ禍の文榮堂プロジェクトを通して、社会のあり方やコミュニケーションの方法が変化しても、地方創生へ向けた学生と企業の協働が可能であることを証明しました。今後はこのコンセプトを媒介として、知恵を結集し、地域を巻き込むプロジェクトの方法論を模索していきたいと思います。




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