ほんのひきだしでは、2026年1月1日(木)から、各出版社の文芸編集者の皆さんが「今、この作家を読んでほしい」とおすすめする、短期連載企画「編集者が激推し!2026年の注目作家はこの人」をお届けします。
ぜひ、気になる作家や作品を見つけて、書店に足を運んでみてください。
文藝春秋 第二文藝部・安尾日向さんの注目作家は「住田祐」さん

住田祐(すみだ・さち)
1983年、兵庫県生まれ。会社員。2025年『白鷺立つ』で第32回松本清張賞を受賞しデビュー。本作は第174回直木賞の候補作となった。松本清張賞受賞作が直木賞候補作となるのは、2004年の『火天の城』(山本兼一)以来、21年ぶり。
松本清張賞デビュー作がいきなり直木賞候補に!
舞台は江戸後期の比叡山延暦寺。登場人物は全員、お坊さん。
第32回松本清張賞を受賞した住田祐さんのデビュー作『白鷺立つ』は、こんなにも私たちから“遠い“設定であるにもかかわらず、そのあまりのドラマチックさにぐいぐい引き込まれてしまう、不思議なエネルギーに満ちた小説です。
松本清張賞の最終候補作として本作を初めて読んだとき、私は「な、なんなんだ、これは……」と思いました。口に出してしまっていたかもしれません。コメダ珈琲店にいたのに。それくらい“異様”な作品でした。
主題となるのは恃照(じしょう)と戒閻(かいえん)という師弟の関係性です。二人はともに、出生に“とある秘密”を抱えており、それゆえに千日回峰行という命懸けの荒行に魅入られていきます。
同じ秘密を抱える二人が手を取り合い、過酷な修行を乗り越えていく……のではないのが本作の面白いところ。この師弟、あり得ないくらいいがみ合うんです! 師匠に対して「何ゆえ生きておられるので」と言い放ったり、それに「野に朽ちるは戒閻、お主じゃ」と返したり。お寺の静謐なイメージとはかけ離れた生々しい人間の姿がまざまざと描き出されます。
著者の住田さんは「とにかく誰も書いたことがないであろう物語が書きたかった」とおっしゃいます。会社員の傍ら新人賞への投稿を続けていた住田さん。本作執筆の裏には半年以上かけた資料調査があったと言います。資料に裏打ちされたディティールと、そこからはみ出す想像力。受賞後の改稿では、文章へのこだわりを強く感じました。
「お坊さんのいがみ合いにこんなに夢中になるとは!」と好評をもって受け止められた本作は、第174回直木賞の候補作となりました。住田さんが次に書かれる「誰も書いたことがない物語」にもご期待ください!
(文藝春秋 第二文藝部 安尾日向)
- 白鷺立つ
- 著者:住田祐
- 発売日:2025年09月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:1,760円(税込)
- ISBNコード:9784163920146

