「私ってスマホ依存?」と思ったら
気づけばスマートフォンを触っている。何となく手に取りSNSをチェックしたら、推しの動画を見る。届いていたメッセージに返信する。その合間を縫ってまた別のSNSを開き、広告が目についたアパレルショップのサイトを開く。いつの間にかずいぶんな時間が過ぎ去っていて「ああ、またやっちゃったな」とうっすら後悔する……。
「これはスマホ依存なのでは?」そんな疑念を抱いた私は、『スマホ依存がわかる本 ゲーム、ギャンブル、SNS依存から抜け出す』を手に取った。
本書は、誰もが陥りやすいスマホ依存の実態やその予防のしかた、依存からの抜け出しかたを教えてくれる。久里浜医療センターに国内初のネット依存専門外来を設立した樋口進先生が監修を行う1冊だ。
ネット依存専門外来には多くの人が訪れており、家族に連れられて来る人も増えてきているという。
年代を問わず、スマホの保有率が高くなっている昨今。本書は当事者だけでなく、家族のスマホ使用に不安を感じている人にとっても、依存の本質を理解して対応策を見つけるための有用な指南書となっている。
万能すぎる「誘惑の入口」
何でもできるから、手放せない。スマホなしでは暮らせない――。そんな「スマホ依存」の人たちの抱える問題はバリエーションに富んでいる。

バラバラの症状に見えるが、共通するのは「スマホですることに夢中」なことである。
厳密にいえば、スマホの使用がコントロールできないというのは、ゲーム、SNSなど、「スマホという道具を使って、インターネットにつなげたオンラインの状態でしていること」がやめられないという意味です。
スマホ(の向こうのコンテンツ)に依存してしまうのには、実は本人の意志だけでは説明できない理由がある。「1 スマホが『依存』をつくりだす」は、「スマホですること」が“やめにくく、どんどん続けたくなる”しくみを徹底的に明かす。
たとえば、スマホでネットニュースなどを眺めているときに“いいこと”に混ざって“悪いこと”が目に入ることさえ、人の脳にとっては快感になるという。またスマホでできるゲームやSNS、ギャンブルには、ユーザーが「夢中になる」「手放せなくなる」「くせになる」ための工夫が凝らされている……といったことが解説されている。この「依存を生むしくみ」が頭のどこかにあるだけで、「そろそろまずいかも」と踏みとどまるきっかけになるかもしれない。
スマホ依存の度合いを客観視するためのチェックリストも収録されている。

今のところ私はスマホ依存ではないようだが、自分の依存ぶりを知るためにも、依存から抜け出す取り組みを行う際の進捗管理としても使えるリストだと感じた。
境界線を知り、有意義な時間を取り戻す
できることが多岐にわたるゆえに曖昧になりがちな「スマホ依存」という言葉。これが指すものに加え、「どこからが病気なのか」という境界線を明確にしているのが本書の特徴だ。

こうした境界線を、依存が深刻化する前に理解しておくことには大いに意味がある。なぜなら、深刻化した依存によって、脳の働き方までも変わってしまうからだ。

なにか大きな問題が起こっていてもやめられない――それが依存という病気です。(中略)
どれも基本的には脳の病気です。くり返すうちに脳の働き方が変わり、自分の行動をコントロールできなくなっていくのです。
本書の後半では「スマホの使用時間を減らす」「元の状態に戻らないよう、適切な管理をする」ためのさまざまな切り口からのアプローチが紹介されている。
当事者として読めば「スマホとうまく距離を取れば有意義な時間が生まれる」とやる気がわく。また、家族や身近な人のスマホ依存についても「強硬策は避ける」「依存の背景に目を向ける」など、依存を繰り返させないための「抜け出しかた」も、心強い情報になるはずだ。
自分の意志でコントロールできてこそ、スマホは便利なツールになる。本書は、そのための知識と方法を与えてくれる頼もしい1冊だ。自分のスマホ使用に疑問を感じている人はもちろん、家族のスマホ依存を心配している人にも強く推薦したい。
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(レビュアー:中野亜希)
- スマホ依存がわかる本 ゲーム、ギャンブル、SNS依存から抜け出す
- 著者:樋口進
- 発売日:2025年10月
- 発行所:講談社
- 価格:1,760円(税込)
- ISBNコード:9784065412565
※本記事は、講談社|今日のおすすめ(書籍)に2025年11月28日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。

