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「子育てしながらパートナーと仲良く」を実践する!『ワンオペ育児モヤモヤ脱出ガイド』

2014年にSNS上で生まれた造語「ワンオペ育児」。いまや育児経験者だけでなく、多くの人に通じる言葉になりました。私自身も子どもが生まれてから、夫や友人たちとの会話で「ワンオペ」という言葉を口にしない日はないのでは?と思うほどです。

ただ、この言葉には疲れや不満といったネガティブな響きがつきまといます。本当は誰だって楽しく育児をしたいし、イライラなんてしたくないはず。それでも多くの人が、育児においてモヤモヤを抱えているのではないでしょうか。もちろん私もそのひとりです。そんなモヤモヤに光をあて、脱出のヒントを示してくれるのが、2025年9月22日に発売された『ワンオペ育児モヤモヤ脱出ガイド「つかれない家族」になるための31のヒント』です。

本書は、コミックエッセイストのハラユキさんが東洋経済オンラインで連載していた記事をベースに、再構成・加筆し、描き下ろしを加えたもの。国内外の家族への丁寧な取材を通じて、実用的なヒントをギュッと詰め込んだ、まさに“ワンオペ育児本の決定版”といえる一冊です。

ハラユキさんによれば、ワンオペ育児のモヤモヤの正体はひとつではありません。分解していくと――
・やることが多すぎる「物理的ワンオペ」
・パートナーとの関係に悩む「心のワンオペ」
・社会的な仕組みが生む「社会からのワンオペ」
・「がんばり」から抜けられない「ワンオペ体質」
という4つのタイプに分けられるといいます。

本書はこの4つのテーマごとに、実際に悩みを乗り越えた家族のエピソードを紹介しながら、私たちが参考にできる31のヒントを示してくれます。

私自身、特に心に響いたのはパートナーとのコミュニケーションに関するヒントです。協力的であるはずの夫に対しても「そうじゃない」「もっとこうしてほしい」と思ってしまうときがあり、どうすり合わせればいいのか分からないまま自分で抱え込んでしまうことがありました。

たとえば<ヒント10「主語」の使い方で「当事者意識」を引き出す>では、「あなた」「私」ではなく「私たち」を主語にして話すことを提案しています。

さらに<ヒント12「話し合いは「大きな話」から始めるとモメない>も目からウロコでした。子どもに笑顔でのびのび育ってほしい――そんな共通の願いをまず確認したうえで話し合いをしていきたい、と前向きな気持ちになりました。

また、特に印象的だったのが「家庭内異世界」という言葉です。

同じ家に暮らしていて 同じ子どもを育てていて
同じものを見ているはずなのに、
見えている世界のピントの合い方も
解像度も全然違うんです

パートナーが別の世界の住人だと思えば、考え方や優先順位が違って当然。そう受け止めることで、見えてくる解決の糸口があると感じました。

育児をしていると、どうしても視野が自分たちの家庭だけに狭まりがちです。しかし、ハラユキさんが取材で出会った国内外の多様な家庭の事例に触れると、「みんな試行錯誤しながら育てているんだ」と安心でき、勇気をもらえます。もちろん、すべての事例がそのまま自分の家庭に当てはまるわけではありません。それでも本書の31のヒントの中に、きっと自分たちのモヤモヤに近いものが見つかるはずです。

自分が「大変」と
チラリとでも思ったら それは大変なの!!
がんばってるの!!
その気持ち 打ち消したり
甘えとか言わなくて
いーから!!

長年ワンオペ育児に悩んできた著者だからこそ、本書に散りばめられた言葉には説得力があります。熱意がありながらも決して押しつけがましくない、そっと隣に並んで伴走してくれるようなメッセージが心に響きます。

育児の中でうまく言葉にできないモヤモヤを抱えている人にこそ、手に取ってほしい1冊です。

(レビュアー:Micha)

ワンオペ育児モヤモヤ脱出ガイド
著者:ハラユキ
発売日:2025年09月
発行所:講談社
価格:1,760円(税込)
ISBNコード:9784065409527

※本記事は、講談社|今日のおすすめ(書籍)に2025年11月14日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。