累計ダウンロード数が200万を突破し、ブックライブ2024年間&2025上半期ランキング第1位を獲得した『その天才様は偽装彼女に執着する』の紙単行本が2025年9月に発売されました。
今回は紙単行本発売を記念して、『その天才様は偽装彼女に執着する』の作画を担当する村山犬さんと原作を担当するちかふじさんにお話を伺いました。
- その天才様は偽装彼女に執着する 1
- 著者:村山犬 ちかふじ
- 発売日:2025年09月
- 発行所:BookLive
- 価格:803円(税込)
- ISBNコード:9784866754581
【あらすじ】
「今日から、恋人契約も追加で」彼氏の浮気発覚に社内での嫌がらせ…。様々なトラブルの末、星野凛は30歳を目前に彼氏ナシ・職ナシの崖っぷち女子になっていた。迷走の末に婚活に励むも、《謎の無神経男》の乱入により台無しに。そんなある日、凛は兄の頼みで「帰国子女の凄腕プログラマー」の家事代行をすることになる。兄の友人だしきっと大丈夫、と了承するも、当日現れた人物はまさかの…!? 孤高の天才プログラマー×世話焼き不憫女子の契約関係から始まる溺愛ラブ、スタート!(ブックライブ公式サイト『その天才様は偽装彼女に執着する(1)』より)
作画・村山犬
「その天才様は偽装彼女に執着する」の漫画・キャラクターデザイン等を担当。本作では、魅力的な男性キャラクターと等身大の女性像を秀逸に描きつつも、美麗なイラストで読者の関心を惹きつける。
原作・ちかふじ
「その天才様は偽装彼女に執着する」の原作を担当。元編集の経歴を持ち、本作がデビュー作となる。読者をひきつける巧みなストーリーが魅力。漫画原作者として今後も期待される。
ヒロインが少し引いてしまうくらいの「クセつよ男子」


――累計200万ダウンロード超えの大ヒット、おめでとうございます。今の率直なお気持ちを教えてください。
村山犬 正直まだ実感がわかないのですが、たくさんの方に読んでいただけて本当にうれしいです。応援してくださる読者の皆さまのおかげでここまで来ることができました。これからも楽しんでいただけるように精一杯頑張っていきたいです。
ちかふじ とても驚いております……! 当初は10話前後を想定していたのですが、作品に関わってくださる方々、読んでくださる方々のおかげで長く執筆させていただけるようになり、とても貴重な経験をさせていただいているなと思い、感謝の気持ちでいっぱいです。
――本作の構想が生まれたきっかけを教えてください。
ちかふじ ヒロインが少し引いてしまうくらいの「クセつよ男子」をヒーローにしたら恋愛の流れが面白くなるのではないかと思ったのがきっかけです。
「ギャンブル狂いのイケメンクズ男子」や「道端で野垂れ死にかけているボロ雑巾のような青年(を保護したら懐かれた話)」など、いくつかクセつよヒーローの案を出してみました。
ただ、どちらもハイスペック男子ではあったのですが、天才様と比べるとギャグ寄りすぎるのとヒーローの個性が強すぎて受け入れられるかわからないのでやめましょうか……となり、編集部と相談して「天才様」が選ばれました。ボツ案については、いつか時代が追い付けばやりたいとは思っています……!

――原作を初めて読んだときの印象を教えてください。
村山犬 最初に読ませていただいたとき、キャラクターの中でも特にヒーロー役の郁は、表面上は落ち着いて見えるのに、内側にはまっすぐな情熱や優しさを秘めているところがとても魅力的で物語の世界観にぐっと引き込まれました。
不器用ながらも相手を思いやる姿に人間らしさがあって、描いていても心が動かされています。主人公の凛は、自分の弱さを受け入れながらも前に進もうとするところに強く共感しました。
迷いながらも一歩ずつ成長していく姿が応援したくなりますし、この作品を絵で表現できることを光栄に思います。


――「ハイスペ男子×一般女性」という普遍的な設定の中で、どのようにしてこれまでの作品との違いをつくっていったのでしょうか?
ちかふじ 女性向け作品なので王道の展開はきちんと守ろうと意識をしつつ、やや変化球タイプのヒーローなので、村山先生にお力添えいただき、彼の個性をきちんと表現してあげることができれば差別化できるのでは……という気持ちで制作にあたりました。
それが結果として、読者のみなさまに「これまでの作品とは違うな」と思っていただけていたなら嬉しいです!

――制作に入るにあたり、ちかふじさんとの打ち合わせで印象に残っていることはありますか?
村山犬 郁は甘いものが好き、寝相が悪いなど、それぞれのキャラクターについて細かく教えていただいたのがとても印象的でした。
イケメンだと思いきやちょっとぬけてて可愛いやつだなと思ったり、そうした部分がキャラクターをより身近に感じさせてくれて、作画にも反映できたと思います。

「恋愛」と「人間関係のドロドロ」どちらも100%で
――「若月 郁」と「星野 凛」、それぞれのキャラクターはどのように考えられたのですか?
ちかふじ 郁はとにかくギャップを出したかったので、「言葉は冷たいけど根は優しい」というキャラを作ってみよう……というのを軸に、凛は30代の女性に降りかかりがちなリアルな悩みを持つキャラを意識して制作にあたりました。
キャラの思考面に関しては、反対の考えを持っている人たちの思考が近づいていく流れを作れたらいいなと思い、郁は「感情よりも効率を優先する」、凛は「非効率で感情を優先する」イメージで制作しています。
裏話的な話では、実は身近で郁と凛に性格が似ている人物がいまして、第1話など序盤の2人のやり取りはその方たちの出来事を少し参考にしたりもしていました。

――作画を担当するにあたり、最も重視したことは何ですか?
村山犬 キャラクターの表情や仕草で、セリフ以上の感情が伝わるように描くことを重視しました。特に心の動きを丁寧に表現することで、原作の魅力をさらに深められたらと思っています。

――ヒットの要因はどんなところだと思いますか?また、どういった点が読者の共感を産んでいると思いますか?
ちかふじ 企画を立ち上げた当時、人間関係がドロドロした作品が流行っていたので「じゃあ恋愛とドロドロをどっちも100%やったらおもしろんじゃないか」と思い制作を始めました。
原作としての視点では、読者のみなさんにも、そのおもしろさを受け入れていただけたのかなと思ったりしています。
昨今はストレス社会なので「むかつく人間が転落する」「夢のあるシンデレラストーリーを追体験できる」というような点で共感をいただいているのかなと個人的には感じています。

――女性の心理を描くにあたって工夫されていることはありますか?
ちかふじ 周りの人をたくさん観察したり、友人に「こういう状況のときってどう思う?」と聞きまわって参考にしています。
とはいえどちらかというとフィクションに寄った作品ですので、読者さんの感情移入先の凛を動かすときは、リアルな心のブレや過剰なネガティブ思考はあまり表現しすぎないように気を付けています。

――個々の登場人物のキャラクターを描くにあたって何か気を付けていることはありますか?
村山犬 キャラクターがセリフを言うときの気持ちや、場面ごとの温度感が絵から伝わるように心がけています。たとえば、ちょっとした仕草や視線の向きなどで“その人らしさ”が出せるように工夫しています。


――思い入れのあるキャラクターを教えて下さい。
村山犬 特に郁というキャラクターには強い思い入れがあります。最初は不器用ですが、物語を通じて少しずつ心を開いていく姿がとても愛しくて、描くたびに私自身も成長を見守るような気持ちになっています。


――読者の方々からの反響で、特に印象的だったものがあればお聞かせください。
ちかふじ ヒーローのキャラ設定が結構トリッキーだったので、最初は受け入れてもらえるだろうか……と不安だったのですが、「面白い」というレビューをいただいたときは安心しました。
村山犬 ありがたいことに多くのご感想をいただいていますが、特に“郁のちょっとした表情や仕草にキュンとした”という声が印象的でした。
自分では気付かなかった部分に注目していただけるのは新鮮で、改めて細部まで丁寧に描く大切さを感じています。

――作品をこれから読む人へのメッセージをお願いします。
ちかふじ 村山先生の美麗な絵柄でキュンやドロドロ、コメディなど様々な要素を丁寧に表現していただいておりますので、ぜひご一読いただけると嬉しく思います!
村山犬 ちかふじ先生が紡いだ素敵な物語を、漫画という形でお届けできるのが本当に幸せです。ひとりでも多くの方にキャラクターたちの想いが届きますように。ぜひご一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

