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「この著者、まさしく文藝界の“禍”になる」との推薦コメントも!小田雅久仁さん『禍』:発売に先駆けてコミカライズもスタート!

小田雅久仁著 禍

〈からだ〉をモチーフにした恐怖と驚愕をつむぐ怪奇小説短編集

7月12日(水)に、小田雅久仁さんの短編集『禍(わざわい)』が発売されます。

小田さんは、2021年に刊行された、9年ぶりの単行本となる『残月記』が2022年本屋大賞7位に入賞したほか、第43回吉川英治文学新人賞と第43回日本SF大賞で、ダブル受賞を達成した小説家です。

『禍』は、そんな小田さんが、口、耳、目、肉といったヒトの〈からだ〉をモチーフに、あらゆる「恐怖」と「驚愕」を紡いだ短編集です。

禍(わざわい)
著者:小田雅久仁
発売日:2023年7月12日
発行所:新潮社
価格:1,870円(税込)
ISBN:9784103197232

「俺はここにいると言ってるんだ。いないことになんかできねえよ――」。
恋人の百合子が失踪した。彼女が住むアパートを訪れた私は、〈隣人〉を名乗る男と遭遇する。そこで語られる、奇妙な話の数々。果たして、男が目撃した秘技〈耳もぐり〉とは、何なのか(「耳もぐり」)。とある便所。女は、本を貪り食っていた。女が残した言葉に導かれるように、家の蔵書に手を伸ばした男が視る光景とは――(「食書」)。ほか、読み手の五感を侵蝕する神がかりな全七篇を収録。

(新潮社公式サイト『禍』より)

 

伊藤潤二さん、小島秀夫さん、恩田陸さんからの推薦コメントも!翻訳版の刊行も決定

小田さんの小説は国外からも注目されており、『禍』も日本での発売前にもかかわらず、韓国と台湾で翻訳版が刊行されることが決定しています。

いち早く本書を読んだ漫画家の伊藤潤二さん、ゲームクリエイターの小島秀夫さん、作家の恩田陸さんからも以下の推薦コメントが寄せられています。

・「禍」の悪夢の侵襲によって私は永遠の万華鏡の中に迷い込んだ。――伊藤潤二(漫画家)

・文藝を侵食する異次元文学! 読者の身体に澱のように溜まる、艶かしい肉体感覚! クローネンバーグ×伊藤潤二×安部公房?! この著者、まさしく文藝界の“禍”になる。――小島秀夫(ゲームクリエイター)

・この想像力、極限。――恩田陸(作家)

 

人間の〈からだ〉以上に不気味なものはない!?そのイマジネーションの源泉は

本作品集の構想は、小田さんが作家デビュー後、はじめて執筆した短編が「耳」を題材にした怪奇小説であったことからスタートしたのだそうです。それから約10年、『禍』には「これこそは自信を持って世に送り出せる」と著者自らが精選した7篇が収録されています。

長年にわたり〈からだ〉というモチーフにこだわり続けた理由について、小田さんは次のように語っています。

人間の〈からだ〉以上に不気味なものなど、この世に存在しません。「怪奇」という概念は、人間が他人の死体を目にし、死への恐怖を知った瞬間に生まれたのではないでしょうか。〈からだ〉は生きて動くものでありながら、つねに〈死〉を孕んだものとして存在していると僕には思えます。誰でも、街行く人びとの顔の奥にひそむ無数の髑髏を想像したことがあるでしょう。人類の発祥以来、一千億の人間が生まれたという説を読んだ憶えがありますが、その数字の正確性はともかくとして、いま現在、生きている人間よりも、死んだ人間のほうが遥かに多いことは間違いありません。そう考えると、〈生〉は奇跡であり、〈死〉こそが常態であるという気づきが生まれます。〈からだ〉は〈生〉の象徴である以上に〈死〉の象徴でもあるわけです。そう考えれば、〈からだ〉ほど怪奇小説にふさわしいモチーフはないように思えます。そしてこのたび十年以上をかけてようやく一冊分を書きためることができました。

ただ、今後も同じだけの熱量で書いてゆけるか、正直自信がありません。本書が僕の怪奇小説集の最高到達点を示すものなのか、あるいは最初の怪奇小説集に過ぎないものなのか、もちろん後者であることを望むわけですが、いまのところは、『禍』は紛れもなく怪奇小説における僕の全力です。

 

また、本作の各話に共通しているのが、「想像力」の豊かさ。〈からだ〉に巻き起こる変異を通じて生み出される超常的、かつ“驚愕”な展開は日常の「違和感」から生み出されていて、小説ならではの表現方法にもこだわりがあるそうです。

たとえば「髪」をモチーフにした作品の場合。子供の頃に風呂場で母親に髪を切ってもらっていたのですが、つねづね切り落とされた髪は気持ちが悪いと感じていた、という経験が発想の原点にあります。他にも、もしも「鼻」を削がれてしまったら、という恐怖。目という感覚器に対する違和感……。日ごろ抱えている〈からだ〉にまつわる生理的な嫌悪感や違和感を種に、物語を育ててゆきました。

また、視覚的な表現力においては、小説は映像作品に大きく劣りますが、言葉によって心の動きを追うときには、力を発揮します。小説だからこそ表現できることは何か、という問題については、僕もつねづね思い悩んでおりますが、小説という手法で「怪奇」を描くことに意義を求めるならば、まずは登場人物の「驚愕」を丁寧に言葉にしてゆくということになろうかと思い、本作品集を執筆するうえで、こだわり続けた点でもありました。

 

コミカライズ&「耳もぐり」全文無料公開もスタート!

小説『禍』の発売に先駆け、6月27日(火)からはコミカライズ第1弾として、本書収録の「耳もぐり」の連載がWEB漫画サイト「くらげバンチ」にてスタートします。

――『禍』コミカライズ第1弾「耳もぐり」より

 

また、「耳もぐり」は新潮社の特設サイトほかで全文が無料公開されています。

〉〉「耳もぐり」全文無料公開・試し読み(新潮社公式サイト)はこちら


著者紹介:
小田雅久仁(おだ まさくに)
1974年宮城県生まれ。関西大学法学部政治学科卒業。2009年『増大派に告ぐ』で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビュー。2013年、受賞後第一作の『本にだって雄と雌があります』で第3回Twitter文学賞国内編第1位。2021年に9年ぶりとなる単行本『残月記』を刊行し、第43回吉川英治文学新人賞受賞、2022年本屋大賞7位入賞、第43回日本SF大賞受賞を果たす。


 

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