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「この世は親ガチャで決まる運ゲー」…社会に漂う“呪い”を検証する!『社会は、静かにあなたを「呪う」』【総合4.0】

書影

社会は、静かにあなたを「呪う」
著者:鈴木祐
発売日:2025年08月
発行所:小学館クリエイティブ
価格:1,980円(税込)
ISBNコード:9784778036515

 

『社会は、静かにあなたを「呪う」』の要点

1.本書では「他者のメッセージが持つ強い影響力」を“呪い”と呼ぶ。“呪い”はもっともらしく聞こえるが、実は根拠があいまいで、誤解に基づく思い込みによるものが多い。

2.「1人あたりGDP」の低下をもとに国の豊かさを計ると、日本には不利な結果が出やすくなる。

3.「人は幸せになるために生きている」という言説があるが、実際は、自己の「幸せ」や「楽しさ」を追求する人ほど幸福を感じにくい。

4.遺伝は人の能力や資質に影響を与えるが、環境の影響もかなり大きい。

 

『社会は、静かにあなたを「呪う」』レビュー

「これは自分の考えだ」と思っていたことが、実は周囲や社会の影響を受けたものであったと、後になって気づくことはないだろうか。たとえば要約者は、「人に頼らず、自立して生きるべき」と考えていた時期があるが、その頃はちょうど、日本全体が自己責任論で覆われていた。今思えばだが、少なからずその影響を受けていたのかもしれない。

本書のタイトルにある“呪い”とは、その時代や社会に漂う空気であり、どこからともなく流れてくる他者の言葉である。SNSやメディアを通じて、誰かの強い言葉が常にこだましている現代は、“呪い全盛期”といっても過言ではない。「日本はすでに三流国」「人生はガチャ」「○○はオワコン」などは、その代表だ。真偽は不明でも、断定的な言葉で語られると気になってしまい、なんとなくそれが正しいような気がしてくる。“呪い”は、好むと好まざるとにかかわらず、私たちの脳内にするりと入り込んでくる。

本書は、そうした現代日本にはびこる“呪い”を取り上げ、「本当にそうなのか」を検証していくという、実にチャレンジングな一冊だ。著者は、人気サイエンスライターの鈴木祐氏。これまで時間、運、適職、才能、長寿といった多種多様なテーマを取り上げ、科学的な知見に基づいて解き明かしてきた。

現代は、事実や真偽よりも、耳あたりのよいフレーズや感情を煽る過激な論調がもてはやされる傾向がある。「自分は間違った情報に踊らされたりはしない」と思っている人ほど、実は要注意だ。その思い込み自体が、すでに“呪い”にかかっているのかもしれない。

 

『社会は、静かにあなたを「呪う」』が気になる方におすすめ

時間・自己・幻想
著者:マルクス・ガブリエル 大野和基 月谷真紀
発売日:2025年04月
発行所:PHP研究所
価格:1,320円(税込)
ISBNコード:9784569859019