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2025年NHK後期連続テレビ小説「ばけばけ」特集!第3弾は『小泉八雲と妖怪』

ばけばけ第二弾アイキャッチ

小泉八雲・セツを知って「ばけばけ」を楽しもう!

9月29日(月)に放送開始予定の2025年度後期NHK連続テレビ小説「ばけばけ」は、「怪談」等の代表作を生み出した小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻である小泉セツをモデルにした物語です。士族の娘として生まれ、激動の時代を生き抜きながら、外国人の夫とともに「怪談」を愛した夫婦の何気ない日常が描かれます。小泉セツをモデルにした主人公の松野トキ役を髙石あかりさん、小泉八雲をモデルにしたレフカダ・ヘブン役をトミー・バストウさんが演じます。

ほんのひきだしでは、よりドラマを楽しんでいただけるように、放送に先がけて小泉八雲・セツの関連本を短期連載形式でご紹介します。
今回は、『小泉八雲と妖怪』(玉川大学出版部)です。ぜひ書店店頭で手に取って、ドラマとあわせてお楽しみください。

 

小泉八雲と妖怪

書影_小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオハーン

著者:小泉凡
発売日:2023年8月
発行所:玉川大学出版部
定価:2,750円(税込)
ISBN:9784472060243

 

〈章立て〉
はじめに

1 語りと妖精の文化に育まれて 0歳~10歳ごろ
2 失明と大叔母破産の悪夢 10歳ごろ~19歳
3 クレオール文化に生きる亡霊たちをもとめて 19歳~39歳
4 出雲の地に伝わる異界の物語に魅かれて 39歳~41歳
5 新しい日本への失望と日本への帰化 41歳〜46歳
6 大学の授業と怪談の再話 46歳~52歳
7 死をめぐる不思議なできごと 52歳~54歳

小泉八雲略年表
索引
おもな参考文献

 

アイキャッチ画像

 

筆者は、小泉八雲・セツの曾孫!

この本は小泉八雲の伝記ですが、なんと筆者は小泉八雲・セツの曾孫にして島根県立大学短期大学部名誉教授、小泉八雲記念館顧問の小泉凡さん。妖怪・怪談を切り口に、文化資源を発掘し観光・文化創造に生かす実践などを行っています。本書には、曾孫だからこそ語ることのできる知られざるエピソードや、小泉八雲記念館や小泉家が所蔵している豊富な写真や資料が収録されています。セツとの出会い、そして結婚して以降の話も充実しており、八雲とセツの仲睦まじいようすが、文章と写真からよく伝わってきます。本書を読めば、八雲の作品づくりだけでなく、その人生においても、いかにセツの存在が欠かせないものだったかがよくわかります。

 

めずらしい「一人称」の伝記

伝記といえば、ふつう「三人称」で書かれます。ですがこの本は、「小泉八雲本人が自分の生涯を語る」といったユニークな作りとなっています。「わたし」という一人称で語られ進んでいく物語では、そのときどきの八雲の心情や思いが存分に表現されており、三人称の伝記にくらべて、ずっと感情移入がしやすいと思います。しかも、筆者は八雲の曾孫! 曾孫が、曾祖父になりきって——ときには曾祖母セツの気持ちに寄り添いながら——語る伝記がおもしろくないわけがない! 読者は、まるで現代に八雲がよみがえったかのように感じられるはずです。

 

児童書だけど大人も十分に楽しめる

本書は、小学校高学年から読むことができるように作られています。子どもにもわかりやすい内容なので、だれにとっても親しみやすく、楽しく読めるものになっています。ただ、子ども向けだからといって侮るなかれ。これまでご紹介してきたように、筆者は八雲の曾孫かつ研究者であり、その内容は充実しています。この1冊を読めば、手軽に、おもしろく、小泉八雲とセツのことを知ることができるでしょう。「ばけばけ」がはじまる前に、ぜひ読んでおきたい1冊です。もちろん、ドラマがはじまってから読んでも楽しめます!

 

著者プロフィール
小泉凡
こいずみ・ぼん。1961年東京生まれ。成城大学文芸学部・同大学院文学研究科で民俗学を専攻後、1987年に島根県松江市へ赴任。小泉八雲記念館顧問、焼津小泉八雲記念館名誉館長、島根県立大学短期大学部名誉教授。主著に『民俗学者・小泉八雲』(恒文社、1995年)、『怪談四代記―八雲のいたずら』(講談社、2014年)ほか。

 

編集者のコメント
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、明治時代にヨーロッパからアメリカを経て日本にやってきた作家です。松江でセツと出会い、結婚。その後、セツとの共同作業で、日本人のだれもが知る多くの怪談作品を生みだしました。〈見えざるもの〉に魅かれ、名もなきものたちの声を聞きつづけた八雲の生涯と、その八雲を支えたセツの姿を描いた本書を、ぜひドラマとともにお楽しみください。

 

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