彼女に惚れたのは、挙式のあとにふと見せたこの表情でした。
父との会話中は光を失っていたその瞳が、父の背中を見送ると同時にしたり顔へと変わり、こう言い放ちます。
「私はもう洞ノ院の娘ではありません。久賀雪哉の妻です」
その目には、確かな意志の光が宿っていました。このセリフからは、ヒロイン・あず沙の芯の強さがにじみ出ています。
政略結婚から始まる和風ファンタジーラブコメ『帝都のジュリエット~無才の花嫁が幸せになるまで~』の第1巻が、2025年6月30日に発売されました。
『役立たず聖女と呪われた聖騎士《思い出づくりで告白したら求婚&溺愛されました》』の柊一葉先生が原作を書き下ろした注目作です!
寿命を削る“魅了”の力に抗う少女
本作の舞台は、特殊な能力“魅了”が血筋として受け継がれる帝都。
“魅了”とは、男を恋に酔わせて操る代償として、自らの寿命を削る恐ろしい力です。あず沙の母もまた、一族のために力を使い、命を落としました。
長女でありながら“魅了”の力が開花しなかったあず沙は、無才ゆえに一族から疎まれる存在。それでも、妹が同じ運命を辿るのを止めたい一心で、あず沙は“魅了”の血をこの世から断ち切る決意を固めます。
「一緒に潰しましょう!」と笑うヒロインの潔さ
あず沙が選んだのは、敵対関係にある久賀家との政略結婚。
“魅了”に強い憎しみを抱く洋薬研究者・雪哉に対し、「一緒に洞ノ院を潰しましょう!」と笑顔で迫るその姿は、まるで策士のような潔さが際立ちます。
雪哉は戸惑いながらも、あず沙を一人の人間としてまっすぐに尊重します。身内に対しても忖度(そんたく)せず、冷静で理知的。久賀家の跡取りとしての覚悟を持ちつつ、どこか陰のある彼の姿に、読者もきっと惹かれるはずです。
強くて、可愛くて、たまらないギャップ
そんな雪哉との距離を縮めようと、あず沙は奮闘します。ぎこちないながらも仲良くなろうと努力する姿、そしてふとした瞬間に見せる照れた表情──このギャップが、何よりも可愛らしい。
敵を一撃でねじ伏せる胆力もありながら、恋に無邪気にときめく女の子らしさもある。
強くて賢くて、それでいてちゃんと「可愛い」。あず沙のそのバランス感覚が、本作の魅力を一層引き立てています。
雪哉は戸惑いながらも、あず沙を一人の人間としてまっすぐに尊重します。身内に対しても忖度(そんたく)せず、冷静で理知的。久賀家の跡取りとしての覚悟を持ちつつ、どこか陰のある彼の姿に、読者もきっと惹かれるはずです。
利害から始まった関係は、愛に変わるのか
「好きにしろ」という雪哉の一言を受け、あず沙はまず彼との関係を築こうとします。
利害一致から始まったふたりの関係は、やがて信頼や愛へと変わっていくのか。
そして、“魅了”という力に翻弄されてきた彼女たちの未来は、どこへ向かうのか──。
無力とされた少女が、自らの手で運命を切り開いていく物語。和装と洋装が交差する帝都のビジュアルも見どころで、ページをめくる手が止まりません。
強く、しなやかで、前向きで、そしてとびきり可愛いヒロイン・あず沙に、きっとあなたも心を奪われるはずです。
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(レビュアー:Micha)
- 帝都のジュリエット~無才の花嫁が幸せになるまで~ 1
- 著者:秋乃音 柊一葉
- 発売日:2025年06月
- 発行所:講談社
- 価格:792円(税込)
- ISBNコード:9784065397992
※本記事は、講談社|今日のおすすめ(コミック)に2025年7月31日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。