恩田陸さんの『ユージニア』は、2005年に刊行され、第59回日本推理作家協会賞を受賞したミステリ作品です。その単行本刊行から20年を経て、このたび『完全版 ユージニア』が、10月2日(木)に発売されます。
2005年に刊行された単行本は、ブックデザイン・祖父江慎さん、フォントディレクション・紺野慎一さん、写真・松本コウシさんという、各分野の巨人が一堂に会し、制作されました。作品の世界を表現した先鋭的な造本は大きな話題となりました。
今回の完全版は、20年前の単行本版の再現に留まらず、当時、技術や費用の面で断念せざるを得なかった箔押しや型押しなどをはじめ、本来目指していた仕様をすべて実現した保護函入りの一冊となっています。
物体としての魅力も満載のこの一冊は、恩田陸ファンはもちろん、すべての本好きにとって見逃せない作品です。ぜひ書店で手に取って、そのこだわりを体感してみてください。
書誌情報
著者:恩田陸、ブックデザイン:祖父江慎+cozfish、フォントディレクション:紺野慎一、カバー写真:松本コウシ
発売日:2025年10月2日
発行所:KADOKAWA
定価:6,050円(税込)
ISBN:9784041165614
〈あらすじ〉
ユージニア、私のユージニア。
私はあなたと巡りあうために、ずっと一人で旅を続けてきた。数十年前のあの夏、青澤家で催された米寿と還暦を祝う席で、十七人が毒殺された。その家の人間で生き残ったのは、目が見えない少女一人のみ。ある男の遺書によって一応の解決をみた大量殺人事件が、年月を経てさまざまな視点から再構成される。見落とされた「真実」を証言する関係者たちは、果たして真実を語っているのか? 日本推理作家協会賞受賞の傑作ミステリ!
作品の魅力を引き出す唯一無二の造本
冒頭に挟み込まれる、本とは異なるサイズの「現場に残されたメモ」。目が見えない少女・緋紗子が感じる世界を表現した、白い膜の向こうに風景が透けて見えるカバー。触覚で感じられる、凹凸のある表紙。徐々に平衡感覚を失っていくような、ひずんだ本文デザイン。緋紗子が見た、狂気と絶望の「現実」をイメージした保護函。
ほかにも、見返しや扉、なんと、かがり糸にまで、作品世界に引き込むためのこだわりが随所に!
巻末には制作の裏側を綴った「ユージニアノート2025」が収録されます。
■参考写真1
※写真は2005年発売の単行本のものです
■参考写真2
※写真は2005年発売の単行本のものです
著者・恩田陸さんよりコメント
この本の装丁の凄さを、当時は半分も理解できていなかった。
ましてや、まさかの完全版。全く把握しきれていない。
――恩田陸
著者プロフィール
恩田陸
おんだ・りく。1964年宮城県生まれ。1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞、第2回本屋大賞を受賞。2006年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞を受賞。2017年、『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞を受賞。
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