- 詭弁と論破
- 著者:戸谷洋志
- 発売日:2025年04月
- 発行所:朝日新聞出版
- 価格:990円(税込)
- ISBNコード:9784022953100
『詭弁と論破』の要点
1.現代社会は「論破力」を極めて高く評価する。しかし、「論破力」を美徳とすることは、社会の分断を深め、私たちを孤立させる危険性を持つ。
2.詭弁を論理によって論破しようとすることは、詭弁による詭弁の反復にしかならない。私たちは自分自身が詭弁家にならないように抵抗する必要がある。
3.現代社会に必要なのは、相手を言い負かし、第三者に勝利をジャッジさせる「論破」ではなく、正しさを追求する建設的な議論を持続可能にする「社交」である。
『詭弁と論破』レビュー
「それってあなたの感想ですよね?」
これは、「論破王」と称される「ひろゆき」こと西村博之が使用したことで流行語になったフレーズだ。彼は討論番組で活躍し、研究者や社会的な権威を持つ人々を次々に「論破」する姿で人気を博している。
「ひろゆき」の論破は、主に討論番組のショーで行われる。そこでは議論に勝つことだけが目的であり、論破のための論破が行われる。彼は相手を「嘘つくのやめてもらっていいですか?」と煽り、「『はい』か『いいえ』で答えてください」といらだたせる。エンタメとしてはそれでもいいだろう。しかし、「議論」として見たとき、その「勝ち」に果たして意味はあるだろうか。
現代社会は、「論破力」をもてはやす。ときにそれは政治すら左右する力となる。しかし、著者はこうした状況に警鐘を鳴らす。
「ひろゆき」的な言説に抵抗しようとするとき、私たちはつい、その論理の穴を突き、相手を論理で言い負かそうと考えてしまう。しかし、それでは論破を美徳とする言説は何も変わらないと著者は指摘する。それは「論破」のコミュニケーション観を再生産し、強化することにしかならないのだという。ここに詭弁に対抗する落とし穴がある。
詭弁家にならずに詭弁に対抗するにはどうすればいいか。そこで必要となるのが、参加者自身が議論の場を整える力、すなわち「社交」なのだというのが本書の主旨だ。
論破は爽快だ。しかし、そもそも私たちは議論によって何を成し遂げようとしているのかを、本書を通じて見つめ直すべきだろう。
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