「桐野夏生」小説 2024年ベストセラーランキング発表
桐野夏生さんは、1993年に『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビューしました。その後も、1998年には『OUT』で日本推理作家協会賞、1999年には『柔らかな頬』で直木賞を受賞するなど、数々の文学賞に輝いています。2015年には紫綬褒章も受章されており、その文学的功績は高く評価されています。
桐野さんの作品の特徴は、女性が直面する困難や葛藤をテーマにした作品が多いことです。単に事件や犯罪を描くだけでなく、その背景にある社会の歪みや人間の本質を深く掘り下げるリアルな描写は、読者の心に強く訴えかけます。
ときに読むのがつらくなるような現実を突きつけられることもありますが、登場人物たちが抱える葛藤や、かすかな希望が丁寧に描き出されており、深く考えさせられます。人間の心や社会の奥深さに切り込む桐野さんの物語は、心に深く残り、新しい発見をもたらしてくれるでしょう。
桐野さんの代表作としては、平凡な主婦たちが犯罪に巻き込まれていく過程を描いた『OUT』や、人間の内面に潜む醜さや社会的な格差をテーマにした『グロテスク』などが挙げられます。ほかにも、『東京島』や『女神記』など、多くの話題作や受賞作があり、映像化された作品も少なくありません。
そこで今回は、2024年の販売冊数をもとに集計した、桐野さんの小説ベストセラーランキングをお届けします。各作品のあらすじもあわせてご紹介しますので、ランキングを参考に、ぜひ書店店頭で気になる1冊を手に取ってみてください。
※ランキングは2024年の販売冊数を集計しています(集計期間:2024/1/1~2024/12/31)
※日販調べ
「桐野夏生」2024年に一番人気の作品は…?!
2024年にもっとも人気があった小説は、女性の貧困と生殖医療の倫理に深く切り込んだ長編作『燕は戻ってこない』でした。第57回吉川英治文学賞と第64回毎日芸術賞を受賞しており、昨年4月には石橋静河さん主演でドラマ化もされ、話題となりました。
この物語の主人公は、北海道から上京したものの、非正規雇用で貧困にあえぐ29歳のリキです。彼女は生活の苦しさから、同僚に勧められた卵子提供の誘いを受けます。しかし、クリニックでリキに持ちかけられたのは、裕福な元バレエダンサー夫婦のために「代理母」になることでした。お金のために、迷いながらもリキは命を宿すことを決意します。
本作は、お金と命、そして体の尊厳について深く問いかける作品です。リキの選択を通して、現代の貧困問題や、生殖医療が突きつける倫理的な問題、そして「家族とは何か」を考えさせられます。
著者:桐野夏生
発売日:2024年3月
発行所:集英社
定価:1,100円(税込)
ISBN:9784087446258
「金がないことがこんなに心細く、息苦しいとは思わなかった」。
憧れの東京で病院事務に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。
「割のいいアルバイト」だと同僚に卵子提供を勧められ、ためらいながらもクリニックに向かうと国内では認められていない〈代理母出産〉を持ちかけられ――。(集英社文庫公式サイト『燕は戻ってこない』より)
「桐野夏生」小説 2024年ベストセラーランキング
第2位『インドラネット』
- インドラネット
- 著者:桐野夏生
- 発売日:2024年07月
- 発行所:KADOKAWA
- 価格:946円(税込)
- ISBNコード:9784041143209
平凡な顔、運動神経は鈍く、勉強も得意ではない――何の取り柄もないことに強いコンプレックスを抱いて生きてきた八目晃は、非正規雇用で給与も安く、ゲームしか夢中になれない無為な生活を送っていた。唯一の誇りは、高校の同級生で、カリスマ性を持つ野々宮空知と、美貌の姉妹と親しく付き合ったこと。だがその空知が、カンボジアで消息を絶ったという。空知の行方を追い、東南アジアの混沌の中に飛び込んだ晃。そこで待っていたのは、美貌の三きょうだいの凄絶な過去だった……
(KADOKAWA公式サイト『インドラネット』より)
第3位『日没』
- 日没
- 著者:桐野夏生
- 発売日:2023年10月
- 発行所:岩波書店
- 価格:990円(税込)
- ISBNコード:9784006023522
小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末は――。
(岩波書店公式サイト『日没』より)
第4位『オパールの炎』
- オパールの炎
- 著者:桐野夏生
- 発売日:2024年06月
- 発行所:中央公論新社
- 価格:1,870円(税込)
- ISBNコード:9784120057885
時代に先駆けてピル解禁を訴えていた女は――突然、姿を消した。謎多き女をめぐる証言から、世の理不尽を抉りだす圧巻の傑作長篇。
(中央公論新社公式サイト『オパールの炎』より)
第5位『グロテスク』(上・下)
- グロテスク 上
- 著者:桐野夏生
- 発売日:2006年09月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:792円(税込)
- ISBNコード:9784167602093
- グロテスク 下
- 著者:桐野夏生
- 発売日:2006年09月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:825円(税込)
- ISBNコード:9784167602109
光り輝く、夜のあたしを見てくれ
名門女子高生から一流企業のOLとなっても、彼女が求め続けたものは? 女たちの孤独な闘いを描いた最高傑作、ついに文庫化!
(文藝春秋公式サイト『グロテスク(上)』より)
第6位『緑の毒』
- 緑の毒
- 著者:桐野夏生
- 発売日:2014年09月
- 発行所:KADOKAWA
- 価格:660円(税込)
- ISBNコード:9784041019535
妻あり子なし、39歳、開業医。趣味、ヴィンテージ・スニーカー。連続レイプ犯。水曜の夜ごと川辺は暗い衝動に突き動かされる。救急救命医と浮気する妻に対する嫉妬。邪悪な心が、無関心に付け込む時――。
(KADOKAWA公式サイト『緑の毒』より)
第7位『とめどなく囁く』(上・下)
- とめどなく囁く 上
- 著者:桐野夏生
- 発売日:2022年07月
- 発行所:幻冬舎
- 価格:825円(税込)
- ISBNコード:9784344432079
- とめどなく囁く 下
- 著者:桐野夏生
- 発売日:2022年07月
- 発行所:幻冬舎
- 価格:781円(税込)
- ISBNコード:9784344432086
海釣りに出たまま夫が失踪し、その後、年の離れた資産家と再婚した塩崎早樹。彼の前妻も急逝しており、配偶者を喪った者同士、いたわり合う生活を送っていた。ある日、疎遠になっていた元義母から、息子を近所で見かけたと連絡が入る。実家の父親からも、自宅前に似た人が立っていたと聞かされた早樹は、次第に捉えようのない不安に苛まれていく。
(幻冬舎公式サイト『とめどなく囁く(上)』より)
第8位『OUT』(上・下)
- Out 上
- 著者:桐野夏生
- 発売日:2002年06月
- 発行所:講談社
- 価格:924円(税込)
- ISBNコード:9784062734479
- Out 下
- 著者:桐野夏生
- 発売日:2002年06月
- 発行所:講談社
- 価格:792円(税込)
- ISBNコード:9784062734486
ごく普通の主婦であった彼女たちがなぜ仲間の夫の死体をバラバラにしたのか!?
深夜の弁当工場で働く主婦たちは、それぞれの胸の内に得体の知れない不安と失望を抱えていた。「こんな暮らしから抜け出したい」そう心中で叫ぶ彼女たちの生活を外へ導いたのは、思いもよらぬ事件だった。なぜ彼女たちは、パート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか? 犯罪小説の到達点!
(講談社公式サイト『OUT(上)』より)
第9位『路上のX』
- 路上のX
- 著者:桐野夏生
- 発売日:2021年02月
- 発行所:朝日新聞出版
- 価格:880円(税込)
- ISBNコード:9784022649805
一家離散によって幸せな生活を失った女子高生の真由。義父の虐待から逃れ、街で身を売るリオナ。二人は運命的に出会い、共に生きる決意をする。ネグレクト、DV、レイプ。最悪の暴力と格闘する少女たちの連帯と肉声を物語に結実させた傑作が、遂に文庫化。
(朝日新聞出版公式サイト『路上のX』より)
第10位『ハピネス』
- ハピネス
- 著者:桐野夏生
- 発売日:2016年02月
- 発行所:光文社
- 価格:792円(税込)
- ISBNコード:9784334772345
高級タワーマンションに暮らす岩見有紗は窒息寸前だ。ままならぬ子育て、しがらみに満ちたママ友たちとの付き合い、海外出張中の夫・俊平からの離婚申し出、そして誰にも明かせない彼女自身の過去。軋んでいく人間関係を通じて、徐々に明らかとなるそれぞれの秘密。華やかな幸せの裏側に潜む悪意と空虚を暴き出す。
(光文社公式サイト『ハピネス』より)
「ミロ」シリーズ最新刊『ダークネス』が7月30日発売!
桐野夏生さんの女性私立探偵・村野ミロを主人公にしたシリーズの最新刊『ダークネス』が7月30日(水)に発売されます。
コロナ禍の那覇で静かに暮らしていたミロと息子のハルオ。しかし、ハルオのバイト先での出会いをきっかけに、運命はミロの宿敵である久恵や山岸たちを二人の元へ引き寄せます。自らの出生の秘密を知り、ミロのもとを去ったハルオは「悪」を知る旅へ。息子を取り戻すため、ミロ最後の闘いが始まります。
こちらの最新刊もぜひ書店で手に取って、お楽しみください。
著者:桐野夏生
発売日:2025年7月30日
発行所:新潮社
定価:2,750円(税込)
ISBN:9784104667055
私の愛した男たちは皆行ってしまった。私の魂を受け止めてくれる相手はもうどこにもいない──衝撃作『ダーク』から20年、村野ミロは生きていた。そして息子のハルオは「悪」を知る旅に出るが……。息子を守るため、凍る火の玉、ミロの最後の闘いが始まる。圧倒的迫力で描く、著者渾身のエンタテインメントの結末は。
(新潮社公式サイト『ダークネス』より)
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著者プロフィール
桐野夏生
きりの・なつお。1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞、1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、1999年『柔らかな頰』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞、2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞、2009年『女神記』で紫式部文学賞、2011年『ナニカアル』で読売文学賞、2023年『燕は戻ってこない』で毎日芸術賞と吉川英治文学賞を受賞など、主な文学賞を総なめにする。ほかにも『ポリティコン』『ハピネス』『バラカ』『日没』など著書多数。2015年、紫綬褒章を受章。2021年早稲田大学坪内逍遙大賞、2024年日本芸術院賞を受賞。2021年より日本ペンクラブ会長。