「町田そのこ」2024年ベストセラーランキング発表
町田そのこさんは、2016年に「カメルーンの青い魚」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞しデビューしました。『52ヘルツのクジラたち』で「2021年本屋大賞」を受賞後、2022年の『星を掬う』、2023年の『宙ごはん』と、3年連続で本屋大賞にノミネートされており、読者はもちろん、本読みのプロである書店員からも次作が待たれる作家の一人です。
代表作である『52ヘルツのクジラたち』をはじめ、いくつもの作品で登場人物たちの孤独や再生を描いている町田さん。虐待やDV、介護、孤独死など、さまざまな社会問題に光を当てつつ、そこから希望を見いだしていく姿を優しく力強く描写した作品が支持を集めており、家族だからこその難しさや血縁にとらわれない絆、誰かとつながることの喜びなど、心の機微を繊細に映し出すことで、多くの人の共感を得ています。
また、葬儀社に務めていた経歴を持ち、『ぎょらん』や『夜明けのはざま』では葬儀社を舞台に、死があるからこその生の輝きを映し出しています。町田さんの地元である福岡をはじめ、地元や地方を舞台にした作品が多く、そこでの人間模様や人情、人とのつながりが作品に複雑さと温もりを与えているのも特徴でしょう。
7月22日(火)に発売された『蛍たちの祈り』も、町田作品の魅力がたっぷり詰まった物語です。中学時代、ある出来事をきっかけに“共犯者”となった男女のその後を描き、早くも感動を呼んでいます。
そこで今回は、2024年の販売冊数をもとに集計した、町田さんの小説ベストセラーランキングをお届けします。各作品のあらすじもあわせてご紹介しますので、ランキングを参考に、ぜひ書店店頭で気になる1冊を手に取ってみてください。
※ランキングは2024年の販売冊数を集計しています(集計期間:2024/1/1~2024/12/31)
※シリーズ作品は一つにまとめています
※日販調べ
2024年に一番人気の作品は…?!
町田そのこさんの2024年に一番人気があった作品は、『52ヘルツのクジラたち』でした。
『52ヘルツのクジラたち』は「2021年本屋大賞」を受賞した、町田そのこさんの初長編作品です。タイトルの52ヘルツのクジラとは、ほかのクジラが聞き取れない高い周波数で鳴くため、その声を仲間に届けられないクジラのことです。
本作の主人公である貴瑚は、過去に受けた虐待や介護の重圧から逃れるため、東京から遠く海辺の町へと移住します。その地で貴瑚は、母親から「ムシ」と呼ばれる言葉を失った13歳の少年と出会い、その境遇に自らの過去を重ねていきます。痛みと孤独を抱える二人が少しずつ心を通わせながら、再生していく姿を描く本作。その道のりに心を震わされると同時に、児童虐待や家庭内DV、ヤングケアラー、トランスジェンダーなど社会的問題も織り込まれており、声なき声に耳を傾け、その痛みに寄り添う大切さを再認識させられる作品です。
2024年3月には、杉咲花さんや志尊淳さん出演による実写映画が公開され、同年11月には、単行本・文庫・電子書籍の累計発行部数が100万部を突破しました。
『52ヘルツのクジラたち』
著者:町田そのこ
発売日:2023年5月
発行所:中央公論新社
定価:814円(税込)
ISBN:9784122073708
2021年本屋大賞第1位。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年の新たな魂の物語――。〈解説〉内田 剛
(中央公論新社公式サイト『52ヘルツのクジラたち』より)
「町田そのこ」2024年 ベストセラーランキング第2位~第10位
第2位『ぎょらん』
- ぎょらん
- 著者:町田そのこ
- 発売日:2023年07月
- 発行所:新潮社
- 価格:935円(税込)
- ISBNコード:9784101027425
人が死ぬ際に残す珠「ぎょらん」。噛み潰せば、死者の最期の願いがわかるのだという。地方都市の葬儀会社に勤める元引きこもり青年・朱鷺は、ある理由から都市伝説めいたこの珠の真相を調べ続けていた。「ぎょらん」をきっかけに交わり始める様々な生。死者への後悔を抱えた彼らに珠は何を告げるのか。傷ついた魂の再生を圧倒的筆力で描く7編の連作集。文庫書き下ろし「赤はこれからも」収録。
(新潮社公式サイト『ぎょらん』より)
第3位『星を掬う』
- 星を掬う
- 著者:町田そのこ
- 発売日:2024年09月
- 発行所:中央公論新社
- 価格:836円(税込)
- ISBNコード:9784122075634
千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、自分を捨てた母・聖子がいた――。すれ違う母と娘の感動長篇。〈解説〉夏目浩光
(中央公論新社公式サイト『星を掬う』より)
第4位『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』
- 夜空に泳ぐチョコレートグラミー
- 著者:町田そのこ
- 発売日:2021年04月
- 発行所:新潮社
- 価格:737円(税込)
- ISBNコード:9784101027418
思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋、そして、ともには生きられなかったあの人のこと――。大胆な仕掛けを選考委員に絶賛されたR-18文学賞大賞受賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」。すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作他3編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。
(新潮社公式サイト『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』より)
第5位『わたしの知る花』
- わたしの知る花
- 著者:町田そのこ
- 発売日:2024年07月
- 発行所:中央公論新社
- 価格:1,870円(税込)
- ISBNコード:9784120058066
「あんたは、俺から花をもらってくれるのか」犯罪者だと町で噂されていた老人が、孤独死した。部屋に残っていたのは、彼が手ずから咲かせた綺麗な《花》――。生前知り合っていた女子高生・安珠は、彼のことを調べるうちに、意外な過去を知ることになる。淡く、薄く、醜くも、尊い。様々な花から蘇る記憶――。これは、謎めいた老人が描く、愛おしい人生の物語。
(中央公論新社公式サイト『わたしの知る花』より)
第6位『コンビニ兄弟4』(「コンビニ兄弟」シリーズ)
- コンビニ兄弟 4
- 著者:町田そのこ
- 発売日:2024年12月
- 発行所:新潮社
- 価格:693円(税込)
- ISBNコード:9784101802916
百合は大好きだった夫と別れ傷心の一人暮らしを始めるが、門司港で妙に賑うコンビニを発見する。舞人はかつてヒーローになりたかった。自分を見失う彼の元に突如訪れた「テンダネス着ぐるみ」任務。その背後にはとあるコンビニ店員との過去から今に繋がる熱い友情があった。報われるばかりの人生でなくとも手にすることができる小さな幸せがここにある。温かなコンビニ物語第四弾。
(新潮社公式サイト『コンビニ兄弟4』より)
■そのほかの「コンビニ兄弟」シリーズ作品
- コンビニ兄弟
- 著者:町田そのこ
- 発売日:2020年08月
- 発行所:新潮社
- 価格:781円(税込)
- ISBNコード:9784101801964
- コンビニ兄弟 2
- 著者:町田そのこ
- 発売日:2022年01月
- 発行所:新潮社
- 価格:649円(税込)
- ISBNコード:9784101802282
- コンビニ兄弟 3
- 著者:町田そのこ
- 発売日:2023年09月
- 発行所:新潮社
- 価格:693円(税込)
- ISBNコード:9784101802695
第7位『夜明けのはざま』
- 夜明けのはざま
- 著者:町田そのこ
- 発売日:2023年11月
- 発行所:ポプラ社
- 価格:1,870円(税込)
- ISBNコード:9784591179802
自分の情けなさに、歯噛みしたことのない人間なんて、いない。
地方都市の寂れた町にある、家族葬専門の葬儀社「芥子実庵」。仕事のやりがいと結婚の間で揺れ動く中、親友の自死の知らせを受けた葬祭ディレクター、元夫の恋人の葬儀を手伝うことになった花屋、世界で一番会いたくなかった男に再会した葬儀社の新人社員、夫との関係に悩む中、元恋人の訃報を受け取った主婦……。
死を見つめることで、自分らしく生きることの葛藤と決意を力強く描き出す、『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞した町田そのこ、新たな代表作!
(ポプラ社公式サイト『夜明けのはざま』より)
【『夜明けのはざま』のインタビューはこちら】
第8位『ドヴォルザークに染まるころ』
- ドヴォルザークに染まるころ
- 著者:町田そのこ
- 発売日:2024年11月
- 発行所:光文社
- 価格:1,870円(税込)
- ISBNコード:9784334104511
小学生のとき、担任の先生と町の外からやって来た男が駆け落ちしたのを忘れられない主婦。東京でバツイチ子持ちの恋人との関係に寂しさを覚える看護師。認知症の義母に夫とのセックスレスの悩みを打ち明ける管理栄養士。父と離婚した母が迎えに来て、まもなく転校することになる小六の女の子。発達障害のある娘を一人で育てるシングルマザー。
遠き山に日は落ちて――
小さな町で、それぞれの人生を自分らしく懸命に生きる女性たちを描いた感動作。(光文社公式サイト『ドヴォルザークに染まるころ』より)
第9位『うつくしが丘の不幸の家』
- うつくしが丘の不幸の家
- 著者:町田そのこ
- 発売日:2022年04月
- 発行所:東京創元社
- 価格:770円(税込)
- ISBNコード:9784488803025
海を見下ろす住宅地『うつくしが丘』に建つ、築25年の三階建て一軒家を購入した美保理と譲。一階を念願の美容室に改装したその家で、夫婦の新しい日々が始まるはずだった。だが開店二日前、偶然通りがかった住民から「ここが『不幸の家』って呼ばれているのを知っていて買われたの?」と言われてしまい……。わたしが不幸かどうかを決めるのは、家でも他人でもない。わたしたち、この家で暮らして本当によかった――。「不幸の家」で自らのしあわせについて考えることになった五つの家族の物語。本屋大賞受賞作家による、心温まる傑作小説。解説=瀧井朝世
(東京創元社公式サイト『うつくしが丘の不幸の家』より)
第10位『宙ごはん』
- 宙ごはん
- 著者:町田そのこ
- 発売日:2022年06月
- 発行所:小学館
- 価格:1,760円(税込)
- ISBNコード:9784093866453
宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
全国の書店員さん大絶賛! どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。(小学館公式サイト『宙ごはん』より)
※『宙ごはん』は2025年3月に文庫版が発売されています
【『宙ごはん』のインタビューはこちら】
著者のプロフィール
町田そのこ
まちだ・そのこ。1980年福岡県生まれ。2016年「カメルーンの青い魚」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。翌年、同作を収録した作品集『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。2021年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞。2025年『ドヴォルザークに染まるころ』で第46回吉川英治文学新人賞候補となる。おもな著書に『うつくしが丘の不幸の家』、『わたしの知る花』、「コンビニ兄弟」シリーズ、『月とアマリリス』などがある。