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人気アイドルグループのセンターが突然の失踪――真相を突き止めるために親友がオーディションに潜り込むが…!?『私のアリカ』

人気アイドルが突然失踪。その謎と犯人を巡るサスペンス――という流れから、サイコな“厄介オタ”が出てくる、やや重めの話を想像していたら、さにあらず!!
真相を探るためにオタク仲間が立ち上がる軽妙なお話で、彼らを好きにならずにはいられなくなりました。

アイドルグループ「りりかるトリック」のセンターをつとめる真宮(まみや)アリカが、突然失踪してから丸1年。
学生時代からの友人である宮嶋ナナは、真実が知りたくて、第3期新メンバーオーディションに応募。最終候補生6人に残り、初めて「りりトリ」のステージに立ったのですが……。

アイドルらしからぬ、無愛想なナナ。
失踪事件の犯人は、アリカの熱狂的なファン “アリカオタ”である可能性が高いと思われており、警察でも容疑者をかなり絞り込んでいました。

「りりトリ」のステージを台無しにしてしまったナナにも、危険が及ぶ可能性が……と、ここまではガチガチのサスペンス。
ところが、アリカ失踪の真実を探るオタク仲間が出てきた途端、サスペンスだけでなく面白さも加わります。

特に、ガチはガチでも“ガチオタ”の盛田(もりた)厚郎の常に熱血オーバーアクションの暑苦しい絵は笑える!!

この盛田と、小太りでおっとりしていて金払いのいいアリカの“TO(トップオタ)”山本宗之と、分析力はあるけれど影が薄い高橋の3人がいいのですよ。

彼らとナナは以前からのオタク仲間で、事件の真相に迫るには、何としてでもナナが新メンバーに選ばれる必要があるのですが、ナナにはアイドルとして致命的な弱点がありました。

3ヵ月間におよぶ公開オーディションを経て、候補生6人の中から「りりかるトリック」の正規メンバーに選ばれるのは上位3人。

しかし、課題曲を歌いながら踊る自己紹介動画の人気投票でナナは、大差をつけられての最下位。
そこで盛田、山本、高橋による本気の“推し活”が始まります。

現実のアイドルは、SNSを使いこなすのが必須なので、人気投票で上位になるには、こんなことをしなければいけないのか!?という裏話や、お披露目ライブでのいかにもありそうなエピソードも現実味があって面白い!!

そして、ほかの候補生たちの順位も気になるけれど、やはりナナがどん底から這い上がっていく姿が見てみたい!! と思ったら、いつの間にか自分がナナ推しの“オタク”になった気がしました(笑)。

さらに他のアイドル候補生たちの“表の顔と裏の顔”、ナナを陥れるための嫌がらせや、「りりかるトリック」のメンバーたちの闇の部分、怪しいファンと何かありそうな運営の話も加わるわけですから、面白くないわけがない!!

アイドルは綺麗ごとではつとまらないだろう、と思っている私としては、これからもっとドロドロした感じになりそうで、やっぱりこうでなくっちゃ!! とワクワクしています。

現在、人気投票最下位のナナが、どうやって上位にのぼりつめて行くのか。正規メンバーになったあと、どうやって真相を突き止めて行くのか。
オーディションはまだ始まったばかりですが、ますます面白くなりそうだと思いました。

(レビュアー:黒田順子)

私のアリカ(1)
原作:藤沢もやし、漫画:隈屑。
発売日:2023年4月
発行所:講談社
価格:726円(税込)
ISBN:9784065314319


※本記事は、講談社コミックプラスに2023年5月13日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。