最強の能力者である義姉から命を守るためにはSEXしまくるしかない!?
近未来、20人に1人が「特殊能力」に目覚めているという時代。
能力を発現した者は、一定年齢を迎えると各地の認定教育施設、通称「学園」への入学が義務付けられていた。
主人公の滝神広人(たきがみひろと)の能力は「霊体使役(ハッキングゴースト)」。霊が見えて話ができるだけの能力であり、この世界では弱小の能力者だった。「学園」でのクラス分けでも、Fクラス(最下位クラス)に所属させられている。
彼はある理由から、この学園の「会長」であり最強の能力者である義姉・麗に「1年後に殺害する」ことを宣言されていた。
学園では権力者である義姉とその取り巻きに派手にいじめられ、家でも義姉の顔色を窺う使用人などに冷遇される。しかも「余命1年」。希望の見えない毎日を過ごし、諦めの境地にあった広人は、河原で胡散臭い老人の霊と出会う。
生前は新興宗教の教祖だったというその老人・宇佐美久斎(うさみくさい)は、広人にある入れ知恵をする。彼のアドバイスにより、広人は弱小に思われた自身の能力が、実はこの絶望的な状況を変え得る能力であることを知ることになる。
簡単に言えば「広人が能力者とSEXして相手をイカせれば、相手の霊体を引きずり出し、自分の味方である幽霊をその体の中に突っ込むことができる。能力は身体に宿っているものなので、それが実現すればどんな能力者も自分の味方にできる」ということらしい。
この世界では、男性の能力は女性と比べて非力であることが多く、強大な力を持っている能力者はほぼ女性だ。広人の能力には、そんな彼女たちを味方にできる可能性があった。
「やりなおし(アンドゥ)」「反射(リフレクト)」「即死(デス)」というチート能力を3つも持っている義姉・麗に対抗するためには、できうる限り強い能力者を、数多く味方につけなければならない。童貞だった広人は手始めに、直前に自分をレイプしようとしてきた暴力的で淫乱な女生徒、“左利きの爆弾魔”こと韮澤極(にらさわきわみ)にターゲットを定める。
この作品は「霊体使役(ハッキングゴースト)」の能力を持つ高校生・滝川広人が、己の命を狙う最強の能力者・義姉に対抗する力を手に入れるために、学園の女生徒に次々と勝負を持ち掛け、SEXしまくる物語……である。
異能力バトル×ミステリ×エロ=最強!?
「ヤンマガWEB」に連載中のこの作品。SEXの描写も直接的で、青年誌の定番とも言える過激な性描写がてんこ盛り。もちろん「エロ漫画」のジャンルに入るだろう。
とはいえ「エロ漫画」にもいろいろあり、「ただ何となくエロシーンをねじ込みまくるだけ」のエロ漫画は、やはり読者も興醒めしてしまうもの。その点で本作は、主人公が「SEXしまくる理由」にある程度以上の説得力があるうえ、いろいろな女子生徒との「勝負」(バトル)のバリエーションが自在に広がりそうな設定が面白い。
“左利きの爆弾魔”こと韮澤極の“中身”を入れ替えて味方にした広人が、次のターゲットとしたのは市ヶ谷リリカ。「勝負に負けた相手から、賭けたものを強制的に取り立てる」
という“取り立て屋”の能力を持つ女生徒だ。
彼女の能力を手に入れさえすれば、この先、いろいろな女生徒と勝負をして勝ちさえすれば、合意の上でSEXができる、と考えたようだ。このような広人の戦略の立て方も「よく考えられているな」と感じた。
リリカとの勝負は「2人でのババ抜き」。自分の味方である霊たちを使って相手のカードをのぞき見できる広人には、負ける理由がない勝負だった。しかし2戦先取の初戦で、なぜか負けてしまう。
なぜ、自分は「ババを引かされてしまった」のか、なぜリリカは迷いなく「ババではないカード」を引くことができたのか。広人の取り巻きの霊の1人である手品師の幽霊「Mr.イリュージョン」は、そのイカサマの謎を解くべく頭を巡らせる。
これらの勝負の「謎解き」の雰囲気は、異様な世界観が魅力的なギャンブル漫画として大ヒットした『賭ケグルイ』や『嘘喰い』のような、ミステリ仕立てのハラハラ感も味わえる。「異能力バトル×ミステリ×エロ=最強」は言い過ぎか?
ラストターゲットが「姉」ではなく「義姉」だけに「最強の能力を味方につけるために義姉とSEXする」ような展開もあるのだろうか。まぁ、なんやかや言っても先読みなどは野暮な作品だし、ただただ広人の「不幸だけどある意味羨ましい毎日」を、楽しみながら眺めたいと思う。
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(レビュアー:奥津圭介)
- HACKING GHOST カラダにしか価値のない学園 1
- 著者:マサイ 六壱
- 発売日:2025年05月
- 発行所:講談社
- 価格:792円(税込)
- ISBNコード:9784065392904
※本記事は、講談社|今日のおすすめ(コミック)に2025年6月18日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。