「吉田修一」小説 2024年ベストセラーランキング発表
吉田修一さんは、1997年に『最後の息子』で文學界新人賞を受賞し、デビューしました。2002年には『パーク・ライフ』で芥川賞、『パレード』で山本周五郎賞を受賞。さらに『悪人』(2007年 大佛次郎賞)、『横道世之介』(2010年 柴田錬三郎賞)など、数々の文学賞を次々と受賞しています。その多くが映画・ドラマ化され、発表されるたびに大きな話題を呼んでいます。
吉田さんは純文学からエンターテインメント小説まで、幅広いジャンルの作品を手掛けています。犯罪小説の生々しい人間描写から、青春小説の爽やかで心温まる物語、独特の言い回しが光る純文学まで、作品ごとに異なる読書体験ができるのが大きな魅力です。
特に『悪人』や『怒り』といった代表作では、人間の心に潜む「悪」や「寂しさ」、そして信じることの難しさを深く掘り下げています。登場人物たちの複雑な感情や、日常の出来事から生まれる心の揺れ動きを、読者の心を強く揺さぶる筆力で鮮やかに描き出しています。
現在公開中の映画の原作となった『国宝』では、吉田さん自身が歌舞伎の舞台裏で「黒衣」として3年間を過ごし、その世界を肌で感じた経験が作品に深みを与えています。普通の人々の暮らしから専門的な世界まで、その徹底した取材力は驚くばかりです。だからこそ、作品の細部にまでリアリティが宿り、読者はまるでその場にいるかのように物語に入り込むことができます。
ぜひこの機会に、吉田さんの奥深い世界に触れてみてはいかがでしょうか。
そこで今回は、2024年の販売冊数をもとに集計した、吉田さんの小説ベストセラーランキングをお届けします。各作品のあらすじもあわせてご紹介しますので、ランキングを参考に、ぜひ書店店頭で気になる1冊を手に取ってみてください。
※ランキングは2024年の販売冊数を集計しています(集計期間:2024/1/1~2024/12/31)
※シリーズ作品は一つにまとめています
※日販調べ
「吉田修一」2024年に一番人気の作品は…?!
2024年にもっとも人気があった小説は、『湖の女たち』でした。
本作は、琵琶湖畔の介護施設で起きた老人殺害事件を軸に展開する長編ミステリーです。事件を追う刑事と容疑者である介護士が織りなす危うい関係、そして事件の真相を探る記者が暴き出す旧満州時代からの「原罪」が複雑に絡み合います。現代社会に横たわる人間の業を深くえぐり出すこの作品は、単なる事件解決に留まらず、戦争、差別、そして人間の倫理といった重厚なテーマを交錯させ、読者に深い問いを投げかけます。
2024年には映画化もされ、刑事の濱中圭介を福士蒼汰さん、介護士の豊田佳代を松本まりかさんが演じ、大きな話題となりました。
著者:吉田修一
発売日:2023年8月
発行所:新潮社
定価:825円(税込)
ISBN:9784101287591
湖畔の介護施設で暮らす寝たきりの男性が殺された。捜査にあたった刑事は施設で働く女性と出会い、二人はいつしかインモラルな関係に溺れていく。一方、事件を取材する記者は死亡男性がかつて旧・満州で人体実験にかかわっていたことを突きとめるが、なぜか取材の中止を命じられる。吸い寄せられるように湖に集まる男たち、女たち、そして――。読後、圧倒的な結末に言葉を失う極限の黙示録。
(新潮社公式サイト『湖の女たち』より)
「吉田修一」小説 2024年ベストセラーランキング
第2位『国宝』(上・下)
- 国宝 上
- 著者:吉田修一
- 発売日:2021年09月
- 発行所:朝日新聞出版
- 価格:880円(税込)
- ISBNコード:9784022650085
- 国宝 下
- 著者:吉田修一
- 発売日:2021年09月
- 発行所:朝日新聞出版
- 価格:880円(税込)
- ISBNコード:9784022650092
1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」――侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか?
(朝日新聞出版公式サイト『国宝(上)』より)
第3位『愛に乱暴』(上・下)
- 愛に乱暴 上
- 著者:吉田修一
- 発売日:2018年01月
- 発行所:新潮社
- 価格:649円(税込)
- ISBNコード:9784101287560
- 愛に乱暴 下
- 著者:吉田修一
- 発売日:2018年01月
- 発行所:新潮社
- 価格:649円(税込)
- ISBNコード:9784101287577
初瀬(はせ)桃子は結婚八年目の子供のいない主婦。夫・真守の両親が住む母屋の離れで暮らし、週に一度、手作り石鹸教室の講師をしている。そんな折、義父の宗一郎が脳梗塞で倒れた。うろたえる義母・照子の手伝いに忙しくなった桃子に、一本の無言電話がかかる。受話器の向こうで微かに響く声、あれは夫では? 平穏だった桃子の日常は揺らぎ始め、日々綴られる日記にも浮気相手の影がしのびよる。
(新潮社公式サイト『愛に乱暴(上)』より)
第4位『ブランド』
- ブランド
- 著者:吉田修一
- 発売日:2024年04月
- 発行所:KADOKAWA
- 価格:836円(税込)
- ISBNコード:9784041148549
「ねえ。『喜び』って言葉から、どんな風景をイメージする?」風呂上がりの妻から唐突な質問を受けた慎一は、眼を閉じてみると、ふいにひとつの景色が見えてきた。海から眺める東京に似た大都市。同じく想像したらしい妻は、自分は空にいるという。(「ティファニー2021」)一流ブランドには物語があり、人生の一瞬を輝かせる。著者が20年をかけてその一瞬を切り取ってきた珠玉の作品集。
(KADOKAWA公式サイト『ブランド』より)
第5位『横道世之介』(「横道世之介」シリーズ)
- 横道世之介
- 著者:吉田修一
- 発売日:2012年11月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:880円(税込)
- ISBNコード:9784167665050
大学進学のため長崎から上京した横道世之介18歳。
愛すべき押しの弱さと隠された芯の強さで、様々な出会いと笑いを引き寄せる青春小説の金字塔。(文藝春秋公式サイト『横道世之介』より)
■その他の「横道世之介」シリーズ作品
- おかえり横道世之介
- 著者:吉田修一
- 発売日:2022年05月
- 発行所:中央公論新社
- 価格:880円(税込)
- ISBNコード:9784122072138
- 永遠と横道世之介 上
- 著者:吉田修一
- 発売日:2023年05月
- 発行所:毎日新聞出版
- 価格:1,760円(税込)
- ISBNコード:9784620108643
- 永遠と横道世之介 下
- 著者:吉田修一
- 発売日:2023年05月
- 発行所:毎日新聞出版
- 価格:1,760円(税込)
- ISBNコード:9784620108650
第6位『罪名、一万年愛す』
- 罪名、一万年愛す
- 著者:吉田修一
- 発売日:2024年10月
- 発行所:KADOKAWA
- 価格:1,980円(税込)
- ISBNコード:9784041150306
横浜で探偵業を営む遠刈田蘭平のもとに、一風変わった依頼が舞い込んだ。九州を中心にデパートで財をなした有名一族の三代目・豊大から、ある宝石を探してほしいという。宝石の名は「一万年愛す」。ボナパルト王女も身に着けた25カラット以上のルビーで、時価35億円ともいわれる。蘭平は長崎の九十九島の一つでおこなわれる、創業者・梅田壮吾の米寿の祝いに訪れることになった。豊大の両親などの梅田家一族と、元警部の坂巻といった面々と梅田翁を祝うため、豪邸で一夜を過ごすことになった蘭平。だがその夜、梅田翁は失踪してしまう……。
(KADOKAWA公式サイト『罪名、一万年愛す』より)
第7位『パレード』
- パレード
- 著者:吉田修一
- 発売日:2004年04月
- 発行所:幻冬舎
- 価格:693円(税込)
- ISBNコード:9784344405158
都内の2LDKに暮らす男女四人の若者達。本音を明かさず、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め……。
(幻冬舎公式サイト『パレード』より)
第8位『女たちは二度遊ぶ』
- 女たちは二度遊ぶ
- 著者:吉田修一
- 発売日:2009年02月
- 発行所:角川書店
- 価格:704円(税込)
- ISBNコード:9784043912018
何もしない女、だらしない女、気前のいい女、よく泣く女……人生の中で繰り返す、出会いと別れ。ときに苦く、哀しい現代の男女を実力派の著者がリアルに描く短編集。
(KADOKAWA公式サイト『女たちは二度遊ぶ』より)
第9位『怒り』(上・下)
- 怒り 上
- 著者:吉田修一
- 発売日:2016年01月
- 発行所:中央公論新社
- 価格:660円(税込)
- ISBNコード:9784122062139
- 怒り 下
- 著者:吉田修一
- 発売日:2016年01月
- 発行所:中央公論新社
- 価格:660円(税込)
- ISBNコード:9784122062146
逃亡する殺人犯・山神はどこに? 房総の港町で暮らす愛子、東京で広告の仕事をする優馬、沖縄の離島へ引越した泉の前に、それぞれ前歴不詳の男が現れる。
(中央公論新社公式サイト『怒り(上)』より)
第10位『悪人』
- 悪人
- 著者:吉田修一
- 発売日:2021年06月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:990円(税込)
- ISBNコード:9784167917081
土木作業員の祐一は、出会い系サイトで知り合った佳乃が山奥で置き去りにされているのを助けようとして殺害してしまう。時を前後し、同じサイトで出会った祐一と光代は互いに惹かれ合い、逃避行の旅に出る。加害者と被害者、その家族や友人。一体誰が悪人なのか。交差する様々な思いを克明に描いた不朽の名作!
(文藝春秋公式サイト『悪人』より)
第11位『路』
- 路
- 著者:吉田修一
- 発売日:2015年05月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:792円(税込)
- ISBNコード:9784167903572
台湾でも大反響! 国を越え、溢れる想い
台湾に日本の新幹線が走る! 巨大プロジェクトに、それぞれの国の人々の個々に抱いてきた想いが繋がる。確かな手触りの感動傑作!
(文藝春秋公式サイト『路』より)
第12位『逃亡小説集』
- 逃亡小説集
- 著者:吉田修一
- 発売日:2022年09月
- 発行所:KADOKAWA
- 価格:770円(税込)
- ISBNコード:9784041127599
「もう、逮捕でもなんでもしてくれんね」
高校卒業後、地元の北九州を出て職を転々としてきた福地秀明。特に悪いことをした覚えもないのに不幸続きで、年老いた母親と出口のない日々を送る秀明は、一方通行違反で警察に捕まった時、ついに何かがあふれてしまった。そのまま逃走を始めた秀明は……(「逃げろ九州男児」)。
職を失った男、教師と元教え子、転落した芸能人、失踪した郵便配達員――日常からの逸脱を描く4つの物語。(KADOKAWA公式サイト『逃亡小説集』より)
■シリーズ作品
- 犯罪小説集
- 著者:吉田修一
- 発売日:2018年11月
- 発行所:KADOKAWA
- 価格:704円(税込)
- ISBNコード:9784041073865
第13位『パーク・ライフ』
- パーク・ライフ
- 著者:吉田修一
- 発売日:2004年10月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:550円(税込)
- ISBNコード:9784167665036
地下鉄で人違いして話しかけた不思議な女との偶然の再会が僕の好奇心に火をつける。男と女の恋をリアルに描く、芥川賞受賞作!
(文藝春秋公式サイト『パーク・ライフ』より)
第14位『初恋温泉』
- 初恋温泉
- 著者:吉田修一
- 発売日:2009年05月
- 発行所:集英社
- 価格:594円(税込)
- ISBNコード:9784087464344
温泉を訪れた、男女5組の恋物語
離婚話中の夫婦、不倫を重ねる元同級生、初めて外泊する高校生カップル――温泉という日常から離れた場所で気づく、本当の気持ち。せつなく、あたたかく、ほろ苦い、傑作恋愛小説集。(集英社公式サイト『初恋温泉』より)
第15位『橋を渡る』
- 橋を渡る
- 著者:吉田修一
- 発売日:2019年02月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:990円(税込)
- ISBNコード:9784167912208
ビール会社の営業課長、明良。
部下からも友人からも信頼される彼の家に、謎めいた贈り物が?
都議会議員の夫と息子を愛する篤子。
思いがけず夫や、ママ友の秘密を知ってしまう。
TV局の報道ディレクター、謙一郎。
香港の雨傘革命や生殖医療研究を取材する。結婚を控えたある日……
2014年の東京で暮らす3人の選択が、未来を変えていく。(文藝春秋公式サイト『橋を渡る』より)
「国宝」が実写映画化!
吉田修一さんが3年もの間、歌舞伎の黒衣として楽屋に入り、その経験を血肉にして書き上げた渾身の小説『国宝』が実写映画化され、6月6日より公開中です。
主演を務めるのは、稀代の女形・立花喜久雄役の吉沢亮さん。喜久雄のライバルとなる歌舞伎名門の御曹司・大垣俊介役には横浜流星さん。そして、歌舞伎名門の当主・花井半二郎役を渡辺謙さんが演じます。
さらに、高畑充希さん、寺島しのぶさん、田中泯さん、永瀬正敏さん、森七菜さん、三浦貴大さん、見上愛さん、黒川想矢さん、越山敬達さん、嶋田久作さん、宮澤エマさんといった、日本映画界に欠かせない実力派俳優陣が勢揃いし、物語をさらに美しく、熱く彩ります。
原作とあわせて、ぜひこの豪華な世界をお楽しみください。
〉公式サイトは、こちら
著者プロフィール
吉田修一
よしだ・しゅういち。1968年生まれ、長崎県出身。1997年に『最後の息子』で文學界新人賞を受賞し、デビュー。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞、『パーク・ライフ』で第127回芥川賞を受賞。同じ年に純文学と大衆小説の文学賞を合わせて受賞して話題に。2007年『悪人』で第61回毎日出版文化賞、第34回大佛次郎賞を受賞。2010年『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞を受賞。2019年『国宝』で第69回芸術選奨文部科学大臣賞、第14回中央公論文芸賞を受賞。2023年『ミス・サンシャイン』で第29回島清恋愛文学賞を受賞。作品は英語、仏語、中国語、韓国語などに翻訳され、世界で注目される。映像化された作品も多く、『東京湾景』『女たちは二度遊ぶ』『7月24日通り』『悪人』『横道世之介』『さよなら渓谷』『怒り』『楽園』『路』『太陽は動かない』などがある。2016年より芥川賞選考委員を務める。